第142回:アメリカのボーナス
更新日2010/01/14
日本で働いている人を羨ましく思う時は、なんと言ってもボーナスのシーズンです。皆が皆、素晴らしいボーナスにありつくわけではないでしょうけど、うちのダンナさんと一緒に12月のボーナスシーズンに日本に行きあわせた時、彼の友達と居酒屋などに繰り出し、割合平気で"お前のところ、いくら出た"と訊きあっているのを小耳にはさみました。その金額を聞いて、一桁か二桁、ゼロが2、3個間違ったかなと思ったほどに驚きました。そんな大金が給料のほかに毎年2回も出るのは凄いことだと呆れ、感心し、自分がなんだか馬鹿に小さな仕事に就いているような気になったものです。
客員として日本の大学で教えた時には、私の給料はアメリカから出ていましたから、同僚の先生たちがニコニコ、ホクホクしているのを尻目に、忘年会でご馳走になっただけでした。
プエルト・リコの大学で教えていたとき、プエルト・リコ人はなかなか人間的で暖い心を持っていますから、ボーナスとして冷凍の七面鳥を一羽貰ったのが、私の唯一のボーナスかしら。
アメリカにボーナスはないと、以前に書きましたが、それは私たちのような一般庶民に限っていえば当っているけど、アメリカにもボーナスを貰っている人もいます。
世界の経済の動向を握っているウォール街の偉いサンたちは、天文学的な金額のボーナスを貰っているのです。発展途上国の国家予算くらいのお金を動かし、会社や投資家をたっぷり儲けさているのだから、そのくらいのボーナスを貰っていても当然と考える人もいます。しかし、"そのくらい"が問題ですし、もっと問題なのは、会社を破産状態にし、政府から1兆8,000億円の融資を受けているAIGのような会社の社長さんが、10億円以上のボーナスを貰っているのは大問題です。これには呆れてモノを言う気力もなくなってしまいます。
日本なら、会社をそんな状態に陥れた社長さん以下、経営者、管理職の人はあえて、ボーナスをゼロにして、給料も減額し、挙句の果てには退職するのではないかしら。
アメリカでは経営不振に陥った会社の社長さんが、社員、工員に払う給料がないのを悔やんで自殺するのを聞いたことがありません。まだ私の耳はそんなに遠くなっていないはずですが。
天井の人々なのであえて名前を出しますと、ゼネラルモーターズの社長さん、リック・ワグナーは政府から50億ドル(5,000億円相当)の融資を受け、その中から、自分のボーナス、540万ドル(5億4,000万円相当)取って(盗ってと書きたいところです)います。
先に書いたAIGの社長さん、マーティン・サリヴァンは1,800億ドル(1兆8,000億円相当)を政府から貰い、その中から自分用には1,050万ドル(10億500万円相当)のボーナスを受け取っているのです。
可哀想にボーナスなしの社長さんもいます。投資会社ゴールドマン・サックスの社長さん、ロイド・ブラフィンです。彼の給料は、ボーナスなしで年収4,200万ドル(42億円相当)、これを週給に直すと毎週82万5,900ドル(8,200万円相当)になります。そんな天文学的な給料、ボーナスは政府のお金、つまり私たちの税金から出ているのです。
薄給の上、ボーナスに七面鳥の片方の足の分も出ない教職にある身として、ついグチっぽくなってしまいましたが、こんな高額な給料取りの存在を許すのがアメリカ流資本主義なのです。
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