■Have a Nice Trip! ~そしてまた、新たな旅が始まる…

安田 修
(やすだ・おさむ)


1958年、神戸生まれ。ルポライター、JTB 系広告代理店(マーケティング・制作)等を経て、現在はフリーとしてライターや出版企画などのプランナーとして活躍する。世界の辺境が大好きな現役バックパッカーで、ネットサークル「海外に住もう会」を主宰している。世界各国の移住情報や長期旅行の情報をまとめた「海外移住情報」をネットで公開中。
著書『日本脱出マニュアル』



第40回:インド、ダージリンのイメージと現実
第39回:中国、大連の国家安全局員
第38回:キューバ、ドルの威力
第37回:チリ、イースター島の日本伝説
第36回:テニアンの日本人
第35回:ベトナム、スリの女の子

第34回:ハンガリー、温泉にはまるツーリストたち
第33回:コスタリカ、ニ人の17歳の女の子
第32回:グァテマラ、アンティグアの主産業はスペイン語学校
第31回:アルゼンチン最南端・フエゴ島の日本人
第30回:カンボジア、この国はいつたい誰の国?
第29回:ブラジルの日系共同体農場
第28回:マケドニア模様
第27回:マケドニア、国際列車にて…




■更新予定日:毎週木曜日

第41回:オーストラリア、ゴールドコーストのツアーガイド裏話

更新日2002/12/26


日本人観光客の定番地、ゴールドコースト。過去の一大ブームは過ぎ去り、ツアーガイド業界も様変わりした。日系ホテルに宿泊すると、なぜかツアーガイド会社から頻繁にオプショナルツアーの勧誘電話攻撃があったりして、顧客獲得に必死な様子がうかがえる。

そんな中、従来はなかった"ツアーガイド養成"などというビジネスが出現していた。ちょっと怪しい臭いがプンプンする商売だ。たまたま現地で知り合った日本人が、一番最初にこの商売を立案したAさんだった。

「ゴールドコーストを訪れる日本人は、横ばい状態です。ブームの時に作られた小さなツアーガイド会社は、どこも生き残りに必死で、潰れる会社も珍しくありません。うちの会社もツアーガイド業務だけでは苦しくなって、苦肉の策としてツアーガイド養成をスクールのような形で始めたんです」

「ツアーガイドはワーキングホリデーで滞在している日本人や、オーストラリア就職を夢見る日本人に人気ですから、始めた時は大人気でした。今では、いくつか同じようなスクールもできています。ただ、本来は必要のないビジネスなので批判も多くて、そろそろスクールを閉めようかとも考えています。お金儲けが目的と言われてもしょうがないでしょうね。お金を払ってくれる人は、業界のことは何も知らない人ばかりです。現地事情に詳しい人は、ツアーガイドになるのにお金を払ったりしませんから…」

ツアーガイドは、どこの会社でも常時募集している。面接をパスし、一定期間働いた後に業界内で決められている研修終了試験を受ければツアーガイドとして本採用される。もちろん、給与をもらって働きながら研修するのが一般的だ。

それに対して、有料で養成講座などを併設しているツアーガイド会社などの場合は、"お金も入り、研修を理由にタダで働かせることもできて一石二鳥"とばかりに、本来の業務そっちのけで生徒募集に邁進する本末転倒ぶりだ。

また、高いお金を払って"養成?"されたおかげで、肩身の狭い思いをする人もいる。
「私は、何も知らないまま養成コースにお金を払ったのですが、終了してみると、どこの会社も雇ってくれませんでした。採用されるのは、養成コースを受けていない人ばかり。ツアーガイドは体力と営業力が勝負。何よりもバイタリティが要求されますから、高いお金を払った人は、不適格扱いされて敬遠されるんです。私自身もそう思います…」

こう話すのは、ワーキングホリデーで滞在していた20代半ばの女性。また、同じくワーホリで滞在し、ツアーガイドとしてバリバリ働いている女性はツアーガイド事情について次のように話してくれた。

「うちの会社も経営は苦しいようですね。以前は早朝から深夜までと、ハードで不規則ではあっても通常のガイドの仕事だけでした。でも、最近は事情が一変して、歩合制度が導入されて、担当したお客さんから、新たなオプショナルツアーなどを受注しなければ評価されないようになりました。営業第一主義と言うんでしょうか、ツアーガイドというよりもセールスレディといった感じで、お客さんからのクレームも多いですね。ツアーガイドを目指すなら、なによりも根性が必要かもしれません」

バブル期に進出したツアーガイド会社の中には、観光業務から手を引き、利益の大きい留学やサポート会社に転業する場合も多いらしい……。

 

→ 第42回:メキシコシティのナイフ強盗