第138回:アメリカの予備校事情 その1
更新日2009/12/03
アメリカには、日本にあるような予備校はありません。全米を網羅している家庭教師派遣会社はありますが、駅前の一等地に大きなビルを構えた予備校は日本独特のものではないかしら。
アメリカで高校卒業資格とは別に、大学に進学を希望する高校生は、SAT(Scholastic Aptitude
Test)テストとかACT(American College Test)テストと呼ばれる全国一斉に行われるテストを受けなければなりません。そのスコアで凡そどの大学の何学部に行けるかどうかが決まります。
日本の共通一次試験に似ていなくもありませんが、SATやACTテストは全くの私企業が問題をつくり運営しており、文部省とは関係ありませんし、各大学、学部でそれぞれもうけたSATやACTテストの必要最低得点が明記されていますから、自分のテストの結果で、どこの大学に行くことができるのか選ぶことができます。ですから、この試験だけで、自分が狙った大学に落ちた、受かったということにはなりません。
いずれにしろ、どこかに一定の基準を設けなければなりませんので、この二つの私的なテスト会社が行うテストをとても乱暴な、粗っぽい基準と知りながら全国で認めているというのが実情です。
さてはて、SATテストですが、簡単に言えば国語と数学しかないのです。国語はもちろん英語ですが、作文、語彙、解読力(Reading)があり、数学は幾何と代数だけです。ACTテストの方は、これに社会と自然科学が加わります。どちらの試験にしても、そのために必死なって勉強する性格のものではありません。
英語の試験は読んで理解し、自分の意見を論理的に正しく表現できるか、数学も落とし穴がある難しい問題ではなく、論理的な考え方ができるかどうかだけの、ごく基本的な試験で、日本の大学入試問題のように、そのためにシャカリキになって勉強しなければ通らないテストではありません。
でも、このテストの結果が良いと、奨学金を貰ったり、授業料免除になる場合もありますので、私のように貧しい学生には、多少の意義があります。そして、大学に入ってから、CLEPテスト(College
Level Examination Program)を受け、一定のレベルをクリアすれば、大学で一般教養の授業を取らなくても済み、すぐに専門の授業を受けることができるのです。
アメリカのこのやり方で、できる子はドンドン伸びます。高校1年生、2年生でSATやACTテストを受け、大学が設けた基準をクリアしていれば、大学に入れるのですから、しかも一般教養で無駄に時間を潰さずに、いきなり専門課程に行けるのですから、18歳、20歳で博士号を取ることも可能になります。私の知り合いの娘さんは(お母さんは日本人、お父さんはアメリカ人です)22歳でアメリカでもトップクラスの大学で博士号を取りました。
日本の予備校生や浪人生を見ていると、受験勉強にウツツを抜かさないで、自分の好きな専門分野の勉強に本腰を入れた方が良いのにと思わずにはいられません。なにか青春の1年間を無駄に過ごしているように見えてしまうのです。
ところが、あまり優秀でない、ごくごく普通の生徒さん、もしくはそれ以下の生徒さんのことを考えると、大学に来る前に、ある一定のレベルの学力を付けるのはとても大切なことで、予備校のシステムは優れている、と思わずにいられません。
-…つづく
第139回:アメリカの予備校事情 その2