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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から
 

第861回:アメリカ人はパレードが大好き

更新日2024/08/01


アメリカ的なモノの中でも、その最たるものは“パレード”でしょう。
飾りをつけた大きなトレーラーにひな壇を作り、そこに主賓、関係者が乗り、ブラスバンドやチアリーダーに導かれ、町の目抜き通りを行進するものです。ともかく派手であれば、派手なほど良いことを信条にしています。
 
日本の古い町でも年に何回か、京都の祇園祭、浅草の鳥越祭りのように御神輿を担ぎ、山車を引き街中に繰り出す伝統的なパレードがありますが、御神輿は伝統、由緒のあるモノなんでしょうけど、その小ささに驚きました。これは大いに道路事情によるのでしょうね。
 
アメリカでは、どんな小さな町、村でも中学高校があるところなら、必ず年に何度ものケバケバしいパレードが行われます。

まず、どんな小さな学校でも必ずホームカミング(その学校を卒業したOBたちが懐かしい母校に返ってくる)記念の祝賀パレードがあります。通常、パレードの後、フットボール(アメリカン・フットボールです)の試合が、隣町のライバル学校チームとの試合があります。

その前に、ホームカミング・クイーン(生徒たちの人気投票で選ばれるミス田舎町学校)とキングがオープンカーに乗り、準ミスを二人従え主役を務めます。あるいは、大きなトレーラーをステージに仕立ててその上の祭壇みたいなところに陣取り、周りをその町ののど自慢がロックやカントリーウエスタン・バンドを従えて歌い、踊りまくります。そんな山車がチェアガールとブラスバンドに導かれ、メインストリートを行進します。
 
アメフト、野球、バレーボール、水泳などのチームが遠征に出かける時の壮行会、そして敵地で勝ってきたら、戦勝パレード、その町出身の兵隊さんがどこか外国の戦地からの帰還した時、退役軍人の日、メイシーズ(デパート)がスポンサーで行っているイースター・パレード、アメリカ独立記念日、クリスマスの飾り付けをした花車、町のお祭り(町の守護神などは少なく、意外と宗教臭はありませんが…)、メモリアルデイ(お盆ですが、主に戦没者の日)、その町を設立した日、そしてセント・パトリックデイ(アイルランドの守護神のお祭りで、皆、緑色の服装をするか、何か緑色のマフラーなり、緑色のモノを身につけていないと、ツネられます)、いくらアイルランド系のアメリカ人が多いと言ってもアメリカ全土でパレードを繰り広げるほどたくさんいないと思うのですが、セント・パトリックデイのパレードは全米に広がっていて、盛大な緑のパレードが繰り広げられます。
 
リオ・デ・ジャネイロには遙かに及びませんが、カーニバル、そしてサンクス・ギヴィング、加えてメキシコ系住人の多い町で行われるメキシコの祭日パレード。民族衣装を着込んだ楽団がマリアッチを奏で、それに合わせ例の派手な衣装をつけた女性たちが踊りまくるというとても明るく楽しいパレードです。

アメフトの試合の前の派手派手しいパレードで有名なのは、もちろんスーパー・ボールですが、大学の決勝戦、ローズ・ボール、オレンジ・ボールなどが行われる前のパレードは全国中継され、両チームの出身校のブラスバンドだけでなく、その地域の高校のブラスバンドも動員されます。もちろん、チェア・ガール、チェア・リーダーもこの時とばかりピョンピョン飛び回り、ショーを盛り立てます。

しかし、高校、大学のブラスバンドはどうして、ロシア遠征に失敗したフランス軍のような制服、もしくはローマ時代、シーザーの遠征隊みたいな服装をしているのでしょうか? あれは一種の仮装行列みたいなものなんでしょうね。そのうち、白虎隊の装束に身を固めたパレードが行われるかもしれませんよ。

一年中パレードを主に客寄せのために行っているラスベガスのストリップ大通りが、田舎町に引っ越してきたかのようなのです。アメリカ全般にどんな田舎町でも、メインストリートの幅を広くとってあるので、飾りをつけた大型トレーラーが楽に通れます。目一杯飾った山車が通り易いということはあるかもしれません。

そこへ行くと、スペインの古い町の通りは元々、外敵の侵入を防ぐ意味もあってか、実に狭く、しかもうねっています。スペインに住んでいた時、いくつかのお祭りを眺めましたが、パレードはすべてカトリック教に関連していて、町や村の守り神の日、モーロ・アラブ勢力をキリスト教徒が追い落とした記念ばかりで、スケールは町の大きさによって違いますが、キリスト教軍(結構立派な中世の鎧兜で武装しています)が神に守られ、モーロ(イスラム教徒)に戦勝し、スペインからその村、町から追放する、筋立ては同じで、そこにその地方で有名なキリスト教戦士、司祭らが仰々しく行進し、メインは大きな十字架に磔になったキリスト、もしくはマリアの銅像を村の若者が担ぎ、ネリ歩くというワンパターン、そして闘牛です。お祭りに闘牛は欠かせないのです。

これからの暑い夏、暑さを吹き飛ばすパレードがアメリカ中で行われることでしょう。横でダンナさん、「アメリカの大統領選挙も、アメリカ全土に広がるパレード合戦みたいなもんじゃないか…」と呟いていました。

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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