■くらり、スペイン〜イベリア半島ふらりジカタビ、の巻

湯川 カナ
(ゆかわ・かな)


1973年、長崎生まれ。受験戦争→学生起業→Yahoo! JAPAN第一号サーファーと、お調子者系ベビーブーマー人生まっしぐら。のはずが、ITバブル長者のチャンスもフイにして、「太陽が呼んでいた」とウソぶきながらスペインへ移住。昼からワイン飲んでシエスタする、スロウな生活実践中。ほぼ日刊イトイ新聞の連載もよろしく! 著書『カナ式ラテン生活』。


番外編:もろモロッコ!(1)

番外編:もろモロッコ!(2)
番外編:もろモロッコ!(3)
番外編:もろモロッコ!(4)
番外編:もろモロッコ!(5)
番外編:もろモロッコ!(6)
番外編:もろモロッコ!(7)
番外編:もろモロッコ!(8)
番外編:もろモロッコ!(9)

 

■移住を選んだ12人のアミーガたち、の巻(連載完了分)

■イベリア半島ふらりジカタビ、の巻(連載完了分)

■更新予定日:毎週木曜日

番外編:もろモロッコ!(10)

更新日2004/04/29


1月2日

起きるやすぐさまファッキン・ホテルをチェックアウト。フロントに昨夜のファッキン・スタッフがいなかったので笑顔で名前を聞き出し、すかさずメモってツーリスト・インフォメーションへ。キャリー、渾身のクレーム・レター全3枚を書き上げる。書きつつ訊くと、ホテルは4年ほど前から評判がガタ落ちで、クレームも頻繁に寄せられているということだった。

涼やかな木立が並ぶイフレンの町は、イメージの中のヨーロッパ風の……というより、キャリーとコータロー曰く「10年前の東欧」。なんとなく活気に欠けているせいか。カフェに入って朝食をとっていると、隣の席のひとが見ている新聞の表紙に、見覚えのある顔が。なんと元横綱の曙太郎とボブ・サップで、どうやら大晦日のK-1の試合結果を報じているらしい。まさかモロッコの新聞の一面記事になっているとは、曙太郎も知るまいよ。


今回の旅の最終目的地であるフェズまでは、たった60km。1時間で着いた。まずレンタカー会社に寄って、車を返す。5日間で、料金はしめて4159DH(1DH=約10円と計算。保険料込み、ガソリン代別) それからタクシーで旧市街のホテルへ直行。3つ星の小さなホテルなのだが、部屋はかわいいし暖房も効いてなかなか快適。昨夜のホテルがひどかったぶん、ずいぶん素敵に感じる。ここに2泊したら、もう帰国だ。ちょっと淋しい。

コータローはホテルで休むことにして、元気な30代女ふたりはトランシーバーを片手に町に出る。トランシーバーって、本当に役に立つよ。2kmくらいは交信可能とかで、小さな旧市街ならどこにいてもOK。砂漠なんかだと、まず使えない携帯電話よりも、よっぽど便利だ。次の外国旅行には、トランシーバー、忘れずに持って行こうと決意する。もしその行き先が日本だったら……ちょっと変か?


さて、歴史あるフェズの町のなかでも、9世紀に作られた旧市街はモロッコでもっとも古い地区で、マラケシュと同じく迷路のようなスークが張り巡らされているらしい。そんなスークの入り口近くで、美味しそうな匂いをさせている屋台を見つけていきなり小休止。顔よりも大きなピタパンに、炒めたタマネギとトマト、よく焼いたソーセージ、それにフライドポテトをたっぷりと挟んだのに、辛いサルサをたっぷりかけてもらって、15DHなり。味は文句ないし、大きいパンにかぶりつくのも快感。モロッコで食べ物は外してないです、本当に。


屋台の鉄板。あぁまた食べたい……。

腹を満たしたところで胸を躍らせてスークに入ってみると、なんだかやたら閑散としている。すれ違った観光客と話したところ、どうも今日が金曜のため、多くの店が閉まっているのだとか。そう、金曜はイスラム教徒の礼拝の日だったのだ。そういえばスペインでも、もともとキリスト教徒の礼拝の日である日曜は、ほとんどの店が閉まるもんなぁ。スーク探検は諦め、いったんホテルに戻る。


