第185回:不景気な世に良いショーバイ"刑務所屋"
以前、死刑のことをインターネットで調べていたら、当然のように刑務所関連のアーティクルがたくさんグーグルに引っかかってきました。
アメリカの囚人の数も、公表されていない中国を別にするとナンバーワンです。人口10万人に対して何人の懲役囚がいるかという比較でも、754人牢屋に入っており、2位のロシヤ、3位の南アフリカ連邦をはるかに引き離しています。ヨーロッパ(EC内)では100人前後、その中でも一番少ないのはノルウエーの66人とあります。日本は70人で、アメリカの10分の1以下です。
最近、日本でも犯罪が増えたと、ダンナさんの実家に帰るたびに聞かされますが、まだまだアメリカに比べると可愛いものです。なんせアメリカでは成年男子の31人に一人は務所に住んでいるのですから。黒人だけに限れば10人に一人は犯罪人という、恐ろしい数字が出ています。アメリカ全体の人種の比率では12%を占めているだけの黒人が、刑務所内では44%を占めるという悲しいことになっています。
でも、こういう統計はすべて伸べの人数で、一人で何度も刑務所に出たり入ったりしている人が多いでしょうから、私の教室にいる30人の生徒さんの一人は犯罪人だとか、ブルースやラップのコンサートに集まる黒人が3万人いたら、そのうち3,000人は前科者とは言い切れません。
ですが、それにしてもアメリカに250万人もの受刑者がいるのです。250万人といえば100万都市二つ半の人口になりますから、大変な数字です。しかも、毎年うなぎのぼりに増えているというのです。カルフォルニアでは収容人員10万人のところに17万人詰め込まなければ納まりません。これが、フェリーの定員だと1.7倍も乗客を乗せたりすると、大変な事件になりますが、刑務所では詰め込みが許されているようです。
ネズミの実験でも証明されているように、狭いところにたくさんのネズミを詰め込むと、一種の集団ヒステリー状態に陥り、暴力的になるそうですが、人間も同じです。刑務所内の暴力事件が異常に多くなっています。男性の場合ですが、刑務所内で21%の囚人が性的な行為を強制されていますし、強姦(男同士の場合もそう呼ぶのかしら、漢字では女が三つ重なっているから、男性が女性に対して行う行為だけ、この漢字を使うのかしら)は7%も起こっています。しかもこれは表に出てきた数字で、実際にはこれよりもはるかに高く、一度雑居房に入ったら、肉体も精神もボロボロになってしまうと言われています。刑務所内では当然、性が絡んだ病気が広がっています。
日本の男性諸君、くれぐれもアメリカの監獄には入らぬよう、入れられぬよう、近づかぬようご忠告しておきます。
これだけたくさんの囚人を飼っておくのに大変なお金がかかります。一人当たり一年に2万2,000ドルといいますから、アメリカの貧困レベルの収入より多い金額を使っていることになります。とりわけ犯罪の多い郡、例えばフロリダ、マイアミのあるブローワード郡では、郡の総予算の4分の1を刑務所管理費に持っていかれています。アメリカ全体で1982年から2006年まで刑務所の維持に使われたお金は687億ドル(6兆円くらいかしら)になります。
何事もお上がやると無駄が多いことに目をつけ、刑務所管理会社が生まれました。何でもショーバイに結びつけるアメリカの面目躍如たるところで、刑務所屋さんが現れたのです。お客さんである受刑者は毎年確実に増えるし、泊まって頂くお客さんの支払能力に関係なく、州政府やアメリカ合衆国政府が費用を払ってくれるし、こんな良いショーバイはないということでしょう。
大手の刑務所屋さんは3社ありますが、ヒルトンホテルのようにチェーン店を拡大していて、いずれも刑務所設計の段階から、最少の警備員で管理できるように造り、ハイテックを駆使した、逃亡不可能な立派な監獄を管理しています。
また、地元との関係にも力を入れ、今では逆にたくさんの過疎地から土地を提供するから是非我が町、村に刑務所をとばかり、歓迎されているといいます。第一、公害を起こさない。産業廃棄物などの問題がない上、数百人単位で雇用を促進することになり、警備員の家族、囚人を訪問する家族たちのためのモーテル、ホテル、レストランなど、付加価値がゴソッ付いてくるというのです。
どういう経緯で、風が吹けば桶屋が儲かるのか忘れましたが、アメリカが不景気になり、犯罪が増えると、儲かるショーバイもあるのです。日本の投資家の方々、刑務所屋さんに投資してはどうでしょうか。
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