第28回:Shanghai (7)更新日2006/08/03
蘇州駅に着いて、いざ汽車を降りる時になっても、一切出口へのスペースをを割いてはくれようとしない人達の群れに、降りるだけでも一苦労。さらにエリカなどはタラップを降りる瞬間に、後ろからやってきた若者の集団にドンと押されて、危うく顔から地面へ叩きつけられそうになってしまった。何も口に出しはしなかったが、この時点ですでにエリカはこの街が早くも嫌いになってきているということがひしひしと伝わってきた。
駅前に溢れる観光ガイドの声を避けつつ、ローカルバスの停車場へ向かった。何しろ誰も英語を理解しないという点で、すでに我々にとっては大きなハンデなのだが、皆それぞれになんだか忙しそうで、道を尋ねるのにも一苦労だった。筆談を使ったり、タクシーを雇えという声をはねのけながら、なんとか運河地区へ向かうバスを見つけ出し、そこから30分ほどの保存地区へ辿り着いた。
カメラのファインダー越しに見える景色は、まだまだポストカードや水墨画で見覚えのあるあの景色なのだが、実際の目で見てみると、中国らしく生ごみやプラスティックバッグがプカプカ浮かび、鼻をつまみたくなるような異臭を放つドブ川のような所だった。
ここへ来る前には運河を巡る小船に乗ってみる気だったのだが、この現実の姿を見るととてもじゃないがそんな気にはなれず、近くにある唐代の詩人蘇東坡の「到蘇州不遊虎丘者、乃憾事也」で知られる、虎丘を散策して時間を過ごすことにした。
町へ戻ってからも2,3時間ほど近くをうろついてみたが、たしかに運河はあれどもあまりに汚いドブ川ばかりで、自分の中のイメージがこれ以上壊されるのが嫌な気がして、素直な気持ちではとても楽しめるものではなかった。
帰りの汽車は行きほど混んではいなかったが、やはり目の前で痰を床に吐きつけられ、足元でデレーッと伸びてゆくそれを見ているだけで、この町のイメージがまた悪化していくのを感じた。
-…つづく
第29回:Shanghai
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