第140回:夢のカルフォルニア その1
更新日2009/12/17
私はカルフォルニアに住んだこともありませんし、ゴールドラッシュじゃあるまいし、カルフォルニア州に特別の思い入れがあるわけではありませんが、カルフォルニアが、アメリカでは特別な州だと認めないわけにはいきません。
アメリカ人はこれで結構お国自慢が好きで、自分の州を特別なものと思い込んでいます。それがたとえ東部の極小の州、テキサスの50分の一以下の面積しかない州、ロードアイランドとかデラウエア州の人々でも、それぞれ我が州は隣りの州とは違う、ましてや大きいだけで中身がカラッポな中西部の州とは歴史の重さが全く違う、などと自慢します。
そんな風に、お国自慢、州意識の強い人たちにとっても、カルフォルニア州がアメリカ全体に及ぼす影響の大きさを無視することはできません。
1960年代にママス・アンド・パパスは、"夢のカルフォルニア"を明るく謳い上げましたが、これがアイダホ州(イモの名産地)やサウスダゴダ州だと(アイダホ州、サウスダゴダ州の住人ごめんなさい)、とても"夢のアイダホ"とは賛歌のように歌えないでしょうね。
カルフォルニアが、黄金郷として1849年に空前のゴールドラッシュを巻き起こし、アメリカの歴史に登場してから現在まで、特別の州であり続けました。カルフォルニアで起ることは、10年遅れで東部に飛び火し、20年後には全米に広がると言われています。
アメリカの州は軍事・外交以外、独立した国と呼んで良いくらい大きな自治権を持っています。連邦政府議会の決議を全く無視したり、逆の決定をしたりしているのをみると、一体何のために連邦政府があるのだろうと思うことがあります。
カリフォルニア州が始めた(今では半数以上の州が行っている)イニシャティブ(住民発議と日本で呼んでいるとダンナさん教えてくれましたが)に原因を求めることができます。
自作の法案を書き、それに住民の一定数の署名を集めると、プロポジション(提案)でき、住民投票で過半数を得ると、その法案が州議会で可決されたのと同じ効力を持つ、というものです。プロの政治家に俺たち、私たちの大切な住民としての権利のすべてを預けられるか、という考え方なのでしょう、議会制民主主義に直接民主主義を加えたようなやり方です。
このイニシャティブで発議され、カルフォルニア州で色々な法案が可決されるたびに、保守的な中西部、南部の州の人たちは、あの浮ついたキチガイばかりが住んでいる州がまたおかしなことをオッパジメタくらいにしか取っていませんでしたが、死刑の廃止、公害規制、原子力発電所の規制、ホモ同士の結婚、マリファナの医療使用、禁煙運動など、どんどん他の州にも広がっています。新しい動きの震源地は、すべてカルフォルニアなのです。
そして、今、カルフォルニアは"新時代のゴールドラッシュ"と呼ばれるほどダイナミックに変化しつつあります。アメリカの未来を知りたければ、カルフォルニアの今を見ろというわけです。
カルフォルニア州を一つの国と見ると、総生産は世界で8番目の国に相当します。もちろんアメリカがトップ、日本が2番目、それを追い越すように中国が3番目、そしてヨーロッパの経済大国ドイツ、フランス、イギリス、イタリアが続き、カルフォルニア州は、統計上、ロシア、ブラジル、スペインより上の生産力があることになります。
-…つづく
第141回:夢のカルフォルニア その2