■Have a Nice Trip! ~そしてまた、新たな旅が始まる…

安田 修
(やすだ・おさむ)


1958年、神戸生まれ。ルポライター、JTB 系広告代理店(マーケティング・制作)等を経て、現在はフリーとしてライターや出版企画などのプランナーとして活躍する。世界の辺境が大好きな現役バックパッカーで、ネットサークル「海外に住もう会」を主宰している。世界各国の移住情報や長期旅行の情報をまとめた「海外移住情報」をネットで公開中。
著書『日本脱出マニュアル』



第43回:ロシア、モスクワ空港警察官の小遣い稼ぎ
第42回:メキシコシティのナイフ強盗
第41回:オーストラリア、ゴールドコーストのツアーガイド裏話
第40回:インド、ダージリンのイメージと現実
第39回:中国、大連の国家安全局員
第38回:キューバ、ドルの威力
第37回:チリ、イースター島の日本伝説
第36回:テニアンの日本人
第35回:ベトナム、スリの女の子

第34回:ハンガリー、温泉にはまるツーリストたち
第33回:コスタリカ、ニ人の17歳の女の子
第32回:グァテマラ、アンティグアの主産業はスペイン語学校
第31回:アルゼンチン最南端・フエゴ島の日本人
第30回:カンボジア、この国はいつたい誰の国?




■更新予定日:毎週木曜日

第44回:ギリシア、アテネのさんざんな一日

更新日2003/01/23


ギリシアは世界中から旅行者が集まる一大観光国である。それだけに旅行者トラブルも多く、中でも日本人を狙ったケースは後を絶たない。

ある日、観光のメッカ、アテネを訪れると、怪しい人々との遭遇で一日が終わってしまった。その日は早起きをして、まずはアテネ市内が一望できる丘に登った。

展望台には、一目で壊れていると分かるようなカメラをぶら下げた"インチキ写真屋"が出没し、勝手に写真を撮っては、撮影料を要求してくる。「写真を送る」という言葉を信じ、住所を書いてお金を払っても、写真が送られてくることなどあり得ないし、断るとわめき散らすのだ。せっかくのパノラマ光景も、不愉快さで魅力半減である。

丘を降りて、街の中心にある噴水広場では、ジプシーの子供たちがまとわり付いてきた。「マネー、マネー」と手を差し出すだけでは終わらない。数人の子供が取り囲み、ポケットやバッグの中に手を入れてくる。周りを見渡すと、赤ん坊を抱いた母親があれこれ子供たちに指示を出しているのを発見した。

次に訪れたのは、噴水の近くにある銀行。両替を済ませて銀行の出口を出ると、まるで待ち構えていたかのように、怪しい男が声をかけてきた。
「いいタベルナ(パブ・レストラン)を紹介するよ」
もちろん連れて行かれるのは、暴力バーなどなど。完全に無視すると、捨て台詞を残して立ち去った。

それから30分後、繁華街のメインストリートを歩いていると、第六感を感じた。
"誰かにつけられている…"
そんな気がして振り返ると、いかにも危なそうな男の姿が目に飛び込んできた。どこから見ても犯罪者の風貌をしている。試しに歩く速度を早めてみると、やはりその男はピッタリとついてきていた。

"これはちょっとヤバイかも…"と、小走りで退散。やっと男を巻いたと思って一安心していると、今度は別の男が付けてくるのを発見した。しょうがないので、通りかかったホテルに避難した。

異様な感じに気がついたのか、声をかけてきた警備員に事情を話すと警察官を呼んでくれた。それから、やってきた警察官に勧められて一緒に警察署に行くことになった。そこでは、つけてきた男の似顔絵を描かされた。

"もう何もないだろう…"と思いながら、今度は警察署近くのオープンカフェでちょっと休憩。砂糖のような甘すぎるケーキを食べていると、またもや一人の男が勝手に隣の席に座って話しかけてきた。

手には富士山のポストカード、口からは「トヨタ、ソニー…」といった日本企業の名前が次々に出てくるものの、ギリシア語なのでまったく分からない。なんとなく「日本で働きたいから、力になってくれ」といった感じのようだ。

相手になる余裕もないので、カフェの店員に追っ払ってもらったものの、疲れがドット押し寄せてきた。カフェを出ると、安全そうな流しのタクシーを拾って宿に一直線。

さんざんな一日はようやく終わった……。

 

→ 第45回:エストニアの日本料理店