第291回:緊急掲載 ラグビー・ワールド・カップ 2015 ~決勝へ
42勝105敗7分、勝率27.27%。
我がオーストラリア(以下:豪州)から見た対ニュージーランド(以下:NZ)との、過去の対戦成績である。今まで154回戦ってきて、3回に1度すら勝たせてもらっていない、宿敵というにはまだまだ分が悪い相手である。
意外と言えるのが、過去7回行なわれたW杯、この両者の決勝での対決は一度もなかった。ラグビー・ファンが鶴首の思いで、長年待ち望んだマッチ・メイクである。今までの対戦はすべて準決勝で3回、豪州側から、
第2回イングランド大会 16 - 06
第5回豪州大会 22 - 10
第7回NZ大会 06 - 20
と2勝1敗で、こちらは豪州が今のところ勝ち越している。
優勝回数は、NZ、豪州、南アともに2回、イングランドが1回で、南半球勢の中で、一歩先んずるのはどちらかという意味でも興味深い。
ワラビーズ・ファンとしてはぜひ優勝して欲しいが、今年のオール・ブラックスの強さは、おそらく史上最高クラスで、彼らの優位は揺るぎないと思う。ワラビーズは持ち前の粘り強いディフェンスで、相手にトライ・ラインを割らせず、少ない好機を確実にものにしていくしか勝つ方法はない。ワラビーズが勝つときは、接戦を制したときだ。
飽くまでチャレンジャーであるのは間違いなく、選手たちもオール・ブラックスに最大限の敬意を払っている。そして、その最強のチームに打ち勝つイメージをしっかりと描きながら戦いに臨むことだろう。
舞台はラグビーの聖地トゥイッケナム、これ以上のシチュエーションはない。一時も早くこのゲームを観たいような、逆に観るのが怖いような心持ちがして、今週はとにかく落ち着かない気持ちでいる。
3位決定戦。モチベーションを持ちにくい試合だが、今年の南アは本気で勝ちに行く気がする。ジャパンに敗れたことで精神的に追い込まれて崩壊しそうだったのを何とか決勝トーナメントに入れたと語ったフーリー・デュプレア主将だったが、あと一歩、NZには及ばなかった。
今年のラグビー・チャンピオンシップで、アルゼンチンに初勝利を献上してしまった南アにとって、連敗だけは絶対に防ぎたいところ。真っ向勝負でアルゼンチンを潰しにかかるだろう。ジャパンの勝利の意義を深くするには、やはり南アには勝利して欲しいと願っている。
さて、振り返って準々決勝、準決勝について。
私が前回準々決勝の予想をして、勝敗としてはアイルランドの敗退は読みきれなかった。主将ポール・オコンネルとキッカー、ジョナアン・セクストンの欠場は、ジャパンで言えば、リーチ・マイケルと五郎丸歩を欠くごとく、大きな痛手だったのだろう。開始早々の2トライ2ゴールで、完全に出端をくじかれてしまった。
かなり劣勢だと予想していたウエールズとスコットランドも大健闘をした。どちらも、勝敗は紙一重の戦いだった。
ダン・ビガーが途中交代のとき、納得いかない表情でしきりに何かを訴え続けている姿が、とても印象的だった。そして敗戦の瞬間、彼はまさに放心状態だった。今年のウエールズ、キック前のパフォーマンスも含めて、彼はミスター・ウエールズであり続けた気がする。
大好きなスコットランドの善戦は大変うれしいが、基本的に彼らが豪州戦であげたトライはインターセプトやチャージからによるものがほとんどで、相手ディフェンスを崩してからの、いわゆる理詰めのトライはなかった。そういうトライを奪って行かない限り、やはり勝ちきれるものではないと、そう強く感じた。ファンとして、あえてそう言いたいと思う。
フランスは、相変わらず摩訶不思議なチームである。それにしても49点差というのは、接戦でもつれるゲームになると予想していたところに、フランスらしいと言えばそうなのだが。今年はこちらが調子が悪いと見ているとスルスルと決勝まで行ったり、好調だと感じているとあっさりと負けてしまったり。
準決勝の2試合は壮絶だった。観ていてラグビー好きで良かったなあと実感できたゲームだった。NZと南アは2点差での勝敗だったが、私がどちらのファンでもないので客観視できるのからなのだからか、僅差の割にはNZが随分と余裕を持って勝利したゲームだったように思う。
アルゼンチンの愚直なまでの突進は、ワラビーズ・ファンである私にも、大変感動的に映った。それに対し、伝統的に良いワラビーズの第3列、凄まじい仕事をしていた。マイケル・フーパー、デイヴィット・ポーコックは相変わらず光っていたし、この日のスコット・ファーディーの動きは実に献身的。大好きなアダム・アシュリー=クーパーが3トライを挙げマン・オブ・ザ・マッチを取ったことは本当にうれしかったが、ファーディーにこそ取って欲しかった気がする。
さて、決勝のキック・オフは10月31日(土)午後4時(日本時間:11月1日(日)午前1時)である。3日後には今年のW杯もすべて終わってしまう。今から「祭りの後症候群」の訪れが、とても怖い私である。
※お詫びと訂正
前回のコラムで、友人の言葉として「ジャパン・ラグビーの興亡この一戦にあり」との発言があったと書きましたが、これは日露戦争においての秋山眞之の「皇国ノ興廃此ノ一戦ニ在リ、各員一層奮励努力セヨ」から取った言葉なので「興亡」ではなく「興廃」でした。友人も間違いなくそう言っていたところを、私が勘違いして記したため、お詫びして訂正いたします。
-…つづく
第292回:ラグビー・ワールド・カップ
2015 ~そして閉幕
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