■鐘を鳴らそう 鳴らせば鳴る鐘が、まだあるのだから ~音羽信の心に触れた歌たち~ 第14回「オン・ザ・ボーダー by アル・スチュアート」
アル・スチュアートのレコードを買ったことはない。けれど、ラジオや、イビサのブティックから流れてくる彼の歌が、なぜか気になった。『on the border』にせよ、『Year of the Cat』にせよ、1976年にリリースされたアルバムの中の、特に、この歌には不思議な物語性のようなものが漂っていて、なぜか私の琴線に触れるものがあった。その頃スペインに住んでいたからかもしれないが、歌い出してすぐに流れるスパニッシュギターの音や、何度も繰り返される「スペインの国境」という歌詞も気になった。不思議なことに、地球上には、そんなものなどなかった広がる大地の上に、国境線という目に見えない線が引かれている。それを越えるにはパスポートがいる。例えば、私は日本の国境線の中にいる人間であって、そこから外に出ようとすれば、パスポートというものがいる。スペインに入ろうとすれば、そのパスポートに無愛想な表情の男にじろりと睨まれながら入国許可のハンコを押してもらわなければならない。