第196回:ラグビー・ワールド・カップ2011 プール戦 ハーフタイム
ラグビーW杯、プール戦4週のうちの2週が終わった。試合で言うとハーフタイムと言うところである。
今年はプール戦から、世界ランキング(今回記載しているのはW杯直前の9月5日付)の下位チームが上位チームを脅かすというゲームが多く、たいへんに面白い。前回触れられなかったNZ以外の強豪国の筆頭である豪州(世界ランキング2位:以下WR-2)が、ランキングでは6つ格下のアイルランド(WR-8)に足下をすくわれた。スコアは15-06。
もともとアイルランドは、豪州とW杯で今回の試合までに4回戦っていて4連敗。しかし拮抗したゲームをすることも多く、第2回大会のトーナメント準々決勝で18-19、第5回大会のプール戦では16-17の1点差ゲームで涙を呑んでいた。
けれども、今回のアイルランドは、スクラム、ラインアウトなどセットプレーを始め、すべての局面で豪州を凌駕していた。一つひとつのプレーに不屈のアイリッシュ魂が込められたようなゲームだった。
豪州は、大変な魅力である反面、不安材料である「若さ」がマイナスの方向に出てしまった感じがした。ゲーム途中で生きの良い若手選手たちがずっと不安げな表情を浮かべ、戦いの方向が決まらないことに苛立っているようだった。
ただそんな中でも、21歳、最年少のジェームズ・オコナーの相手選手のトライをギリギリのところで止めた高速タックルなど、随所に気迫あるプレーを見せてはくれていた。豪州ワラビーズのファンとしては、今までの6大会で続いていた、全勝でない限り優勝できないというジンクスを、ぜひ打ち破ってもらいたい。
ウエールズ(WR-6)も南ア(WR-3)を相手に実によい戦いをした。16-17。「たられば」はスポーツの世界では禁物だが、ゲーム終了間際のドロップゴールかペナルティーゴールのうちの1本が入っていれば、ウエールズは大金星を挙げられたのに、と悔やまれる。
南アは、その後前回大会で苦しめられたフィジー(WR-15)を、今大会では49-03のスコアで一蹴したが、本当のところどれほど実力があるのか、よくわからない存在である。
このまま行けば、トーナメント準々決勝では豪州と当たり、いきなり南半球同士のビッグゲームが組まれる。ここで南アの真価が問われることになるだろう。
アイルランド、ウエールズの好ゲームが続いたが、もうひとつのゲーリックの国、我がスコットランド(WR-7)は、まだどうもぱっとしない印象だ。
初戦のルーマニア(WR-17)戦は、最後の2トライで突き放したものの、途中まではリードを許してしまっていた。スコアは34-24。続くグルジア(WR-16)戦では、またまた「トライ獲れない症候群」に陥り、フォワード戦では完全に劣勢になったが、ペナルティーキックなどで15-06と、どうにか逃げ切る。
トライが獲れないから、実況アナウンサーからも、「今日のスコットランドも、3の倍数スコアです」と、ありがたくないコメントを受けてしまう。
後のプール戦での相手はアルゼンチン(WR-9)とイングランド(WR-5)ランキングでは拮抗しているように見えるが、どちらもスコットランドの良いところを全部出し切っても、勝てるか勝てないかの難敵である。
スコットランドは、過去6回大会で、何とか常に決勝トーナメントに進んでいたものの、今回はその進出に黄信号が灯っている。今回のプール戦では前記の第1試合、第2試合の間隔が中3日と極端に短く、第3試合までは中10日。
調整の難しいところだが、与えられた長い時間を充分な準備期間と考えて次のアルゼンチン戦に臨んでもらいたい。
さて、ジャパン。フランス、NZ戦での敗戦の状況は、ジャパンのコーチ、選手らが想定していたものと、それほど大きな差はなかったと思う。反省すべき点は多いが、落胆する必要はまったくない。
残る21日のトンガ戦(この文章をお読みいただいているときはすでに結果は出ている)、27日のカナダ戦、双方とも今までジャパンの目指してきたラグビーができれば勝てる相手だ。
トンガは、プール戦でカナダに敗れ、何としてもW杯での1勝をもぎ取るために、必死の形相で戦ってくることは間違いない。一方、カナダは前評判よりもはるかに良く仕上がっている印象を受ける。
ジャパンは、フランス戦、NZ戦で予想以上の負傷者が出て、何人かは戦線離脱してしまった。戦力ダウンは免れないが、そこは残った選手達が必死にカバーをして戦っていってほしい。
心から応援したい。
※編集部注:9月21日のトンガ-日本戦は、残念ながら31-18でトンガ勝点4
-…つづく
第197回:ラグビー・ワールド・カップ2011 プール戦終了
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