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■鐘を鳴らそう 鳴らせば鳴る鐘が、まだあるのだから~音羽信の心に触れた歌たち

更新日2025/12/11




鐘を鳴らそう

鳴らせば鳴る鐘が、まだあるのだから


~音羽信の心に触れた歌たち~


音羽 信



第15回: ギミー・シェルター
    
by ザ・ローリング・ストーンズ

とんでもねえよ、嵐がマジで今日

俺の命を脅かしてる。

もしシェルターに入れなかったら

俺はこの世から消えちまう。

 

戦争なんて、子どもたちよ

分かってんのか。

戦争ってのは

たった一発で始まっちまうんだぜ

たった一発で。

 

戦争ってのは

たった一発で始まっちまうんだぜ

たった一発で。

 

とんでもねえよ、見ろよ

炎が俺たちの街を焼きつくしてる。

今日、この今日という日にだぜ。

まるで街中

石炭の絨毯が敷き詰められてるみたいに

燃え上がってるぜ。

牡牛が行き場を失くして荒れ狂ってる。

 

戦争なんて、子どもたちよ

分かってんのか

戦争ってのは

たった一発で始まっちまうんだぜ

たった一発で。

 

戦争ってのは

たった一発で始まっちまうんだぜ

たった一発で。

 

レイプも殺人も

なんだっていきなりだぜ

やられちまったらそれっきり。

 

なんだっていきなりだぜ

やられちまったらそれっきり。

 

ああ、こんどは洪水が

俺の命を脅かしてる。

シェルター、シェルターをくれ。

じゃないと

俺がこの世から消えちまうんだぜ。

 

戦争なんて、子どもたちよ

分かってんのか

戦争ってのは

たった一発で始まっちまうんだぜ

たった一発で。

 

愛について話してやろうか、シスター

キスすりゃいいんだよ。

たったひとつのキスから

愛は始まるんだよ。

 

戦争ってのは

たった一発で始まっちまうんだぜ

たった一発で。

たった一発で。

たった一発で。



“Gimme Shelter”-the Rolling Stones


たしかに戦争は、たった一発で始まる。いつだってそうだった。ちょっとしたアクシデントからだろうと、頭に血が上ったバカの一発だろうと、敵の攻撃に見せかけて戦争屋が仕掛けたデッチ上げの一発だろうと、誤射だろうとなんだろうと、戦争は一発で始まる。そして始まったらもう、終わりは見えない。

興奮したバカどもが仕返しを叫び、理性は吹っ飛び、双方の爆撃が始まる。街が燃える。なんの関係もない人々が殺される。待ってましたとばかりに在庫を一掃して戦争屋が儲ける。炎の中で子どもが死ぬ。母親たちが泣き叫ぶ、憎悪が憎悪を生み、さらに人が殺される。

殺すのは人、殺されるのも人。普段の人間の感覚などぶっ飛んで全てが狂う。街が住居が崩れ落ちる。戦争には善も悪もない。あるのは敵と味方だけ。敵に対する憎悪ばかりが急増し、街が焼け、住まいを失い身内を失い何もかも失ってしまった絶望や恐怖が新たな狂気や暴力や非道をうむ。

人間が人間を殺し殺しあう非道な戦争の中では全てが狂う。疑心暗鬼が焼け崩れた街に蔓延し、見境も何もかも無くした狂人たちがスパイや裏切り者をでっち上げて惨殺する。憎悪と狂気と恐怖と絶望と蛮勇の負のスパイラルが竜巻のように渦巻き、事態をさらに悪化させる。たった一発の発射で始まった戦争が、いつまでも続く。

 

ミック・ジャガーとキース・リチャーズは、ダンシングロックンロールの合間を縫って、時々、敏感に時代の風を読んで実にシリアスな歌を創る。あるいは時代に翻弄された立ちすくむ私たちの心に寄り添う歌を創る。バカな世の中に警鐘を鳴らす。たとえば“Street Fighting Man”、たとえば“Angie”、たとえば “Blinded by Rainbows“。ほかにもたくさんある。

つまりストーンズの素晴らしさは、時代と共に、しかもその最先端を歩み続けてきたことだ。そしてその中で果敢に、言うべきことを歌にして歌い続けてきたことだ。



しかしストーンズは、1969年、アメリカのオルタモントのサーキットでのフリーコンサートで、会場の警備を担当していたヘルスエンジェルスが、演奏中に観客の黒人を刺殺するという事件が起きた。このことはストーンズのドキュメント映画『ギミー・シェルター』で見ることができるが、このことがミックやキースの心に深い影を残さなかったはずがない。

また1976年、バルセロナの闘牛場でローリングストーンズの、前座がピーター・トッシュとロキシーミュージックという、とんでもないコンサートが行われた。それはロニー・ウッドがストーンズに参加して初めてのコンサートで、彼は闘牛士の姿で登場したが、そのコンサートを私は、闘牛の血をしこたま吸った砂がもうもうと舞う中で見た。そしてそれは、1938年から1975年まで続いた独裁者フランコの体制が、フランコの死によってようやく終わった翌年のことであり、それは、スペインで初めて開催された大規模なロックコンサートだった。

またストーンズは、1973年に来日公演をすることになっていたが、キースの入国許可が下りず、私はせっかく最前列のチケットを手に入れたのに、そのコンサートは幻となった。しかしミックは1988年にミックだけでやってきてコンサートを行い、私も東京ドームでのライブを観に行った。

その時ミックは、この曲を歌う時、満員の観客の客席のど真ん中から登場し、もみくちゃになりながら『ギミー・シェルター』のイントロが流れる中をステージに向かった。ミックはつまり、観客をシェルターとみなしたのだ。ミックがオルタモントの悲劇を覚えていないはずがない。なのに見知らぬ土地で敢えて観客に体を晒したミック。その果敢な姿を見た私はほとんど泣きそうになった。それは時と共に転がりながらも常に前に進もうとするストーンズスピリッツの真髄のように私には映った。今でもミックはコンサートの中でこの歌を、ステージが最も盛り上がったところで歌う。

 

 

The Rolling Stones - Gimme Shelter (Official Lyric Video;2016)
https://www.youtube.com/watch?v=RbmS3tQJ7Os

 

The Rolling Stones - Gimme Shelter (Live) (OFFICIAL PROMO;2012)
https://www.youtube.com/watch?v=8kl6q_9qZOs&list=RD8kl6q_9qZOs&start_radio=1

 

 

No.21-01
The Rolling Stones(USA;June 23, 2015)


-…つづく

 

 

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谷口 江里也
(たにぐち・えりや)
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本や歌や建築、さらには自治体や企業のシンボリックプロジェクトなどの、広い意味での空間創造を仕事とする表現哲学詩人、ヴィジョンアーキテクト。
主な著作に『鏡の向こうのつづれ織り』『鳥たちの夜』『空間構想事始』『天才たちのスペイン』、主な建築作品に『東京銀座資生堂ビル』『ラゾーナ川崎プラザ』『レストランikra』などがある。
なお音楽作品として、シンガーソングライター音羽信の作品として、アルバム『わすれがたみ』『OTOWA SHIN 2』などがある。

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