■新・汽車旅日記 ~平成ニッポン、いい日々旅立ち 第733回「展望車行ったり来たり - SLやまぐち号 徳佐~新山口 -」 徳佐駅に停まる前に通ったトンネルが島根県と山口県の県境だった。ここは山口県の谷間である。線路の両側から山が近づき、また離れていく。地図を見ると、この谷は阿武川が刻んだようだ。このまま新山口まで並ぶかと思ったら、長門峡駅付近で北に向かい、東萩で日本海に注ぐ。途中には阿武川ダムの大きな湖もある。中国地方の尾根は入り組んでいる。川の流れも予想外だ。さて、グリーン車の空席を見つけて「移席」できて良かったけれど、4人席の通路側で他人との相席は少し居心地が悪い。せめて窓際だったら景色に集中できる。しかし通路側から窓を見ると、左右のどちらも相席が視界に入る。社交的な人ばかりなら会話も盛り上がるし、盛り上げる自信もある。しかし、おしゃべりに夢中になると景色を眺める暇がない。すこし車内を見聞してこよう。前方はゴリラさんが座っているから、自然と足は後方へ向かう。4人グループと家族連れで賑わっている。
杉山 淳一 ※只今休載中 バックナンバー
2022/02/10掲載
■店主の分け前 ~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと 第438回「流行り歌に寄せて No.238 「一度だけなら」~昭和45年(1970年)」 颯爽として、とてもカッコいい、スポーツマン。私の最初の野村真樹の印象はこうだった。なんと言っても、あの浅黒い肌が一際目立っていた。「女の子にどえりゃあもてるだろうな」と、貧弱な身体つきの青白き中学3年生は、ただただ羨望の目を、彼に向けていたのである。当時ずいぶんお兄さんに見えたものだが、今年齢を確認すると、私よりわずか3学年先輩17歳でのデビューだった。歌手になるために、すでに高校を中退して社会に出ていたとはいえ、17歳の少年の歌う歌詞とは、到底思えない内容である。それもそのはずで、この『一度だけなら』は、最初、内山田洋とクール・ファイブが歌う予定で作られた曲であったのだという。急遽、それを新人歌手のデビュー曲にするあたり、歌謡界というのは不思議な世界である。そう言われてみれば、前川清の歌唱が似合いそうな曲と言えるし、実際に、後にはクール・ファイブのアルバムで歌唱されている。
金井 和宏 ※暫らく休載中 バックナンバー
2022/06/30掲載
■音楽知らずのバッハ詣で 第32回「バッハと作詞家の関係」 日本を代表する歌謡『荒城の月』は、土井晩翠の詩に滝廉太郎が曲をつけた。滝廉太郎はライプツィヒの音楽学校に留学し、その帰りにロンドンにいた土井晩翠に会い、意気投合したと言われている。滝廉太郎はツィプチッヒで学んだ以上、バッハの音楽に親しんだと思われる。それはともかく、『荒城の月』では作詞、土井晩翠という名が作曲、滝廉太郎の前にくる。名曲と言われている『からたちの花』も、北原白秋の詩があってこそ山田耕筰が曲を書き、古典的名曲が生まれた。札幌の市の歌になってしまったかのような『この道』も、この二人のコンビによって生まれている。 作詞は日本歌謡にとって、時として作曲以上に大切なもので、まず詩があり、そこに曲をつけるのが作曲家のシゴトのようにさえみえる。バッハのミサ曲、受難曲、カンタータ、オラトリオは膨大な数に及ぶが、それらの詩を書いた詩人の方は忘れられがちだ。ピカンダー(通称カササギ男;本名クリスティアン・フリードリヒ・ヘンリーツイ)という筆名の詩人が…
佐野 草介 バックナンバー
■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から 第761回「分裂の時代」 政治のことを考えるといつも暗い気持ちになります。それが政治だけでなく社会、とりわけアメリカに関係してくると絶望的な気分になってしまいます。アメリカは元々ランド・オブ・オポチュニティ(成功するチャンスがある国)として、旧態依然とした階級社会だったヨーロッパからの移民を惹きつけてきました。ヨーロッパの貧しい農民でも、アメリカに行けば、タダの土地を振り分けられ、自作農としてやっていける、おまけに山岳地帯にチョット分け入れば、金塊が転がっていると言うではないか、一旗揚げるにはアメリカに行くしかない。ド貧乏で丸太小屋で生まれた人間(リンカーンのことです)が、大統領になれる国だ…。ワシらの国でド貧乏の小作人が王様になれると思うかい? ソレッ、アメリカへ行こう!と、私たちの先祖は諸手を上げてやって来たのです。ところが、見ると聞くでは大違い、確かに大成功を収めた新興の超億万長者も出ましたが、その陰に何百万人もの、奴隷、赤貧の労働者が生まれました。以前書きましたが、私の弟が大学を終え、就職した時の初任給が、引退を間近に控えた父の給料をはるかに上回っていました。弟は飛ぶ鳥を落とす勢いのコンピュータ科学の専門でしたし、父の方は薄給の代表である中学校の先生でしたから、その格差は歴然としていました。
Grace Joy(グレース・ジョイ) バックナンバー
■ジャック・カロを知っていますか? ~バロックの時代に銅版画のあらゆる可能性を展開した天才版画家とその作品を巡る随想 第28回「パリの景色」 『ブレダ包囲戦』の成功はカロに経済的な余裕をもたらしました。注文を受けて刷り上げた作品は約束どおりイザベル総督に渡しましたけれども、元版は手元に置きましたから、もし購入したい人がいれば必要な部数を刷ることができ、アントワープの版画商などを介して売られもしました。また復刻したフィレンツェ時代の作品も含めてカロは多くの版画を所有していましたし、版画家としての名声も手にしていましたから新たな注文もありました。さらにカロは活動の場をパリに移し、パリで版画商を営んでいた同郷のイスラエル・アンリエにも販売を依頼するなど積極的に自立の道を開拓しました。 カロの名はすでにフランスの王宮にも知られていて、ルイ13世から『ブレダ包囲戦』よりもさらに大きな戦勝記念版画『レ島攻防戦』『ラ・ロシェル攻城戦』の注文を受けるなど、カロの版画家としての前途が大きく開けた感がありました。『レ島攻防戦』『ラ・ロシェル攻城戦』は、第25回に登場したマリー・ド・ロアンの陰謀に巻き込まれた感のあるバッキンガム公がフランス本土に攻め上るべく兵を挙げ、フランス本土のラ・ロシェル近くのレ島に上陸して城を攻め落とし、さらにラ・ロシェルにまで侵入してきたことに対して、フランスの宰相…
谷口 江里也 バックナンバー
■よりみち~編集後記 05月31日までの新型コロナウイルスの各国別感染者数(死者数)の推移をまとめました。 ※日本の感染者数は順調に減少しており、正常化に向かっています。中国も急激に感染減少し、台湾の感染者数と死亡者数の増加が止まらず心配されています。そろそろ世界的に感染収束が現実的になってきました。この新型コロナリポートも今回で最終回としたいと思います。
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