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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から
 

第897回:駐車場なしに何事も成り立たない

更新日2025/05/01


アメリカ人は車と伴に育っています。もっとも、ニューヨークやシカゴの下町で、地下鉄、バスなどが利用できる場所に住んでいる人は事情が全く違うでしょうけど、中西部、西部では14歳で(州によっては15歳、16歳ですが…)運転免許を取得し、それからは車と一体になり大人になっていきます。

ですから、最初の車、私の周囲の同級生らは、親、祖父、親類からのお下がりがほとんどですが、よく覚えていて、53年の“シェヴィー”、58年の“インパラ”とか記憶に刷り込まれています。

よくイタリアの男性は三人集まると車の話、もしくは女性の評価をすると言われていますが、車の部分だけはアメリカ人も負けていません。車と人生は一体になっている感さえあります。

どこへ行くのも車です。もっとも、それしか交通手段がないので、しょうがない部分もあるにはあるのですが…。
 
私たちは高原台地の家から、食料を買い出しに週一回のペースでしょうか、谷間の町に降ります。片道40キロのドライブです。スーパーには200~300台は止まれる駐車場があります。それから、インターネットを使う図書館にも100台ほど駐車できるスペースがあります。

そして、私が働いていた大学には、実に多くの駐車場があり、駐車ビルディングまであります。アメリカン・フットボールや野球、サッカーの競技場はそれこそ、何千、何万台を収容できるパーキングがあってこそ初めて成り立ち、観客が集まってきます。
 
私は銀行、スーパー、教会に広々とした駐車場があるのは当たり前のことだと思っていました。ところが、日本に住み、ヨーロッパを旅行して、大聖堂やスーパー、レストランに駐車場がないことに気がつきました。

もっとも、ヨーロッパの古い町の多くは中世まで城壁で囲まれていたところが多く、町の道路は狭く入り組んでいて、とても駐車場なんか作り得ない環境にあります。車は後から侵入してきた便利な邪魔者扱いなのです。

古い町は必死?になって地下駐車場を作ったり、公共の乗り物、地下鉄やバス、市電を整備していますが、モーターリゼーションの波に追いついていないのが現状のようです。
 
パリのノートルダム寺院、セビリアやトレドの大聖堂、ローマのバチカン、ロンドンのセントポール寺院、いずれも正面に駐車場が占拠してる……なんていう図は想像もできません。

日本では、ハナからそんなところに行くために車を使うな、地下鉄か電車を使え、という方針が徹底してるかのように見えます。確かに、公共の乗り物が便利にできています。
 
もちろん、日本、ヨーロッパの国々でもモーターリゼーションの波に呑まれ、車で移動する人はたくさんいるのですが、皆さん素早く路上駐車をしているのです。きっと、どこそこの通りは割りに駐車しやすい、お巡りさんが駐車違反の取り締まりに来ないとかのローカルな情報を掴んでいるのでしょうね。

車のない人は歩き専門です。お年寄りが重そうなカゴを下げ、買い物から帰ってくる姿を見るのは珍しいことではありません。

アメリカの中西部なら、どんな小さな商売、小売店、コーヒーショップ、街中のカフェテリアでも、駐車場あるいは駐車のスペースを正面でなければ、裏側に持っています。それがなければショーバイが成り立ちません。
 
レストランもパーキングスペースは“must have”の必要必須事項です。14、15年ほど前になるでしょうか、谷間の町の東側に大きな中華レストランがオープンしました。建物自体が巨大な竜宮城のような二階建で恐らく200−300席はある高級レストランでした。私たちも何度か行きました。

メニューも豊富だし、とても美味しく、おまけに生演奏(主に懐メロ風のフォーク、カントリーですが)があり、チョットお祝いしたい時、懐が暖かい時に行く格好のレストランでした。

ところが、そこが潰れてしまったのです。あれだけ大層な資本投下をして、ロケーションも良いし、料理も雰囲気も良かったのに、どうして閉店してしまったのか? その鍵は駐車場にあったと教えられました。

私たちも、そこに行く時は早めに家を出て、近くの路上に駐車できるスペースを見つけるのに苦労したことを思い出しました。駐車場スペース確保はいかなるショーバイでも生命線なのです。その中華レストランは未だに買い手が付かず、10年近く経った今でも廃家になっています。
 
この谷間の町はアメリカ大陸を東西に横切る幹線ハイウェイのI-70号線が走っているだけの小さな街にしては交通の便の良いとこです。小さな町の役得でしょうか、飛行場と町までの距離が短く、ほとんど町にくっ付いています。町の中心から飛行場まで5、6分でしょうか。

飛行場から街に入る入り口のようなところにモルモン教の大きな教会、神殿というのかしら、がそびえるように建ちました。建物も巨大(この田舎町にしては!)ですが、周囲をグルリと駐車場が取り囲んでいるのです。

私たちが住んでいる台地から谷間に降りたところに、普通の家と変わらないナントカ教会があります。そんな教会でも広々とした駐車場を備えています。日曜日に町に降りる時、ダンナさんが、「オッ、この教会は流行っているな~」と駐車場に停まっている車の混み具合で判断しています。

教会、神様も駐車場次第で信者を獲得できるかどうかが決まるようなのです。

駐車場のないところには、神様さえいないのです…。

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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