■Have a Nice Trip! ~そしてまた、新たな旅が始まる…

安田 修
(やすだ・おさむ)


1958年、神戸生まれ。ルポライター、JTB 系広告代理店(マーケティング・制作)等を経て、現在はフリーとしてライターや出版企画などのプランナーとして活躍する。世界の辺境が大好きな現役バックパッカーで、ネットサークル「海外に住もう会」を主宰している。世界各国の移住情報や長期旅行の情報をまとめた「海外移住情報」をネットで公開中。
著書『日本脱出マニュアル』




第50回:タイ、カオサンとパタヤの関係
第49回:マレーシアの避暑地、キャメロンハイランド
第48回:モロッコの女性たち
第47回:インドネシア、素朴なロンボク島
第46回:ルーマニアのドタバタ劇
第45回:エストニアの日本料理店
第44回:ギリシア、アテネのさんざんな一日
第43回:ロシア、モスクワ空港警察官の小遣い稼ぎ
第42回:メキシコシティのナイフ強盗
第41回:オーストラリア、ゴールドコーストのツアーガイド裏話
第40回:インド、ダージリンのイメージと現実
第39回:中国、大連の国家安全局員
第38回:キューバ、ドルの威力
第37回:チリ、イースター島の日本伝説
第36回:テニアンの日本人
第35回:ベトナム、スリの女の子






■更新予定日:毎週木曜日

第51回:パキスタンの女性たち

更新日2003/03/13


パキスタンといえばイスラムの男社会である。首都イスラマバッド特別区に隣接する旧市街“ラワールピンディ”を歩いていても、女性たちとすれ違うことは少ない。原則的に女性の労働が禁止されているために、航空会社や外国系オフィスを除いては、お店にもオフィスにも女性の姿は見られない。

そんな中、街のところどころにある電話屋さんに、堂々と顔を出して受付をしている女の子がいた。びっくりしていると、こちらの思いを察したようで、隣にいた女の子のおじいちゃんが、「まぁ、まぁ、座りなさい」とお茶をすすめてくれた。

「私は海外で育ったから、こうして働くのにも抵抗がないの。周囲からは冷たい視線がくるけれど、こうしておじいちゃんが一緒に店番してくれているから大丈夫」

それから数週間の滞在で、女性が集まる場所をいくつか発見した。そんな場所を訪れると、パキスタンらしさも垣間見えてくる。

先ずは女人街と呼ばれている市場だ。食料品・日用品・衣料品・化粧品など、なんでも売っている。迷路のような市場街には、多くのパキスタン女性たちが行き交っていた。特に女性で溢れていたのは、甘味店。甘いデザートを食べながらおしゃべりに夢中だ。

次は街一番のベーカリー。クッキーやパキスタン風ケーキが売られているものの、かなり高いためにお金持ちしか買えない。そのためかお客のほとんどは高級車で店の前に乗りつけて店に入っていく。

そして、ケンタッキーフライドチキン。ケンタッキーはパキスタンでは高級レストランとなる。高級車を運転してやってくる人が多いためか、警備員付の駐車場が完備している。お客のほとんどは女性とその子供たち。しかもパキスタンでは珍しい洋服姿である。ジーパンをはいている女性の姿も多い。

レストランというよりは、奥さま方の社交場といった感じだ。そんな姿に驚きながらチキンにかぶりついていると、向かいの席に座っていた子供連れの女性と目が合った。会釈をすると「こっちで一緒に食べない?」と手招きされた。

「パキスタンでは、女性が行ける場所は限られているのよ。行こうと思えば自由に街を歩けるわ。でもここはイスラムの国だから、視線が気になるの。よけいなトラブルになるのも困るし、みんなおとなしくしているわ。だから、ここに集まってくる女性たちは、西洋の生活習慣と接したことがある人や進歩派の人たちばかりね。よかったら今度家に遊びに来ない? 主人は貿易商だから外国人は歓迎よ。」

また、中央アジア人の居住地区にあるラグメン店にもパキスタン女性が多く集まる。お店は中国ウイグル自治区出身者が経営している。ラグメンとは、ニンニクと唐辛子、トマトの味が特徴的な中央アジア風焼きうどんだ。この味を求めて、また単調なパキスタン料理に飽きた日本人や外国人旅行者、そして食通?の女性たちがやってくる。

不思議なことに、何故かここに集まるパキスタン女性たちはおしゃべりをしない。ただひたすらラグメンを夢中で食し、食べ終えると満足そうな笑みを浮かべて帰っていく。

美味しいものがあるところに女性が集まるのは、どこの国でも一緒かも……。

 

→ 最終回:フィリピン、エルミタ地区の横顔