■Have a Nice Trip! ~そしてまた、新たな旅が始まる…

安田 修
(やすだ・おさむ)


1958年、神戸生まれ。ルポライター、JTB 系広告代理店(マーケティング・制作)等を経て、現在はフリーとしてライターや出版企画などのプランナーとして活躍する。世界の辺境が大好きな現役バックパッカーで、ネットサークル「海外に住もう会」を主宰している。世界各国の移住情報や長期旅行の情報をまとめた「海外移住情報」をネットで公開中。
著書『日本脱出マニュアル』


第1回:ベトナム・ホーチミン
第2回:中国・大連
第3回:フィリピン・セブ島
第4回: ネパール・カトマンズ
第5回: メキシコ、オーストラリア
第6回: パキスタン・ギルギット
第7回: 戦争を知りたい女子大生
第8回:悪夢のハンガリー・スロヴェニア徒歩越境
第9回:今時の卒業旅行者たち
第10回:冬の欧州、貧乏旅行者は辛いよ
第11回:天国に一番近い島
第12回:ベトナム、シクロ物語
第13回:バリ島のジゴロたち
第14回:ベトナム、路地裏カフェ物語
第15回:ネパール、チベット難民キャンプの女性たち




■更新予定日:毎週木曜日

第16回:バリ島、労働査証のない日本人店主たち

更新日2002/07/04


インドネシアのバリ島は、日本人リピーターが多い定番観光地。石を投げれば日本人に当たるのではと思うぐらいに、何処に行っても日本人に出会う。そんな日本人需要を見込んで、この島でレストランやみやげもの店を開く日本人もまた多い。

ただインドネシアは、開業したり住んで生活するための査証取得が厳しく、またやたらと複雑でややこしい国。もちろん、会社を作ったりして居住のための査証を取得するエージェントもあったりするが、日本人を食い物にしようとする業者も珍しくない。

そんなことが背景にもなって、観光査証で入出国を繰り返しながら、現地で商売を始める人がとても多い環境。特に、4、5年前に現地通貨が暴落し、ルピアの価値が5分の1になってからは、その数はうなぎのぼり。小さなお店であれば、100万円以内のお金で気楽に開業できてしまう。

一方、日本人の開業事情を知っているバリ島の警察官。日本人のお店をひたすら廻っては、ワイロの徴収に忙しい。仲間内で情報を交換したり、せびったワイロを山分けしたり、すっかり日常業務になっているらしい。

日本人に最も人気のあるウブドゥで、日本料理店を経営するAさん。観光査証のままで開業している一人。日本でデザイナーをしていただけあって、時代劇に出てきそうな個性的な店構え。店内はいつも日本人旅行者で賑わっているものの、警察官が覗きにくると、途端に厨房や店の片隅に隠れたり、お客になりすましたりと大変。

「正規の査証をいずれ取得しようとは思っていますよ。でも2ヶ月毎に日本を往復する生活に不便は感じていません。会社を作ったり、査証を取るにも、かなりの金額のワイロが必要らしいですし、そんなお金払うのもばかばかしいですよ」。

観光客で賑わうレギャン通りには、バリ好きの若い女性が開いたカフェがあった。カウンターだけの小さなお店ながら、エアコンもあって、日本の喫茶店といった感じだ。

「なんとなくこの街が気にいった矢先に、前の日本人オーナーから、このお店を譲りたいという話があったんですよ。日本の感覚ではそんなに高い値段ではなかったので、気楽に買いました。でも後で知ったのですが、家賃は完全に日本人料金。隣にあるバリ人のお店の何倍もするんですよ。しかも営業許可を取っていなかったので、警察官にワイロを要求されるし、ストレスいっぱい・・・。このお店を買ってくれる人がいれば、手放したい気分です。きっと前のオーナーは、私が買って大喜びしているんじゃないですか…」。

また、クタビーチには、バリ人に運営をまかせている日本人オーナーの飲食店があった。

「このお店のオーナーは日本人の女性。でも日本で会社員をしているから、年に数えるぐらいしかバリ島には来ないんだ。だから俺たちの自由さ。赤字の時はオーナーの責任。黒字になれば利益を皆で山分けするから、オーナーの利益なんてないよ。日本人がお金だけ出して儲けようなんてとんでもない話さ」。

こんな言葉に対して、バリ島で長く商売している日本人は言う。

「バリ島でビジネスをしようと思ったら、きちんと正規の許可を取ることと、バリ島に住んで、お店などに必ず居ること。島を離れてしまうと、どんなトラブルに見舞われるか分かりません。何故って、ここはバリ人の島ですから。彼らにとって、日本人は一時的な訪問者でしかないのです・・・」。

 

→ 第17回:ミャンマーは日本の田舎?