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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第483回:ホモセクシャルの時代

更新日2016/10/06



庭で快適に夕方を過ごせる季節になりました。ヨットで浮遊していた時は、夕方になるとサンダウナーといって、ヨット仲間が集まり、夕陽が沈むのを眺めながら一杯飲むのが慣わしでした。この盆地では、週末に三々五々裏庭でバーベキューをやりながら一杯やるのが一般的です。秋は蚊や刺す虫もおらず、暑さが抜けて、庭でとても快適な夕暮れ時を過ごすことができます。

そうなると、大学の先生たちも何らかの理由をつけて飲み会パーティーを盛んに開きます。先日、"House warming party(家を暖めるパーティー)"、いわゆる新築祝いのようなものでしょうか、でも新築とは限らず、中古の家でも、入居者にとって新しい家を購入し、住み始めた時に開くパーティーに行ってきました。

家を購入したのは英語のホモセクシャルな男の先生で、パートナーは国有林保護官のアウトドアタイプの男性です。この二人が田舎町にしては高級住宅地にこじんまりとした家を買ったので、そのお祝い、お披露目のパーティーを開いたのです。

私たちと収入の面では大差がない…と思うのですが、家に一歩足を踏み入れた途端、ウチのダンナさん思わず、「オイ、俺たち今まで何をやっていたんだ?」と思わず漏らしたほど、それはそれは綺麗で豪華な家なのです。家の外観ももちろん立派ですが、内装も過度に飾らずスッキリと趣味の良さが表れていますし、家具、ソファーやキャビネット、本棚、ベッド、台所もすべて充分に選び抜かれ、調和が取れたものばかりなのです。もちろん、アンティーク家具などが、一つひとつ吟味して買い揃えたのでしょう、さりげなく配置されています。

私たちの家は…と言うより小屋は、はじめから比較にも何もなりません。しかも、家具のほとんどはダンナさんがありあわせの古材を使って作ったものですし、それでなければ救世軍の店か、古道具屋から値段だけが勝負?のように集めてきたもので、インテリアデザインも何もあったものではありません。実用一点張りなのです。

何軒かホモセクシャル(男同志のカップル)の家に招かれたことがありますが、揃いもそろって、皆インテリアも含めた家自体がとても清潔で趣味よく飾られていることに思い至りました。どうにも何でも間に合わせ、実用のみ、どちらかと言えば"ガザツ"で繊細さに欠けるウチのダンナさんとはすべてにおいて正反対なのです。

パーティーにはたくさんのホモセクシャル、ゲイの人が来ていました。彼らや彼女らは、これも揃いもそろって、上品なスッキリした、恐らくブランド物を何気なく着こなし、何やら高そうなオーデコロンかシェービングローションの香りを振り撒いています。これも救世軍の古着かさもなければお下がりで身を固めているウチのダンナさんとはどえらい違いです。

マー、本人はそんなことに全く頓着していないので、私を含めた周りの人がどうのこうの言うことではありませんが、それにしても人それぞれこんなにも違うものでしょうか。

このパーティーに集まった人たちの中でゲイカップル(男と男、女と女)の方が、男女の夫婦より安定した長い関係を築いていることに気が付きました。男女のカップルの70-80%は離婚、再婚を体験していますし、多い人は5回離婚、結婚と、まるでハリウッド・スター並みの記録保持者もいます。

大学の先生は常に若いフレッシュな学生が毎年補給されるので、自然、目移りがしてしまうのでしょうか、懲りずに取り替えるのです。私たちのように三十数年同じパートナーと言うのは、ほとんど天然記念物的存在なのです。

そこへ行くとホモセクシャル、ゲイのカップルの方がよほど相手に対する忠誠、ローヤリティーが強いのか、充分見極めてから同棲、結婚するのか、私たちの記録に迫る程、長く安定した関係を結んでいるように思えます。同性同士の方がもっと精神的な繋がりが強く、異性の場合には、いくつになってもホルモン、テスタストロンが先行してしまう傾向があるのかもしれませんね。

帰りの車の中で、彼らの家のキレイさ、清潔さが話題になった時、ダンナさん、「オラー、あんまりきれい過ぎると落ち着かない、自分に合った適当な乱雑さがあった方が暮らしやすいんじゃないかなぁ」と、将来、彼らのような美しく磨き抜かれた家に住むという私の夢を打ち砕くようなことを言うのです。

汚さない、気を使う、小言を言う…私も言われたくないし、言いたくない…とすれば、今の有りようが私たちの性格、生き方に合った家なのではないかと思い始めました。なんせ大学の拡張で取り壊しになる家の大きな窓をタダで貰ってきて(自分で引っ剥がしてくるのですが)それを我が小屋に取付けるというのが、今私たちの最大のリフォームなのですから…。

 

 

第483回:山の遭難事故について

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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