第11回:天国に一番近い島
更新日2002/05/30
天国に一番近い島「ウベア島」ですっかりお馴染みのニューカレドニア。日本人ハネムーナーにとっては憧れの旅行地だけに、どこに行っても多くの日本人の姿がみられ、近くのオーストラリアからやってくる観光客もたじたじ……。
といったことで、ミーハーなイメージをずっと持っていたために足が向かなかったものの、いざ行ってみると、物価が日本と変わらない高さということを除いては、ほぼ完璧な居心地のよさ。
フランス領だから、フランス本土から移り住んでいる人も当然多い。冷たい印象もある本土のフランス人も、ここに住んでいる人に限ってはとてもフレンドリー。離島に渡ってメラネシア系住民はというと底抜けにフレンドリー。
また、この地を訪れると素朴な感動に出会うこともしばしば。先ずはゴミがまったく落ちていないことは大きな驚き。目を凝らして探すと見つかったりするだろうが、普通に歩いている限りゴミはまったく目にしない。エメラルドグリーンに輝く海を見ると、観光客のモラルも高くなるのだろうか、ゴミ箱などないところに行ってもそれは同じ。
離島に行くと更なる感動にも出会う。ニューカレドニアの離島観光というと、観光客にとっては一番のメインイベント。普通であれば、多くの観光客目当ての商店が建ち並ぶのが当たり前。タイなどでは一部のリゾーターしかいなかった「秘境」の島が、有名になると数年で何十もの商店が軒を並べるという姿に一変してしまう。
しかし、ここではホテルを一歩外に出ると何もない。わずかに地元住民向けの小さな商店と、観光客向けのインフォメーションを兼ねた店があるだけ。ビーチなどを徘徊する物売りなどは論外…、売店すらない。
「この島には無用の文化施設など必要ないのです。島民は自給自足がほとんど。畑で芋を作ったり、海で魚を必要な分だけとったりする生活をしています。観光客を相手にお金儲けをしようというような、貧しい心の人などいませんよ。住民が話し合って、観光関連の店などを作れないようにしているんですよ」。こう説明してくれたのは、ホテルのスタッフ。彼はフランス本土から島の自然に憧れてやって来た。シンプルな生活スタイルを心掛けているという。
また村々を歩いていると、お金をかけた施設などというものはホテル以外は見当たらない。子供の遊び場のブランコも手づくり、住民が集まる集会所すら質素な手づくり。すべてが自然の素材を使った手づくりでまかなわれている。
フランス政府は、このような住民の意向を尊重して、島々の保護を目的に特別区に指定している。住民もフランス政府の方針に満足しているのか、独立すると言われていたもののフランス領にとどまることになった。
日本で「天国に一番近い島」という小説がベストセラーになり、そして映画も作られた。あれから長い月日が経っても、この島々は時間が止まったように何も変わらない。今時、こんな島があったのかと思うと、何故かうれしくなってくる。
「海外移住情報」ニューカレドニア写真集
http://www.interq.or.jp/tokyo/ystation/ncp.html
→ 第12回:ベトナム、シクロ物語