相談の上で王宮まで観光に行くことにし、タクシーを拾う。先客がいたのだが、王宮までというと運転手も客も「ノー・エクスペンシブ」と微笑む。さらにいくらかと訊いたら「ワン・ディーラム」と答える。さっき、新市街のレンタカー会社からホテルまで10DHだったので安すぎるなぁと思いつつ、指で「1?」と確認したらそうだと頷くので、安心して乗り込む。

最初に客が降り、しばらくして王宮の前に到着。いくらかと訊くと「20DH」とのたまう。ほら来た。「だって最初に1DHって言ったじゃん!」と主張するも、今度は英語がまったくわからない風を装いだした。カチーン。昨夜のフェッキン・ホテルでの怒りも覚めやらぬというのに、またかよ! こうなりゃ負けるものかと、ほぼジェスチャーのみで猛抗議。意外や、わりとあっさり10DHになった。あぁ、約100円を損しないために、こんな労力を使わねばならないとは。がっくり疲れて車を降りるとき、運転手がなぜか一言「ベトナム人?」と訊いてきた。なぜか、思わず頷いてしまった。


王宮の敷地内は立ち入り禁止だということで、チェーンの外から写真を撮る。と、警備のいかついおじさんが近づいてきた。緊張して身構えると、「いいから中に入って、ここから撮ったらいいよ」とジェスチャーで示す。ありがたく敷地内に入り、正面から写真を撮る。私たちに着いて入ろうとしたおじさんの欧米人は怒られていた。なんだかなー。

そういえばキャリーが長崎に住んでいたころ、一緒に飲んでいると、知らないおじさんからビール1本が差し入れられたりしたことがあった。私はスペインで、何度も知らないおじさんに酒をごちそうになっているし、観光地でいろいろ大目にみてもらっている。イタリア在住の友人も、「役所にはミニスカートで行くに限る」と言っていたし。ラテンもアラブも長崎も、世界中のスケベエおじさんの行為はみな同じ? 自分が、三十路でもデブでも、とにかく女であることに感謝。

それにしても、通りすがるカフェはどこも、見事に男の姿しかない。いったい、女たちはどこでお茶を飲んでるんだろう。女ふたりでカフェに入ってコーヒーをすする私たちの姿は、彼らにはどう映っているのだろうか。んー、帰国したらもう少しイスラム教のことを調べようかなぁ。モロッコ、また来たいし。行ってみたいところも多いし。


この日の夕食は、ホテルのレストランで。キャリーとコータローが頼んだサラダは、トマトやレタスの他に、蒸したニンジン、ビーツ、焼いてマリネにしたナスやピーマンにゆで卵と彩り豊かで、味もなかなか。私はメニューになかったのだけど、マラケッシュの初日に食べたスープ「ハリラ」が忘れられなかったので訊いたら、問題ないということなので注文。

ワクワクしながら待っていると、顔が入るくらいの壷が運ばれてきた。ここから一人前を注ぎ分けるのだろうと思って待っている、そのままテーブルに置いていってしまった。恐る恐る蓋をあけるとスープがなみなみと、軽く10人分は入っている。これ、前菜だよ……。ええいこうなりゃ、と、わりわり飲む。4杯めあたりで、たとえこれを全部30分内に飲み干したところで「TVチャンピオン」の早食い王決定戦に出られるわけじゃないと気づき、ギブアップ。壷の中身は、ほとんど減っていないように見えた。

メインにはビーフ・タジンと、ビーフ・クスクス。タジンの肉はとろり柔らかく、クスクスの米はにはレーズンと松の実が炊き込んであってほのかに甘くて、しみじみ美味しい。あぁもう、モロッコ・グルメに首ったけ!

なんだか隣の席が騒がしいと思ったら、ヨーロッパからの家族連れのバカ息子がぐずっていて、頼んだブロシェットを食べたくないと言っているのを、両親がご機嫌を取りながら肉を口まで運んであげている。あまりにも見苦しいのでいったいどこの国の奴らだと聞き耳を立てたら、見事にスペイン語を話していた。なんとなく、がっくりくる。んー、どこでもスペイン人はスペイン人なんだなぁ。そして私は、「あー日本人っぽい!」ことをいっぱいしているのだろう、たぶん。

ふたりにおやすみィと挨拶し、トランシーバーを持って部屋へ。明日は、実質的にモロッコ最後の日だ。淋しくなってきちゃったワン。


HOTEL DATA:
HOTEL BATHA
PLACE BATHA
1 DOBLE ROOM & 1 SINGLE ROOM + 2 night's dinners 1545DH



…つづく

 

番外編:もろモロッコ!(11) 


 
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