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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から
 

第895回:自分を笑える精神~川柳

更新日2025/04/17


ウチのダンナさんの友人で、もう長いこと俳句に凝っている人がいます。定期的に季節の句をメールしてくれるので、それをダンナさんの解説?で味わっているのですが、私には掴みきれない状況、表現がたくさんあり、100%理解し、感得しているとはとても言えません。でも、俳句の創作を20年以上、もしかすると30年も続けているのは素晴らしいことだと思います。
 
俳句に比べ同じ17文字の川柳の方は、ある程度日本の事情、サラリーマンや家庭を知っていますから、屈託なく笑えます。
 
日本の新聞、全国紙、地方紙に必ず俳句、和歌、川柳の投稿欄があるのは驚きです。そして、毎朝新聞を開いて、一番最初に目を通すのが、俳句、和歌、川柳のコーナーだそうです。アメリカ人ならまず見るのはスポーツ欄かしら。

川柳がこれだけ盛んに詠まれるのは、日本人がまだ自分自身を笑う精神を持ち、自虐的にならず、私ってどうしようもない存在なんですと公言することができるからでしょう。これがアメリカ人、西欧人なら、即自己防衛、自己弁護に走りディベイト(論争)的に自分の立場を擁護し、相手を打ち負かす方向へ行ってしまうでしょうね。自分自身を笑える精神は自分にゆとりがなければ生まれないものです。

もちろんアメリカや西欧にも笑い小噺のコーナーを設けている新聞や雑誌はたくさんあります。でも、どうしても説明的になり、あるいはトンチンカン会話を書き写したものが多く、川柳のように17文字でスパっと表現したものとは次元が違うように思えます。

スペインでは小噺を“チステ”(chiste)と呼び、それはそれは盛んですが、“チステ”は主にバールや人が集まった時に披露するもので、オハナシそのものよりもいかに語るか、小噺をいかに巧みにオチまで持っていき、最後にドッと笑わせるかが鍵になっています。ですから、下手くそな語り手がいくら良いオチのある“チステ”を語っても、面白くなくなります。
 
そこへいくと川柳は五・七・五のリズムにのって、誰が読んでもクスリ笑い、或いは思わず吹き出してしまいます。

川柳は大きく分けるとサラリーマンと家庭モノになると思います。どうも社会運動や政治が絡むとギスギスしてきて、なるほどな~とは思わせますが、大笑いできるものが少なくなるような気がします。

そして、サラリーマンもので圧倒的に多いのが、上司、同僚、自分を笑いの対象にしたもので、時には自分が勤めている会社、役所を思いっきりコケにしたりしています。


これは第一生命が選んだサラリーマン川柳、2007年の一位になった作品で:

“空気読め! それより部下の気持ち読め” (のりちゃん作)
  これはチョットサラリーマンの悲哀と時勢がよく表れている秀作でしょうか。

“宝くじ 当たれば辞めるが 合言葉” (事務員A作)

もう一つの傾向、家庭内、主に妻が夫を、夫が妻のあり方を詠った?ものに面白おかしい傑作が多いのは、なんか彼らの家庭、家の中を覗き見しているような感覚があり、情緒が溢れ出ていて笑わせられます。

“いい夫婦 今じゃどうでも いい夫婦” (マッチ売りの少女作)

“タバコより 体に悪い 妻のぐち” (小心亭主作)
  こんな風に書かれた妻や夫が読んでもナ~ニ言ってるのと微笑むのじゃないかしら。それは相手を徹底的にやつけるのではなく、大きな現実、愛情がありその中での些細な不満、愚痴をユーモアでまぶしているからでしょうね。

時代というのか、世相を見事に写し出した作品もたくさんあります。

“一戸建て 手の出る土地は 熊も出る” (ヤドカリ作)

“100年に 一度の不況 5年毎” (窓際貴族作)

私も真似て、一作ものしてみましたが、できの良し悪しは読み手にゆだねます。

“ゴミ出しが 唯一の仕事の 粗大ゴミ” (定年亭主作)

もし、ここロッキーの山裾の森まで、日本の新聞配達があるなら、真っ先に目を通すのは川柳の欄でしょうね。

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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