第535回:不思議な財政~国は決して潰れない?!
自分の懐が痛まない限り、人間は至って鷹揚に散在するという悲しい性(サガ)があるようです。会社の接待費で落ちるなら、自腹を切って決して行かない超高級なレストラン、ナイトクラブなどに赴いたりするのは、そのよい例でしょう。ダンナさんによれば、「接待費の半分はテメ~でテメ~の接待をしているようなもんだ」と言うことになりますが…。
トランプ大統領の旅行と警備の費用が3ヵ月で30億円(オバマ前大統領は1年間で10億円でした)を超えたとニュースになりました。一国の大統領ですから、彼自身の身の安全を図るのは当然のことですが、家族、郎党一族の旅行と警備に相当使っているのです。いくら使っても、決して潰れないのが国家です。
日本は世界でダントツの赤字財政国です。なにせ赤ちゃんからヨレヨレ老人まで含めた国民一人当たり、900万円相当の赤字を国が抱えているそうで、GNP(国民総生産)が230%になるというのですから、半端な数字ではありません。国を救うために、皆さん900万円ずつ国に払いましょうというキャンペーンを展開しても、誰一人そんなお金を払う人はいないでしょう。政治家、お役人が良い給料を貰い、その上無駄使いばかりしているのに、どうして私たちがそれを負担しなければならないの、と考えるのは当然です。
これが民間の会社なら、遠の昔に潰れていても不思議でありません。政治家、官僚はセックススキャンダルには弱く、退陣させられることはあっても、戦争や経済政策の失敗には全くと言ってよいほど責任を取ろうとしません。
日本を例に出しても、JDI(ジャパンディスプレイ;液晶パネルのメーカー)は経済産業省が絡んだ会社ですが、2,750億円の税金を使い、失敗しても役人は誰もクビになっていませんし、経済産業省自体が破産し、取り潰しになったとも聞きません。すべて自分の懐が痛まず、責任を取らない体質によるものです。
国の財政の不思議は、シロウト考えですが、国家を企業の一つの変形と見て、健全だと思われる国、例えば、国民一人当たりの国の財政負債が27ドルで、しかもGNPの6%にしかならない国、実はアフリカのリベリアですが、国として教育、福祉の行き届いた住み良い国であるかどうかは、大いに疑問なのです。
負担額が国民一人当たり200ドル内外かそれ以下の国を羅列して見ますと、マリ、ハイチ、ウガンダ、ウズベキスタン、マラウイ、キルバティ、ブルンディ、コンゴ、タジキスタンと赤貧洗うような国ばかりで、逆に国の盛大な赤字、何するものぞとばかり莫大な負債を抱えているのは、日本はそのなかでも異常ですが、ヨーロッパのいわゆる先進国に、シンガポールや産油国なのです。
一体全体、これをどう受け止めればよいのでしょうか。国は決して潰れないから、赤字なんか気にするな、金本位制など過去の遺物だから、ドンドン国債を発行し、紙幣を刷れば済むことなのか、一時期のアルゼンチンやブラジルのように1週間で倍々になるインフレやヒットラーが台頭する前夜のドイツマルクのような天文学的なインフレになる可能性をはらんでいるのか、シロウトには分かりません。
ハーバード大学の偉い経済学の先生、ジェフリー・フランクル博士は、国民総生産(GNP)の成長率より、毎年抱え込む借金の方が多くなればその国は危機に陥ると、GNPの成長率と赤字の増大の関係に目を向けています。
ニコラス・ヴェロン教授は、一国が可能な借金はその返済能力による、莫大な借金を抱えていても、その国の信用度が高く、お金を借りることができるならそれでよいと言っています。
そこで、理想的な国の赤字のレベル、あり方という一線が引けるものなのか、例えば国民総生産の30%程度の赤字、借金なら、健全な国家財政というような基準があるのか、ウチの大学の経済の先生や、モノの本など当たってみましたが、どうにも決定的にそんな基準は存在しないらしいのです。ギネスブック的な赤字財政の日本より、リベリアやマリ、ハイチが健全財政を営んでいるとも言えないということのようなのです。
返済不可能な巨額の借金をしながらも、ドンドン使いまくる不思議な経済で国を運営できるのは、薄給の私たちの家計にとっては羨ましいことです。
後数年で引退し日本に住もうかと考えている私たちにとって、日本が健全な国であって欲しいという気持ちから、ガラにもなく国の経済などという大きすぎる問題を取り上げてしまいました。
第536回:核兵器撲滅運動の怪
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