■鐘を鳴らそう 鳴らせば鳴る鐘が、まだあるのだから ~音羽信の心に触れた歌たち~ 第13回「ボーン・イン・ザ・U.S.A. by ブルース・スプリングスティーン」
イビサに住み始めてすぐの頃、偶然知り合ったスペイン人と話している時、彼が、「俺は今これが大好きなんだ」とブルース・スプリングスティーンの最初の大ヒットアルバム『Born to run』のカセットを嬉しそうに見せてくれた。彼とはそれで親しくなった。ロックの素晴らしさは、歌を介して国を超え言葉を超え人種を超えて親しくなれることだ。中学二年の時に深夜にラジオでビートルズの『プリーズ・プリーズ・ミー』を耳にし、その瞬間からロック狂いの少年になり、住んでいた北陸の田舎街ではなく、ロンドンが自分の心の街になってしまった経験を持つ私にとっては、どこに行っても、ロックこそがパスポートだった。それはその頃、ロックが世界語のようになっていて、誰の何が好きかということで通じ合う確かな何かがあったという証。 『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』は世界中で何千万枚売れたかわからないほどのメガヒット曲だが、『Born to run』で見せた…