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■新・汽車旅日記~平成ニッポン、いい日々旅立ち
 

第684回:地下鉄地上区間と駅前散歩 - 仙台市営地下鉄南北線 富沢~泉中央 -

更新日2019/05/02



地下鉄はトンネルの中を走り車窓がないから、日の出前、日の入り後に乗ってもいいと思っていた。しかし油断は禁物で、郊外へ向かうと地上区間になる路線は多い。完全に地下区間だけという地下鉄路線のほうが少ないくらいだ。東京の地下鉄は東京メトロ半蔵門線、南北線、都営浅草線と大江戸線の4つだけ。それと知りつつ、私は仙台市営地下鉄南北線で失敗した。夜間に乗ったところ、富沢駅付近と泉中央駅付近に地上区間があった。暗い夜景を見つつ、いつか乗り直そうと決めた。記録を振り返ると10年前(第188回)だ。もう10年も経ってしまったか。

01
トンネルを出ると富沢公園

東西線で仙台駅に戻り、南北線に乗り換えて、まずは南側の富沢へ向かった。向かっているけれども、やはり地下鉄だから景色は見えない。地上に出る部分は終点の富沢駅のちょっと手前からだ。トンネルを出ると進行方向右側に公園があり、そのまま線路が高くなって高架区間。住宅街を見渡して富沢駅に着く。

02
住宅街の高架区間

10年前、富沢駅前の周囲は暗かった。私は駅舎を眺めて引き返した。しかし今回は周辺を散歩してみよう。案内図を見ると近くに川がある。新笊川。ローマ字で Shin-Zaru River とある。笊はザルと読む。川沿いを散歩して、二つばかり橋を渡って戻ってこよう。富沢駅の高架は広めの道路にまたがっており、駅舎から続く歩道橋もプラットホームと並んで道路をまたぐ。道路の向こう、川の手前に下り階段があって、そこはちょっとした公園になっていた。

03
富沢駅に到着した列車は、さらに南側へ引き上げて折り返す

04
富沢駅。大きな高架駅だ

公園は新笊川に接している。川は細く、川面は土手を降りたところで、水辺に降りる階段があった。細い川だけれども、水量が増えれば、おそらく土手のフチまで水面が上がるのだろう。よく整備された河岸だし、新とつくからには、本来の笊川があって治水対策で作られたと思われる。水辺の小道と川面のあたりは背の高い草が伸びている。犬の散歩コースにちょうどいいな、と思ったら、散歩中の大型犬とすれ違った。

05
大野田イコタ公園

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新笊川の沈下橋から。反対側に桜並木もある

一巡りして満足して、こんどは駅の反対側、電車から見えた公園に行こうと思ったら雨降りが強くなった。電車の見える公園に行きたかったけれど、傘をして行くほどではないな。富沢駅に戻り、泉中央行きに乗った。車窓に公園が現れて、トンネルに入る。また地下区間である。早起きしたから眠くなってきたけれど、耐える。

仙台駅から数えて七つめの黒松駅は、いままでの駅に比べると明るい。地下駅だけれども、掘り割りの中にあり、空からの光が届く。地下室付き住宅の間取り図で、ドライエリアと呼ぶ構造に似ている。この駅を出ると地上区間、10年前に悔しい思いをしたところだ。あの時は音で気づいた。車窓は暗いけれども、列車の音の反射が止んだ。そうか、ここは地上かと思った。あのとき、地上にもかかわらず暗い理由がわかった。車窓右手は公園だった。溜池もある。車窓左側は森である。なるほど夜間は暗いわけだ。

07
黒松駅から地上区間が始まる

公園の車窓が終わると、線路は森に挟まれ、戸建て住宅が並ぶ。マンションが現れると高架区間になった。線路の勾配はなかった気がする。八乙女駅は高架駅だ。駅の南に仙台川、北は高柳川がある。仙台の中心はもともと高台にあって平地になると高架になる。もしくは、川沿いの標高の低い地形は高架線路にした。東京の地下鉄銀座線の渋谷駅と同じ理由だ。線路は七北田川を渡ると広い公園を貫いた。そして泉中央は高台の街。駅は地下にある。

08
七北田公園 反対側の車窓は仙台スタジアム

10年ぶりの泉中央駅。あのとき私は大きなネットカフェに泊まった。しかしどこにあったかは思い出せない。電子地図を見ても付近にネットカフェはない。そして、当時は大きな駅前広場が印象に残っていたけれど、大きな建物が背たくさん建っている。地下鉄のおかげで発展したようだ。10年も経てば街の様相は変わる。それを見届けられて良かったとも思う。

09
泉中央駅、10年前から大きく発展した

じつは、仙台市営地下鉄南北線は北も南も延伸構想がある。泉中央駅から北の富谷市、西の泉区へという2ルート。南は富沢から名取川を渡って名取市へ。南北線は仙台空港アクセス線として構想された時期もあるようだ。そういえば富沢駅は延伸できそうな構造だ。いつになるかわからないけれど、地上区間だと嬉しい。景色優先で作られる鉄道は少ないけれども。

10
ルーブル美術館風? の明かり取り

-…つづく



杉山 淳一
(すぎやま・じゅんいち)
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1967年生まれ。東京出身。東急電鉄沿線在住。1996年よりフリーライターとしてIT、PCゲーム、Eスポーツ方面で活動。現在はほぼ鉄道専門。月刊文藝春秋「乗り鉄うまい旅」連載。「鉄旅オブザイヤー」最終選考委員。

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■著書
『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法: 時刻表からは読めない多種多彩な運行ドラマ!』


列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法
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