第81回:またまた大統領選挙
更新日2008/10/09
一体、何人大統領に立候補しているかご存知でしょうか?
正解は16人です。実は私もそんなに立候補している人がいるのは知りませんでした。古くからおなじみのラルフ・ネイダーの名前もありますが、他の候補者は投票用紙のサンプルを手にして、初めて目にする名前ばかりです。
州の下の単位"郡"ごとで投票用紙も違えば、投票の方式もパンチカード、タッチスクリーンコンピュータ、昔ながら紙と異なります。私の住んでいるコロラド州の西外れの町はメッサ郡にあり、ここの投票用紙は古式豊かな紙で、名前の右にある楕円形の空欄を黒く塗りつぶす方式です。
この投票用紙に並んだ候補者の名前は、ABC順…ではなく、トップにマッケイン、その下がオバマでその他大勢の14人は何の基準もなく、でたらめに並べているだけのように見受けられます。
テレビで中継される政策討論会でも、マッケインとオバマ以外の候補者は全く参加させてもらえませんし、雑誌や新聞に14人のその他大勢の意見が載ることもありません。第一、名前すら載りません。これもアメリカ的現実主義というのでしょうか、マスコミの商業主義がメディアを支配しているからしょうか、当選する可能性が全くない候補者は、アメリカ的民主主義のタテマエ上、立候補させてはいますが、マスメディアはその他大勢を事実上無視しています。
11月4日の投票の時、同時に沢山の国会議員、州の議員の選挙や裁判官の信任、修正案の可否投票、国民投票が行われますので、投票用紙は夕刊新聞くらいの大きさの用紙で8ページになります。アメリカ人は、何でも大きいいことが好きなのです。
その中に、コロラドの山奥の廃坑になった町が町興しのために公認のカジノを開いてますが、現在、掛け金の上限が5ドルなのを25ドルに引き上げるのを許可するか否かなどというコロラド州の99.9%の人にとってどうでも良いような投票もあり、条例の修正が11、国民投票で可否を問う事項が18、裁判官の信任が13あるのです。これらに加えて8つのコモゴモの議員選挙があり、総計50件の投票をすることになります。
条例の修正や国民投票は内容が分りにくいので、各条項を説明した投票の手引き、小冊子が郵便で配送されてきます。この小冊子がくせもので、ページ数にして134ページあり、一体どこの誰が書いたのか、なじみのない法律用語を使い、わざと分りにくく解説した代物なのです。
私はアメリカ市民としての義務感から? 最期まで読み通しましたが、途中で何度投げ出そうとしたか分かりません。そのくらい酷い英語で分りにくい書き方です。こんな手引書を工場で働く人やお百姓さん、店員さんたちが丁寧に読み、理解できるとはとても思えません。
仙人のような生活をしている割に、世俗のことに好奇心の強い私のダンナさんですら、この投票の手引き用小冊子には音を上げ、「これ何のことだ?」と、しつこく何度も訊いてきます。
私が、「分らないところは、全部白紙で出す」と宣言するように言ったところ、「そういう態度がファシズムを産むのだ」とダンナさんに叱れる始末です。
投票は80歳のおばあさんでも、ファーストフードの台所で働くアメリカ国籍を取得したばかりのメキシコ系アメリカ人でも誰にでも分るような形にするのが基本だと思うのですが……。
普通のサラリーマンが税金を払うのに、複雑すぎて個人ではとても申告できず、プロの税理士を通さなければならないようなシステムになってしまったように、プロのコンサルタントを使わなければ投票もできない事態にならないことを祈っています。
第82回:またまた大統領選挙 その2

