第23回:トルコ、黒海沿岸トラブゾンにて…
更新日2002/08/22
トルコというと、西洋と東洋の分岐点として不思議な魅力を持った国。イスタンブールやカッパドキアには多くの日本女性で溢れ、長期滞在している人も多い。しかし黒海沿岸となると、夏はフェリーで船旅を楽しむ観光客で賑わうものの、日本人にとってはあまりポピュラーではないエリアとなっている。
黒海沿岸にはサムソン、リゼといった街が点在している。中でも東端に近いトラブゾンは、国際貿易港を中心にしたロシア交易がとても盛んな街。ウクライナへのフェリーも就航し、ロシアンマーケットなども開かれている。高台に広がる坂道の多い街並みは、とても情緒豊かで落ち着いた雰囲気だ。
しかし一方では、ロシア、ウクライナ、加えてグルジア、アルメニアといったコーカサス諸国、バルト海諸国のエストニア、リトアニアからの出稼ぎ女性たちで溢れ返っていた。
「部屋はないよ。ロシアの女の子たちでいっぱいさ。空き部屋を探したいなら、この辺りの安宿を全部廻ってみるしかないよ。多分何処もいっぱいだよ」。
市役所にも近い、街の一角に固まっている安宿。どこも一泊5ドル前後で泊れるものの、部屋のグレードはさまざま。いろいろ廻ってみたものの、空いていたのは"汚い、狭い、態度が悪い"と三拍子そろった宿だった。
あきらめて、とりあえず一泊分だけ支払って荷物を降ろし、身軽になった。引き続き部屋探しのために街を歩いていると、思わぬ幸運。
「日本人? 珍しいわね。ここはあまり日本人は来ないのよ」と言って声をかけてきたのはグルジア女性。明日友達が帰国、泊っている部屋が空くと言うので、ホテルまで案内してもらった。
「日本人の旅行者は大歓迎さ。出稼ぎ女性の長期滞在者ばかりだから、いい加減うんざりしていたんだ。ずっとここにいろよ…、割引きしてもいいよ。いくらで泊りたいんだ…」。
"きれい、広い、フレンドリー"のこの宿に明日移ることにして、紹介してくれたグルジア人にお茶をご馳走することにした。粉っぽいターキッシュコーヒーではなく、飲みなれたアイリッシュコーヒーが飲める店を知っているという。
連れて行かれたのは裏通りのカフェ。店内は出稼ぎ女性で満員状態だった。突然入ってきた日本人にびっくりしながらも、店のオーナーは満面の笑みで迎えてくれた。
「同じようなカフェがこの周辺にいくつかあるけど、どこも満員だよ。ここは彼女たちの家のようなものさ。出稼ぎにやってきても、商売気があまりないから、朝から夜までここでおしゃべりしたり、トランプしたり…。みんな3ヶ月くらいはこの街にいるし、一日に何杯もここでコーヒーを飲むから一日中満員さ。ところで日本人? 一杯おごるよ」。
ここに集まる女性の多くは英語を喋れないものの、次から次へと質問ラッシュ。おかげで退屈することなく、いつの間にか何時間も時が過ぎていった。
一方、親日国トルコは、ここトラブゾンでも例外ではない。歩いていると、恥ずかしそうに声をかけてくるのが空手少年たちだ。街の市役所広場でなにかの記念式典が開催されていた時も、空手着姿の子供たちが大勢参加していた。目と目が合うと、誰もが日本式の"一礼"で挨拶。子供たちにとって日本人は誰でも空手の先生。多少の知識があるだけでも尊敬されてしまう。
→ 第24回:メキシコ、チェトマルの日本人を訪ねて…