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■鐘を鳴らそう 鳴らせば鳴る鐘が、まだあるのだから~音羽信の心に触れた歌たち

更新日2025/09/25




鐘を鳴らそう

鳴らせば鳴る鐘が、まだあるのだから


~音羽信の心に触れた歌たち~


音羽 信



第10回:アイ・ショット・ザ・シェリフ

by ボブ・マーリィ

   歌 エリック・クラプトン

俺は保安官を撃っちまった

新米の補佐の方を殺ったわけじゃねえ

俺が撃ったのは保安官

殺ったのは補佐なんかじゃねえ

 

街中どこにいても、いつでも

奴らは、何とかして俺をしょっぴこうとする

俺を罪人にしたくて

何なら保安官補佐を犠牲にしてでも

補佐殺しの罪でも何でもいいから

俺をしょっぴこうとする

でも言っとくけど

 

俺が撃ったのは保安官

正当防衛だった、誓ってもいい

確かに俺は保安官を撃った

だから死刑だとあいつらは言う

 

保安官のジョン・ブラウンは

俺を憎んでた、ずっとそうだ

どうしてかって?

そんなことわかるわけねえよ

俺が畑に種を撒くと

芽が出たら引っこ抜いてやる

大きくなる前に殺ってやる

なんて言いやがる

だから

俺が撃ったのは保安官

けど、正当防衛だった、誓ってもいい

確かに俺は保安官を殺った

誓ってもいい、正当防衛だったんだ

 

ある日

自由になろうと思って

この街を出て行こうとしたんだよ

そしたらとんでもないことに

保安官のジョン・ブラウンが

俺を撃ち殺そうと

銃を構えて俺に狙いをつけやがった

 

だから撃ったんだ

撃ってあいつを殺っちゃった

だから死刑だって言うんなら

上等じゃねえか

やってみろってんだ

 

俺は保安官を撃った

補佐を殺ったわけじゃねえ

俺が撃ったのは保安官

殺ったのは補佐なんかじゃねえ

 

とにかくとっさに銃で撃った

俺にしてみたら

そうするしかねえじゃないか

 

毎日まいにちバケツで井戸の水を汲んでりゃ

そのうちバケツの底が抜ける

いつかは底が抜けるのと同じだよ

 

俺は保安官を撃った

神に誓ったっていいけど

補佐を撃ったわけじゃねえ

保安官は撃ったけど

補佐を撃ったわけじゃねえ

 

"I Shot the Sheriff" - Bob Marley
Cover Version by Eric Clapton

 

ロッド・スチュアートもそうだが、エリック・クラプトンも他のアーティストの歌の良さを引き出すことに長けている。例えばJ・J・ケールの『コカイン』は、クラプトンが歌うことで有名になった。両者の歌が世界でラジオで流された回数を数えたなら、クラプトンのヴァージョンは、何万倍、あるいはそれ以上になるだろう。J・J・ケール自身、彼が歌ってくれたのでずいぶん助かったと言っているくらいだ。

アメリカのシンガーソングライターDanny Whittenの『I don't Want Talk About it』もロッドのコンサートでは必ずのように歌われる。この歌をロッドの歌と思っている人も多いだろう。このボブ・マーリィの『I shot the sheriff』もそうだ。クラプトンが歌って、そして彼の定番曲になった。


余談になるが、昔イビサ島で暮らしていた時、確かあれは1978年頃だったと思う。ボブ・ディランが世界ツアーに出て、ヨーロッパにもやって来るという噂が流れた時、友達に、いいなあ、観に行きたいなぁ、と呟いた時、彼が、サラッとした表情で、じゃあ僕がイビサにも来てくれるように頼みに行こうか、と言った。とんでもないことを言うなと、その場はやり過ごしたが、何と彼は、本当にディランとの交渉に出かけた。

結果はもちろんダメだったが、あろうことか彼は、その代わりとでも思ったのか、その頃アルコール中毒で不調のどん底にあったクラプトンのイビサでの一夜限りのコンサートの約束を取り付けて帰ってきた。嘘かと思っていると、確かにクラプトンが、それからしばらくして豪華なクルーザーで、その頃の恋人のイボンヌやバンドのメンバーを引き連れてイビサにやってきた。

