第34回:ハンガリー、温泉にはまるツーリストたち
更新日2002/11/07
ハンガリーといえば温泉が名物とは知っていたものの、こんなにツーリストたちに人気があるとは想像していなかった。ゲストハウスに集まる日本人や街で出会う日本人と話していると、決まって温泉が話題にのぼる。それぞれが入った温泉の情報を交換しては、連日の温泉通いとなる。
数日の滞在予定が、温泉にはまってしまい、あと一日、もう一日といった具合に滞在を延ばすツーリストも珍しくない。こんな時、やはり日本人にとって温泉は文化なのだと、感心してしまう。
首都ブタペストには十ヶ所を超える温泉が点在している。多くは"風呂"と"プール"の両方があって、それぞれが別料金になっている。温泉によっては混浴もあったり、男女別に別れていたりといろいろだ。
もちろん日本のように裸で入るのではなくて、水着を着用。入り口で"ふんどし"のようなものを貸してくれる場合もあったり、施設内の売店で水着を購入する場合もある。男性ツーリストたちの中には、トランクス型の下着を「水着」と称して入ってしまうツワモノもいたりする。
平日は老人たちが中心。休みの日には家族連れがどっと押し寄せてきたりして、すっかり市民の憩の場になっているものの、ゲイやレズなど同性愛者の社交場になっている事実も見逃せない。ツーリストたちの間では一番の話題だ。
「いやぁ~、カルチャーショックとでもいうのでしょうか。びっくりしたというか、なんというか、次々に声をかけられるので逃げ回っていました。一人では行きづらいですけど、友達となら平気ですよ」
「ハンガリー人のおじさんたちがウインクしてくるし、いつの間にか近寄ってきては触ってくるし、どちらがもてるか競争したりして…。貴重な経験としておみやげ話にもなりますし、楽しかったですよ」
また、ある日本人ツーリストは一人で温泉に行き、仰天して飛び出してきてしまった。もちろん安全な温泉を事前に調べてから訪れるツーリストたちもいたりする。
「物価の高い西ヨーロッパを廻っていると、いろいろ節約を強いられますし、安い宿を探すだけで疲れますから…、温泉は疲れた体を休めるには一番です。ただ私の場合は、同性愛者の危ない(?)現場に遭遇したことはまだないんですよ。別に安全な温泉を選んで行っている訳でもないんですが……何故か残念な気分です」
「西ヨーロッパにも温泉はありますけど、ヨーロッパを廻るツーリストに一番評判がいいのがハンガリー。ハンガリー人は東洋の臭いがしますし、打たせ湯なんかもあったりして、日本の温泉ランドのような感じで親しめますからね。温泉通いを始めると、正直言って移動するのが嫌になってしまいますよ。日本人の証拠ですかね…」
一方、ハンガリーにはこうした温泉施設以外に、自然の温泉湖もある。ブタペストからバスで数時間、列車では1時間ほどでハンガリー最大の湖"バラドン湖"へ着く。その脇に小さな天然の温泉湖が隣接している。
21時間で湖内の水がすべて入れ替わってしまうという、とてもきれいな露天風呂である。湖の周辺はリゾートとして整備され、多くのキャンプ場やコテージなどが集まる。冬は閑散としているものの、夏は温泉好きのヨーロッパ人ツーリストたちで賑わっている。
→ 第35回:ベトナム、スリの女の子