■くらり、スペイン~移住を選んだ12人のアミーガたち、の巻

湯川カナ
(ゆかわ・かな)


1973年、長崎生まれ。受験戦争→学生起業→Yahoo! JAPAN第一号サーファーと、お調子者系ベビーブーマー人生まっしぐら。のはずが、ITバブル長者のチャンスもフイにして、「太陽が呼んでいた」とウソぶきながらスペインへ移住。昼からワイン飲んでシエスタする、スロウな生活実践中。ほぼ日刊イトイ新聞の連載もよろしく!
著書『カナ式ラテン生活』。


第1回: はじめまして。
第2回: 愛の人。(前編)
第3回: 愛の人。(後編)
第4回:自らを助くるもの(前編)
第5回:自らを助くるもの(後編)
第6回:ヒマワリの姉御(前編)
第7回:ヒマワリの姉御(後編)
第8回:素晴らしき哉、芳醇な日々(前編)
第9回:素晴らしき哉、芳醇な日々(後編)
第10回:半分のオレンジ(前編)
第11回:半分のオレンジ(後編)
第12回:20歳。(前編)
第13回:20歳。(後編)

■更新予定日:毎週木曜日




第14回: 別嬪さんのフラメンコ人生(前編)

更新日2002/07/25 

アミーガ・データ
HN:K
1961年、大阪生まれ。
1987年よりスペイン生活、現在16年目。
セビージャ在住。

1本の映画が人生を変えることも、ある。フラメンコ界のカリスマダンサーであったアントニオ・ガデスと、世界中に熱狂的なファンをもつギタリストのパコ・デ・ルシア。もし彼らが出演した映画『カルメン』がなければ、Kがスペインに来ることはなかったかもしれない。


Kは大阪に生まれ、すぐ東京に越した。それがひとつの出会いを作った。東京では、小学生の課外授業として、劇団四季のミュージカル『ニッセイ名作劇場』を観るというプログラムがある。彼女が見た作品は、『どうぶつ会議』。矢崎滋がライオン役だったことを覚えている。もともと学芸会が好きだった彼女は、これをきっかけに舞台の魅力に取り憑かれてしまった。

中学校では演劇部。といっても、演じる側ではなく、演出など裏方にまわった。ものを作る面白さがたまらなかった。高校時代はプロレタリア演劇を主軸とする部と訣別したが、観客としては劇団四季の作品などを見続けた。

当時は宝塚歌劇団が漫画『ベルサイユのばら』の舞台化で一大ブームを巻き起こした後、大地真央が絶頂期を迎えるまでの頃。大学時代のKは、「追っかけ」をするほど宝塚に熱中した。大学では日本文学を専攻しながら、劇芸術や演劇史などの講義も受講。舞台というものに、とにかく興味があった。とはいえ「根がミーハー」なので、ファンだった藤城潤の退団と同時に、宝塚熱はすっと冷める。

やがて就職を迎えると、手堅く銀行系金融機関へ。定時ピッタリに仕事が終わる毎日。一言で表すと、ヒマ。たまたま「他に付き合ってくれるひとがいないから」という理由で友人に連れて行かれたプロ野球観戦にハマった。会社が終わると「まい泉」のカツサンドを買いこんで、神宮球場に。阪神タイガース優勝の瞬間をネット裏近くで観戦するという、虎ファン垂涎の経験もした。いまだに阪神ファン。なのだけれど。「当時はすごくヒマでヒマで、熱中できるものを探してたのかも」

そんなときに出会ったのが、映画『カルメン』だった。


1983年にスペインで製作されたこの作品は、『カラスの飼育』『血の婚礼』で有名なカルロス・サウラが監督。主演はアントニオ・ガデス。メリメ原作の『カルメン』をモチーフに、劇中でもフラメンコ舞踊家を演じるアントニオの舞台制作を、虚構と現実の交錯する中で描いた映画だ。もちろんフラメンコの見せ場も多く、パコ・デ・ルシアも登場する。約20年を経た現在でも、フラメンコ映画の不朽の名作として評価が高い。

86年にはそのアントニオ・ガデス舞踏団が、舞台版『カルメン』をひっさげて来日。Kは横浜公演へ出かけた。電話予約で手に入れた1列目の席から、はじめて生のフラメンコを観た。すごい。「ビビーッとなった」。その後、会社を休んで別の会場へ駆けつけ、何時間も並んで当日券を手に入れた。
「これはいったい、なんなんだろう? なんで私は、こんなふうになるわけ?」 胸が、熱かった。

その理由が知りたい。書店で見かけた『フラメンコへの誘い』(晶文社)を購入して一気に読んだ。さらに本を編集した『パセオ』に連絡し、同社発行のフラメンコ専門月刊誌をバックナンバーまで全部取り寄せた。生のフラメンコが観られるタブラオ(舞台のある店)もまわった。パルマ(伴奏ともなる手拍子)教室にも通った。レコードをテープに録って通勤電車の中で聴いた。スペイン語の勉強もはじめた。

すべては、フラメンコのために。熱中できるものが、ついに見つかったのだ。

その年の暮には、有給休暇をあわせて2週間のスペイン旅行へ出発していた。

 

 

第15回:別嬪さんのフラメンコ人生(後編)

 
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