イビサにはその頃、クラプトンほどの大物がコンサートをやる場所はなかったので、クラプトンはイビサの闘牛場でコンサートを演って帰って行った。しかも、それからしばらくして、今度はボブ・マーリィがウイラーズとともにやってきて、同じように闘牛場でコンサートを演った。イビサが気に入ったボブ・マーリィは、コンサートのギャラでイビサに家まで買った。残念なことにそれからしばらくしてボブ・マーリィは亡くなってしまったけれど、生きていれば、彼の姿を旧市街のマヨール通りかどこかで見かけることもあったかもしれない、と思うと残念な気もするが、ともかく、不思議なことにイビサでは、信じられないようなことが当たり前のように起きた。

 

さらに余談になるが、ある時、バルセロナからロンドン経由で東京に行こうとしていた時、便の都合で、ロンドンに一晩泊まらなくてはいけなくなった。仕方がないので、ロンドンの昔のタウンハウスを改造した伝統的な小さくて小綺麗なホテルに宿をとった。そこでフロントのおばちゃんに、今夜、何かいいコンサートはない? と聞くと、ちょうどウインブリン・アリーナでロッド・スチュアートのコンサートがあると言う。早速席を取ってもらってロックの聖地に行ってみると、会場の外には、ピンク色や真っ白の、とんでもなく車体が長いリムジーンなどをはじめ、高級車がワンサカいて、さすがロッドと思わずにはいられなかったが、中に入ってみると、かなり前の方のいい席で、やっぱりヨーロッパでは、コンサートの席を取るには古いホテルに頼むのが一番、と改めて思った次第。

コンサートは名曲のオンパレードで、サービス精神の旺盛なロッドのコンサートは流石に楽しく、観客もほとんど全曲大合唱。もちろん最後は『Sailing』だったが『I don't Want Talk About it』も歌われた。


歌には、誰のものでもない命、のようなものが宿っている。誰かが創ったとしても、その人が誰より上手に歌えるというわけでは必ずしもない。というか、その歌の魅力に目を留めた人が、歌に新たな輝きを、新たな生命力を与えることはよくある。そして魅力の見出し方は、良い歌であれば、もしかしたら無限にある。ジャニスの『Summer Time』やジョー・コッカーの『With a Little Help from My Friends』もそうだが、優れた人が時に応じて相手に応じて場面に応じて異なる魅力を放つように、優れた歌は優れた歌い手によって歌われることで生き返り、そして生き続ける。

エリック・クラプトンやロッド・スチュアートは歌の魅力を引き出す達人だ。それは彼らが、自分の歌であれ誰かの歌であれ、そんなこととは関係なく、歌というものを、それ自体が命を持つものとして、人間にとってかけがえのないものとして愛している証しだ。

 

I Shot The Sheriff - Bob Marley & The Wailers
<Live At The Rainbow Theatre, London/1977>

https://www.youtube.com/watch?v=zGO8HN1QQdI

 

I Shot The Sheriff - Eric Clapton
Album <461 Ocean Boulevard> 1974

https://www.youtube.com/watch?v=L0xLLPJ0bOw

 

No.10-01
Bob Marley

No.10-02
Eric Clapton

…つづく

 

 

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谷口 江里也
(たにぐち・えりや)
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本や歌や建築、さらには自治体や企業のシンボリックプロジェクトなどの、広い意味での空間創造を仕事とする表現哲学詩人、ヴィジョンアーキテクト。
主な著作に『鏡の向こうのつづれ織り』『鳥たちの夜』『空間構想事始』『天才たちのスペイン』、主な建築作品に『東京銀座資生堂ビル』『ラゾーナ川崎プラザ』『レストランikra』などがある。
なお音楽作品として、シンガーソングライター音羽信の作品として、アルバム『わすれがたみ』『OTOWA SHIN 2』などがある。

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