■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から


Grace Joy
(グレース・ジョイ)




中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。



第1回:男日照り、女日照り
第2回:アメリカデブ事情
第3回:日系人の新年会
第4回:若い女性と成熟した女性
第5回:人気の日本アニメ
第6回:ビル・ゲイツと私の健康保険
第7回:再びアメリカデブ談議
第8回:あまりにアメリカ的な!
第9回:リメイクとコピー
第10回:現代学生気質(カタギ)
第11回:刺 青
第12回:春とホームレス その1
第13回:春とホームレス その2
第14回:不自由の国アメリカ
第15回:討論の授業
第16回:身分証明書
第17回:枯れない人種
第18回:アメリカの税金
第19回:初めての日本
第20回:初めての日本 その2
第21回:日本道中膝栗毛 その1
第22回:日本道中膝栗毛 その2
第23回:日本後遺症
第24回:たけくらべ


■更新予定日:毎週木曜日

第25回:長生きと平均寿命

更新日2007/08/23


世界で最年長の記録を持っていた日本のお婆さんが114歳で亡くなりました。チョット、想像がつかないくらいの長生きです。私の周りにも老人が増え(ということは、私自身も老齢に近づいてきたのですが)顔を会わせると、誰それが亡くなったとか、しきりに自分の病気の話をするようになりました。

日本の長寿世界記録保持者のお婆さんの話を彼らにすると、決まって、「そんなに長く生きたくはないけど、体が自由に動く限り生きたい」などと、手前勝手なことを言います。自分の意思で生まれてきたわけではないし、またどのような病気でどのように死ぬかの選択権も私たちにはありません。与えられた人生をより良く生きることしか許されていません……と言うのは簡単ですが、私の人生を振り返ってみても、悟ったところは一つもなく、悪あがきの連続だったように思います。

聞くところによると、日本では人生50年という言葉があり、サムライの時代には50歳は隠居する年で、家督を息子に譲り、後は盆栽,俳句に明け暮れるのがナライゴトだったようです。私のダンナさんはそれを10年も越えた還暦とかで、還暦祝いの冷やかし半分のメールや手紙を沢山もらっています。本人は、「これからの人生は、グリコのオマケだ。思いっきり好きなことをやるぞ」と、まるで今まで世のため、人のために自分を犠牲にしてきたようなことを言っています。もちろん今までだって好き勝手なことばかりしてきた人なんですが…。 

寿命を統計で見ると、どこで生まれたかによって長生きできるかが決まってしまうようです。

アメリカは毎年平均寿命を延ばし、今年の統計でも過去最年長の平均77.9才になりました。喜ばしいことですが、それでもなんと全世界から見ると42番目で、カリブの島国ケイマンやグアム島の人々より短いのです。長寿国NO.1はフランスとスペインの間にある山間のミニステイト、アンドラで、83.5歳でした。日本は常にトップクラスですが、今回は2番目でした。

寿命が短い方の国はアフリカのサハラ砂漠周辺の国々で、スワジランドが34.1歳で、ザンビア、アンゴラ、リベリア、ジンバブエと続きます。恒常的な内戦とHIVやAIDSが蔓延していること、基本的な医療さえないことによるもので、政治が変わり、医療システムさえ整えば飛躍的に平均寿命が延びることは明白です。政治的不幸がその国の人の命を縮めていると言ってよいでしょう。

その言葉はそのままアメリカにも当てはまります。世界で一番お金持ちの国がなんで寿命で42番目なのでしょう。しかも一人当たり健康保険に支払っている金額は、圧倒的に世界ナンバーワンなのです。アメリカの医療システム、言いかえれば医療政策が悪いとしか言いようがありません。

アメリカ人の寿命を縮めているのはデブ問題です。アメリカ人の3分の2がオーバーウエイトなのですから。

医療や犯罪などの社会問題を論じるとき、いつもこれを人種問題にすり替える論評が幅を利かせます。アメリカの白人だけの統計ではコレコレで、ヨーロッパのレベルである、黒人やラテン系は平均を下げている云々という理論です。確かに平均寿命だけ見ると、黒人は69.8歳で、ニカラグア、イラン、シリアと同じレベルです。

こんなことを言う人たちは、きっと黒人も最近移住してきたメキシコ人も、アメリカの国民であることを忘れているのでしょう。黒人やラテン系のアメリカ人の健康意識が低いのではなく、低所得の人々が加入できる健康保険がないことが問題なのです。貧しいがゆえに切り捨てられた人々が余りに多いことが、アメリカの平均寿命を下げているのです。

同じことがオーストラリアの原住民アボリジニにも当てはまります。アボリジニはオーストラリア人よりも17年も早く亡くなっています。

ついでに、幼児死亡率を調べてみたところ、アメリカでは1,000人の新生児に対して6.8人が死んでいます。それはアメリカ政府が敵視し、軽蔑するキューバよりも高く(もちろん日本、ヨーロッパのどの国よりもダントツに高く)、黒人の場合は13.7人が死んでおり、サウジアラビアと同じレベルなのです。

4,500万人、人口の20パーセント以上のアメリカ人が全く医療保険に加入していません。国が関与した医療保険が唯一の解決策であることは、誰もが認めていますが、余りに巨大になった私立の健康保険会社と、それと結びついた大手の製薬会社が大量な資金に物言わせて繰り広げるロビー活動(政治圧力団体)の前に、将来アメリカが国として社会医療保険制度を導入する可能性は、ミッション・インポシブルでしょうね。

私の両親は、健康保険で割り引いてくれる薬代でさえ高すぎるので、薬をカナダの薬局へメールオーダーで購入してます。緊急を要さない大きな手術は、インド、タイ、マレーシアなどへ出かけそこで行う、ヴァケーション・サージュリイ(休暇手術)と言うのが流行りだしています。

 

 

第26回:新学期とお酒


 
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