第695回:アメリカ最大のスポーツの祭典
世界で最大というのでしょうか、テレビの観戦者数が最も多いのは、何と言ってもサッカーのワールドカップです。これはヨーロッパ、南米、アフリカ、中近東、はたまたアジアの島国まで熱狂させますから、なるほどなぁ~と思います。
アメリカは自己中心的な社会ですから、全く国際的規模でない野球のチャンピオン戦を“ワールドシリーズ”と名づけて、いかにも世界大会のように呼んでいます。実際には、ワールドとはアメリカそしてカナダだけなのです。それをワールドシリーズと呼んで、野球の祭典の世界大会最終戦のごとく呼んでいます。せめて野球が盛んで、メジャーリーグにたくさん選手を送り込んでいる、ドミニカ共和国、メキシコ、プエルトリコなどのご近所さんのチームを加えてもらいたいものです。
そして何と言っても、アメリカ最大のイベントは“スーパーボール”です。これはアメリカンフットボールの決勝戦です。このスーパーボールが行われたのは2021年2月7日の午後ですが、試合前のオープニングショー、試合の中休みにはハーフタイムショーという、恐らく確実に1分間当たりに換算すると最もお金の掛かったポップ、カントリー、ロックのショーが展開されます。
数年前のことになりますが、ジャパンレイルパスを使って日本を駆け足で一周したことがあります。その時、どんな田舎、地の果て、岬に行っても、必ずと言っていいほど石碑があり、そこに刻まれているのは、土地の俳人、歌人、詩人などの文学碑なのに感銘を受けました。その向こうを張ったわけではないでしょうけど、スーパーボールの試合が始まる前には、恒例の国歌はエリック・チャーチとジャスミン・サリバンが歌いましたが、これは驚くほどのことでもありません。ところが、22歳の黒人の詩人アマンダ・ゴーマン(Amanda Gorman)が自作の詩を朗読したのです。彼女はバイデン大統領の就任式でも詩を披露しました。
どうです、アメリカの野蛮な? オット失礼、スポーツイベントの開会式に詩を朗読するとは、なんとシャレた行いだと思いませんか? アメリカに文芸碑はとても少ないですが、スーパーボールの開会式で詩を詠むという、文化度の高いこと?をやることもあるのです。
今年のスーパーボールは、フロリダ州の西海岸にあるタンパ(Tampa)で開催されました。そして、めったにないことだそうですが、地元、タンパのチーム“バッカニアーズ”(Tampa Bay Buccaneers)が決勝まで進み、そこでカンサスシティーのチーム“チーフス”(Kansas City Chiefs)と争ったのです。というのは、スーパーボールの会場は地元のチームの成績に関係なく数年前に決められますから、通常の年ですと、両チームの地元からかけ離れたところで行われるのが当たり前になっています。ところが、今年は開催地のチームがスーパーボールまで進み、そして相手チーム、カンサスシティー・チーフスをコテンパンに打ち破り大勝したのです。タンパ、そしてフロリダ州が沸きに沸きました。
何でもタンパはストリップ劇場、クラブが多いことで知られ、ゴシップ新聞では、全米ストリップ劇場のメッカとさえ書いているほどです。しかしながら、このコロナ禍の中で、ストリップ劇場だけでなく、スポーツバー、クラブなどは閉鎖されていますから、ストリッパーの娘さんたち、メチャクチャに稼げるチャンスを逃したのです。彼女らが政府に労働?補償を求めた話は聴きません。行き場のないファンは、勝利を祝うためビールを片手に、タンパの街中をパレードすることになります。
その気違いじみた大騒ぎは、まるで戦勝記念パレードのようでした。 トラックや車がクラクションをやかましく鳴らし、ビールを掛け合い、乱痴気騒ぎで、当然誰もマスクなどしていませんし、第一マスクをしていてはビールを飲めません。もちろん、酔っ払い運転を取り締まるヤボなお巡りさんなどいません。これじゃ、10日後 2週間後にクラスターどころか大地雷的にコロナが広がるだろう…などと気にするのは私だけかしら…。
このスーパーボールは政府の指導よろしく8万人以上入るスタジアムに厳密に2メートル以上の間隔を置いた席にしか観客を入れず、総計2万5,000人しか入場させませんでした。そして、NFL(National Football Association)は粋な計らいを慣行したのです。2万5,000人の入場者のうち、7,500の切符をタンパ周辺のコロナの医療関係者に無料で配布したのです。
したがって、有料入場者数は1万8,000人以下に抑えられました。一見満席のように見えたのは、ダンボールを人の形に切り、顔を描き、並べているからです。例年のスーパーボールでさえ、入場券を手に入れることは至難の業ですから、今回のように厳しい入場制限をした大会では、入場券を手にするのはジャンボ宝くじの当たり券を引き当てるほど難しいのです。
というのは、入場券は元々、平均で4,508ドル(48万円相当)もするところへ持ってきて、ダフ屋(これがアメリカでは合法で、チケットエージェント、チケットブローカーなどと呼んでいます)がインターネット・オークションで、値を吊り上げていきますから、スーパーボールの2日前に私がチェックした時点での最高価格は70,153ドル(743万円相当)もの高値が付いていましたので、フツーのフットボールファンにはとても手の出ない価格なのです。
お祭り騒ぎ大好き族のアメリカ人は、このスーパーボール・サンデーは最大の祭日になり、トランプ元大統領のスキャンダル、弾劾裁判のニュースすら一休みの態でした。
東京オリンピック? そんな小さいイベントに注意を払うアメリカ人はほんの僅かです。森さんの思わず本音を吐いてしまったような女性蔑視の発言など、極一部のクオリティー誌で取り上げられただけで、すでに皆、日本は女性差別が激しく、格差の大きな国だと知っていますから、誰も驚きませんでした。アア、またか…といった感じでしょうか。なんせ、ここアメリカでは「女の〇○〇〇を握り、揺さぶれ」と公言した人物が、大統領で居続けることができた国なのですから…。
-…つづく
第696回:黒髪は美女の条件…?
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