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■インディアンの唄が聴こえる
 

第14回:サンドクリークへの旅 その3

更新日2023/04/13

 

No.14-01
国立歴史的地所(National Historic Site)の石碑
インディアン、主にシャイアン族が働きかけ、内務省の国立公園課の認定を受け、
サンドクリークをNational Historic Siteに持って行った

このように負の歴史ではあっても、保存しようという動きはこの10年ほど盛んになった。現在、国立公園課で指定している、国立公園、国定公園、歴史的地所は400ヵ所に及ぶ。カスター将軍が率いる第7騎兵隊が全滅したリトルビッグホーン、ラコタ・インディアンの大量殺戮のあったウンデッドニーなども国立歴史的地所に指定された。

No.14-02
このプレハブが国立歴史記念の地の事務所
若いレンジャーが余程暇だったのか、長い時間をかけてサンドクリークの顛末を聞かせてくれた

二十数年前、ここを訪れた時、例のごとくズボラを決め込み、クリーク、土手の洞穴(そこに隠れていたシャイアン族の女、子供を大砲で攻撃し、壊滅させている)など、自由に歩き回ったが、ガラガラ蛇のことなど全く意識しなかった。現在、ベンチにさえガラガラ蛇に注意と表示されていた。レンジャーによると、年に1~3件くらいガラガラ蛇に噛みつかれる、主に子供が出るそうだ。血清は15、6キロ離れたイードの町の医療所にあるということだった。

その当時は、決められた、整備された舗道もなく、どこでも勝手気ままに歩き回ることができた。枯れたクリーク沿いにコットンウッドが生えていて、その根が届く地中に水分があることを伺わせた。それにしろ、この土地は準砂漠地帯だ。

No.14-03
乾燥し切った台地が広がっている
ここにシャイアン族、アラパホ族は131のティーピー(平原インディアンのテント)を張った

No.14-04
サンドクリークを見渡せるところに、このようなベンチが据えられていた
そこに「ガラガラ蛇に要注意!」と看板があった

国が指定した歴史的な地域とはいえ、これ程何もないところは珍しい。あるのは乾燥した台地が広がっているだけだ。余程インディアンの歴史に興味がある人間しかこんなところをわざわざ訪れまい。僅かにそよぐ風にすら砂塵が舞い上がった。
 
ここに移住させられたインディアンは700人ほどだった。飢えに迫られ、身体の丈夫な若者たちは狩猟に出かけた。当時、すでにバッファローは白人の高性能ライフルの前に姿を消しつつあったので、インディアンはもっぱらアンテロープ(羚羊と訳されているが、日本にはいない、細身で小型のシカ)を狙って出払っていた。

アンテロープは91種もあり、アフリカでアンテロープと呼ばれているモノと、ここアメリカ中西部、主に平原に棲むモノとは似ても似つかない。この地では俗称インパラと呼ばれ、二本の角が弓状に50~80cm伸び、小型のシカほどの大きさしかない。スマートで優雅な動物だ。走るスピードが速く、弓と槍程度か良くて単発の銃しか持っていなかった平原インディアンにとって難しい狩猟対象だった。また、一頭から取れる肉の量もバッファローの何分の一にしかならなかった。

サンドクリークに追いやられるように移動させられた穏健派のシャイアン族とアラパホ族は、酋長のブラック・ケトルに説得され、アメリカ政府の代表コロラド州知事のエヴァンスの言に信を置き、この地にティーピィーを張ったのだった。持ってきた食料はすぐに底を尽き、比較的頑健な若者たちは、飢えた自分の家族のため狩りに出た。ブラック・ケトルは飢餓状態に陥っていた部族を前に、白人が食料と水を供給してくれると最後まで期待していた節がある。が、若者たちはそんな甘言を信用していなかったのだろう。

シヴィングトンが泥酔した第三騎兵隊を率いて、サンドクリークを急襲したとき、キャンプに残っていたのは老人、女、子供ばかりだった。当然のように、数少ない旧式の銃も若者たちの狩猟に持たせていたから、キャンプには身を守る武器らしい武器は全くと言って良いくらいなかった。

-…つづく

 

 

第15回:そして大虐殺が始まった その1

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佐野 草介
(さの そうすけ)
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海から陸(おか)にあがり、コロラドロッキーも山間の田舎町に移り棲み、中西部をキャンプしながら山に登り、歩き回る生活をしています。

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第2回:意外に古いインディアンのアメリカ大陸移住
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第5回:サンドクリーク前夜 その1
第6回:サンドクリーク前夜 その2
第7回:サンドクリーク前夜 その3
第8回:サンドクリーク前夜 その4
第9回:サンドクリーク前夜 その5
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第12回:サンドクリークへの旅 その1
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