第33回:コスタリカ、ニ人の17歳の女の子
更新日2002/10/31
コスタリカというと軍隊のない国として、また自然保護先進国としても有名な国だ。沖合いに浮かぶ無人島"ココ島"は映画「ジェラシックパーク」のモデルにもなった。また、中米の中では最も治安がよく、首都サンホセなど標高の高い街は一年を通して春の気温だ。なにかと過ごしやすい環境のためか、年々訪れる人が増えている。
そんなコスタリカで出会った17歳の女の子、ニ人。一人はサンホセで出会った。
「どこに行くの? この辺りは危ないわよ。でも私と一緒だったら安心よ。何故ってこの地区の住人だから…」
そういって流暢な英語で話しかけられた。
食料品や生活用品が集まるメルカド(市場)を巡っているうちに、この地区に紛れ込んでしまった。危険地区といっても、そんなに危ない臭いはしないものの、時折麻薬患者とおぼしき人の姿が目に入ってくる。
「英語うまいね、学校で習ったの?」
「違うわ、独学よ。学校にはいま行ってないの。親は麻薬中毒だし、家にいると何があるか分からないから、親戚が経営している近所の安宿に住んでいるの。観光客用の宿は高いでしょ、見にくる?」
そういって連れて行かれた安宿。ロビーには危なそうな感じの人たちがたむろし、テレビでサッカー観戦している。フロントには頑丈な鉄格子がはめられ、部屋には頑丈な鍵がいくつもついていた。
それから数日の間、この女の子にはいろいろ案内してもらったものの、いつのまにか姿が見えなくなった。心配していると、たまたま街で出会った彼女の友達に、彼女が麻薬所持の疑いで警察に捕まったと聞いた。当分の間、釈放されないらしい…。
それからしばらくしてサンホセを離れ、リゾート地のマニュエル・アントニオ地区を訪れた。コスタリカで最も有名な国立公園があるために、多くのアメリカ人観光客や長期滞在者で賑わっていた。ビーチは波が高くて泳げないものの、日本人サーファーにも出会えるほどの有名なサーフ・ポイントになっている。
隣接する小さな街"ケポス"では、もう一人の17歳の女の子と出会った。場所はバスターミナルの中にある小さな古びた時計屋だった。ショーウィンドーには、最高級品としてセイコーの時計が飾られている。
「日本人? 私の時計は日本のセイコー製で、おじいちゃんの形見。でも故障したみたいで、修理にきたのよ。私が結婚したら、子供にプレゼントして…、そうして永遠に大切にしたい宝物なの」
とても瞳がきれいな素朴な女の子。修理が可能と分かると、乗ってきたポロボロの自転車を押しながら、うれしそうに帰っていった。
ケポスの人は、まなざしが優しい。首都サンホセの人々はどこか冷たくて暗い感じがして、あまり好感が持てなかった。街を歩いていても、気軽に言葉を交わし合う場面が限られ、ラテン系の国とは思えない感じがしていた。
しかし、ケポスは違った。みんな気軽に話しかけてきて、とてもフレンドリー。都会と地方の違いは、小さな国コスタリカでも例外ではなかった…。
→ 第34回:ハンガリー、温泉にはまるツーリストたち