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第382回:緊急掲載 ラグビー・ワールド・カップ 2019開幕 ~予選プール前半戦を終えて

更新日2019/10/03



ジャパンの強さは、間違いなく本物になった。

初戦のロシア戦。前半、ジャパンの選手はプレッシャーによる緊張からか、動きがとても硬く、ロシアの攻撃に翻弄されていた。それでも少しずつゲーム中に修正をかけ続け、最終的にはWTB松島幸太朗選手のハットトリックも含め合計4トライ、ボーナス・ポイント(以下:BP)も付く、30−10のスコアで勝利できた。

試合後のSO田村優選手のコメント「緊張して、死ぬかと思った」というのが、ジャパンのメンバー全体の偽らざる気持ちを代表した言葉だろう。

彼自身も、その直前10日間ほどは、あれこれと考え事をしてしまい、ほとんど熟睡できていなかった、早く初戦が終わって欲しかったと言う。ラグビーの王道を歩いてきて2回目のW杯、大会前キャップ数57を誇る田村選手でさえ、プレッシャーに耐えるのに必死の思いだったようだ。

キャプテンのFLリーチ・マイケル選手も、試合後のインタビューで、彼にしては珍しく心底安堵した表情を見せた。

第2戦のアイルランド戦。テレビでライブ観戦していたが、相手に二つ目のトライを取られた前半20分過ぎ辺りで、私は店に向かわなくてはならず家を出た。スコアは03−12。その時は正直、このペースでトライを重ねられ、30点以上の開きを付けられて敗戦してしまうのだろう、と想像していた。

だから、店に着き、開店の準備を進めながら、チラチラとスマホで得点経過を追って、途中のトライ&ゴールを知り、最後に「19−12。ジャパン。勝利!」の報を目の当たりにした時、本当に驚いてしまった。

前半20分のトライ以降、60分もの長い時間、ジャパンは完全にアイルランドを沈黙させたのだ。後でつぶさにビデオで観戦しなおしてみると、その間、ジャパンはアイルランドにまったくと言って良いほどゲイン・ラインを割らせることがなかった。

中でも圧巻は、前半35分、アイルランド・ボールのスクラム、ジャパンはPR具智元選手を支点にした猛烈な押しで、文字通り相手スクラムを破ってしまったシーンだった。これだけ力が拮抗したスクラムが引き裂かれるのを初めて見た。

このプレーにより相手の反則を誘い、PGを得る。この辺りから形勢が逆転していくのである。ジャパンの、今までの厳しく長い練習の成果が遺憾なく発揮された、ベストゲームだったと思う。

ジャパンは、これで2戦全勝、勝ち点9。プールAのトップに立ったわけだが、これで決勝トーナメントに進めるか否かが、五分五分まで引き上げられたと思う。慎重すぎるという意見もおありかと思うが、ジャパンは4戦4勝しなければトーナメント進出は厳しい状況にあるのだ。

これは、プールを1位通過が有望視されているチームに下位チームが勝った時に起こりやすい状況である。前回の大会でジャパンは南アフリカに勝利する大活躍で3勝1敗としながらも、BPを稼げず、決勝トーナメントには進めなかった。

この後の予測を書いてみる。アイルランドはロシアとサモアに圧勝し、勝ち点5を獲得、トータルの勝ち点が17。スコットランドはロシアとジャパンに4トライ以上で勝利した場合はトータルの勝ち点15となる。

ジャパンがサモアに4トライ以上で勝利しても、スコットランドに7点差以上離されて敗れれば、トータルの勝ち点は14で終わり、またしても決勝トーナメントには届かないのである。

スコットランド対サモア戦をつぶさに観戦した。34−0というほどの力の差を感じなかったが、サモアが規律を保つことなく、自滅した形になった。スコットランドも強さがこちらに伝わってこない、凡庸なゲームをしていた。

ジャパンが、今の力を存分に発揮するパフォーマンスを見せれば、両国とも勝てない相手ではないと思う。ジャパンに期待するのは、どのような場面が訪れても、チームとしての「平常心」を保って欲しいということである。

さてプールBは、いきなり初戦でニュージーランドと南アフリカが当たり、大変な盛り上がりをみせたが、「大人の」ニュージーランドに一日の長ありというゲーム展開で勝利して、予選プール1位通過を実質的に決めた。2位通過の南アフリカも固いところだと思う。

「死の組」プールCは10月5日(土)のイングランド対アルゼンチン、1週間後の12日(土)イングランド対フランスでの2試合がカギを握るゲームとなる。

上記の通り、イングランドは未だに強豪との対決が行なわれていない。アルゼンチンは21−23とフランスに惜敗したが、この後の展開では決勝トーナメントに進む可能性は充分に残っている。

今までのW杯ですべて決勝トーナメントに駒を進めているフランスの矜持、前回進めなかったイングランドの母国としての意地。それらがぶつかり合い、最も熱い戦いが期待されるプールである。

さてプールC。ウェールズとの戦いで、後半猛追し、一時は18点あった得点差を1点差まで詰め寄ったが、追いつかず25−29でオーストラリアは敗れた。

この試合、オーストラリアが3トライだったのに対しウェールズは1トライ。前後半とも開始直後に決めたドロップ・ゴールをはじめペナルティ・ゴールを随所随所で確実に決めたウェールズが得点力で上回った。

この試合の流れを変えたスーパープレーは、後半30分過ぎ4点差を追い、まだ反撃の勢いが衰えなかったオーストラリアがPGの機会を得て、自陣から敵陣深くタッチを狙ったところ、途中出場のウェールズのSHトモス・ウィリアムズがタッチライン際で高いジャンプをしてボールをタップ、フィールドに戻してしまったことだった。

これで、オーストラリアの勢いに終止符が打たれたと言っても過言ではない鮮やかなプレーだった。W杯では、数多くこのようなシーンが見られる。このゲームで1位通過ウェールズ、2位通過がオーストラリアは事実上決まった。

オーストラリア贔屓の私としては、最高のパフォーマンスを見せるBKプレーヤー、イズラエル・フォラウがこの大会に出ていないのは、あまりにも大きな損失だと思う。彼は敬虔なクリスチャンであり、宗教的良心からの発言であっても、同性愛者に差別的な発言をしたことは、やはり許されないことだろう。つくづく残念である。

さて、「死の組」がグループCだけでなく、グループAもそうなったことは、大変うれしくワクワクする思いである。予選プールは後10日間、観たくて観たくてしようがないゲームが、さらに続いている。

-…つづく

 

 

第382回:緊急掲載 ラグビー・ワールド・カップ 2019開幕 予選プール戦終了~決勝トーナメントへ


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金井 和宏
(かない・かずひろ)
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1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
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