■新・汽車旅日記 ~平成ニッポン、いい日々旅立ち 第737回「新横浜~福井~東京、ぐるり一周(3)- えちぜん鉄道 -」 福井商工会議所の最寄り駅は福井鉄道福武線の商工会議所前駅だ。わかりやすい。福井駅前から路面電車に乗って10分ほどだ。それを遠回りして行く。私はJR福井駅の改札を出て南口を出た。福井鉄道の駅とは反対側だ。工事中の新幹線高架駅を通り過ぎれば、えちぜん鉄道の福井駅がある。赤くて四角い建物だ。2月に来たときは外観ができあがっており、壁の赤色はサビ止め塗装の色だと思った。しかしこれが本塗装で、木材を使った内装と相性の良い“さび色”にしたという。プラットホームの天井は永平寺の格天井を模したという。ならば建物は朱色にしたと言えばいいのに、さび色である。鉄道の鉄のイメージを重ねたか。プラットホーム階の側面はガラス張りで電車が見える。鉄道模型の陳列ケースのようでおもしろい。格天井も見えるけれど、磨かれたガラスのせいで向かいの建物と青空と雲が映り込んでいた。駅舎に入ると正面に改札口、左に木製の恐竜骨格模型…
杉山 淳一 ※今週休載 バックナンバー
2023/03/09掲載
■店主の分け前 ~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと 第452回「流行り歌に寄せて No.253 「ちょっと番外編〜トランジスタラジオ購入」~昭和46年(1971年)」 この『流行り歌に寄せて』、約3年半前の2019年8月15日更新分『ちょっと番外編〜テープレコーダー購入』に続いて2回目の、音響機器購入番外編を書かせていただきたいと思う。中学1年生の時に父親からテープレコーダーをプレゼントしてもらったが、高校に入学した年の昭和46年(1971年)には、今度はトランジスタラジオを購入してもらった。機種名は、ソニー・ソリッド・ステート Sports 11。今回調べたところ、当時の定価は17,800円で、テープレコーダー同様、父はかなり奮発してくれたのである。色はモスグリーン、ジープのような色合いで、そのコピーが 『オトコの冒険心をかきたてるアドベンチャー・ラジオ』で全天候型と銘打たれていた。自分はそれほど冒険心を持った青少年ではなかったが、ひと目見て「カッコいい!」と思ってしまい、父親に依頼したのだった。チューニングで、電波をキャッチすると…
金井 和宏 バックナンバー
2023/03/16掲載
■インディアンの唄が聴こえる 第10回「シヴィングトンという男 その1」 アメリカの歴史を観ていると、教会関係の人間が政治に関わることの多さに呆れる。演説が巧みなだけでなく、中には統率力、組織力を持った人物が出ることもある。だが、大半は弁舌が巧みなだけで、時勢に乗るのに機敏で、自己顕示欲だけが滅法巨大な人間が多い。はっきり言い切って良いと思うが、このジョン・M・シヴィングトンという男がいなければ、サンドクリークの大量虐殺は起こらなかった。もちろん時代背景もあり、エリザベス村の凄惨なハンゲイト虐殺事件がきっかけになってはいる。シヴィングトンは、1821年1月27日にオハイオ州、レバノンでアイザックとジェーンの間に生まれた。信仰心の強い両親の間で育ち、伝道師として、彼の将来は決まっていたかに見えた。両親の期待に応えるかのように、イリノイ州のメソジストの巡回牧師に任命されたのは彼が23歳の時だった。シヴィングトンは声量も豊かで、しかも押し出しが立派であり、説話も巧みだったと伝えられている。当時、中西部を巡回して…
佐野 草介 バックナンバー
■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から 第794回「お犬様、お猫様、ペット様様」 2ヵ月にわたるスキー三昧の生活を終え、雪ヤギグループとジャーまた来年ね…と別れてきたばかりです。今年借りたアパートは、サライダの町の中心から程よく離れていて、しかも交通の便も良く、コジンマリとした部屋割りで、二人で過ごすには十分以上の設備もあり、今まで何年かあちこち渡り歩いていたのを止め、そこに来年も来ようと、もう予約してきました。大家さんの女性主人がおおらかな付き合いやすい性格なのも、そのアパートの好条件に加えても良いかと思います。そのアパートは、ムクムクした毛の長い猫付きだったのです。私は猫が大好きですし、どちらかといえば犬人間のダンナさんも、このオットリとした老ネコ“バートン”が気に入ったようで、バートンの方もすっかりダンナさんに懐き、彼の手を舐めたり、髭をダンナさんの脚に擦り付けたり…
Grace Joy(グレース・ジョイ) バックナンバー
■ジャック・カロを知っていますか? ~バロックの時代に銅版画のあらゆる可能性を展開した天才版画家とその作品を巡る随想 第30回「聖アントニウスの誘惑」【最終回】 ジャック・カロは、ペスト、飢饉、戦争という、人間社会が遭遇する最悪の災いがもたらす悲惨が重なり合ったロレーヌで晩年を過ごし、1635年に亡くなりました。まだ43歳でした。原因は胃癌だったともいわれていますけれども、様々な精神的な苦痛が、カロの体を内部から蝕んだのかもしれません。 しかしその前年、カロは、死のおよそ20年前、1617年にフィレンツェで制作した画題《テーマ》と同じテーマの大作を創り遺しました。12回で紹介した『聖アントニウスの誘惑』です。モチーフや表現された形象の奇怪さに比して、画面全体がやや明るめで、どことなく牧歌的でコミカルな要素が多かった前作に比べて、この作品は全体に暗く、聖アントニウスに対する悪魔や怪物たちの攻撃もより激しさを増しています。
谷口 江里也 バックナンバー
■よりみち~編集後記 ついに3月13日から「マスク着用が原則不要」となり、個人の判断が基本となりました。ただし、厚生労働省は、「受診時や医療機関・高齢者施設などを訪問する時」や「通勤ラッシュ時など混雑した電車やバスを利用する時」などにマスク着用するよう指導し、高齢者や基礎疾患のある人、そして妊婦など、重症化リスクのある人が混雑した場所に行く場合はマスク着用を推奨している。言葉上では個人の主体的な判断に任せ、強制しないよう呼び掛けているのだが、いつもの自己責任論で逃げが打てるよう、政府の責任にされないように最大限配慮されていることは確実である。13日からどうなることかと周囲を見回すけれども、さすが人の目を一番気にする日本人は、周りを見回すだけで行動に移すのは時間がかかりそうだ。ほとんどどこも変わりなくマスク着用している。職場でも同様で、新型コロナが「5類」に移行となる5月8日(月)のゴールデンウィーク明けまでは…
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