第864回:オリンピック賛歌 その1
自分の身体を動かすアウトドア活動は大好きなのですが、子供の頃から、アメリカンスポーツというのかしら、学校のチームが勝つためだけに大騒ぎをするスポーツに背を向けて来ました。
ところが、どういう風の吹き回しか、今住んでいる森の中ではFM放送でさえ入らないのにメキシコのテレビチャンネル(スペイン語)が入るので、ついつい今回のパリ・オリンピックの実況中継を観てしまいました。
何ごとにおいても互いに競り合わずにはすまない、アメリカの競争相手であるロシアが参加していないので、ほぼあらゆる競技でアメリカ・バンザイの独占になってしまい、アメリカの国歌と星条旗が鼻についてしまいました。
戦時国であるイスラエルも、国としてのパレスチナも参加しているのですから、ロシア、ベラルーシュも招待し、参加させるべきでしょう。古代ギリシャのオリンピックのように、オリンピックの期間中は戦闘を中止するという厳しい条件を当時国に課し、同意するならオリンピックに参加させるのが、オリンピック憲章に趣旨に沿っているのではないでしょうか。もっとも、古代ギリシャのオリンピックでは、確かに都市国家、ポリス同志の戦争は休止していたようですが、オリンピックの試合、レスリングの勝ち負けをめぐって戦争をおっ始めたりしていますが…。
スポーツ音痴の私が言うのも奇妙なのですが、女性のボクシングがあるのに驚いてしまいました。すべての競技に男女両方あるのではないかしら。馬術に使う馬にはオスメス別のクラスはなさそうですが…。それにあの馬、開催国が準備するのではなく、参加する国から運んでくるのだそうで、それには大層お金がかかることでしょう。なんだか、貧乏な国からの参加はとても無理なようです。
騎乗している方々も、どこかやんごとなき風情の人たちで、故郷の邸宅に何頭もの馬を持っていそうな雰囲気です。とてもゲットーの黒人やお腹をすかしたアフリカの村の人はいくら足腰が乗馬に向いていても、参加できる競技ではなさそうです。
マア、言い切ってしまえば、IOC自体がお金持ちの国の、お金持ちの人たちのクラブになってしまっているのですが…。
新しい競技にブレイキンがあります。もともと、アメリカの下町で行われていたストリートパーフォーマンスでしたが、それを国際的な競技にし、おまけにオリピックの正式種目にしたのですから、アメリカさんの組織作りの上手さには舌を巻いてしまいます。あれは争い、競技するものではなく、下町で自然発生的に若者たちが円陣をくみ、大きなブーンボックスに合わせ踊りまくっていたものです。
ブレイキンがオリンピックの競技になるなら、盆踊り、カッポレ、フラメンコ、ポルカなど、伝統的な踊りすべてが競技になり得るのでしょうね。最近国際的?になってきた“よさこい祭り”なんかも有力候補になるのではないかしら。それに世界選手権がもう何年も前から行われているボールルームダンスはどうしてオリンピック競技にならないのでしょうか。
アウトドアースポーツも競技に組み込まれてしまいました。スポーツクライミングは人工の壁をいかに早く登るかの競技です。本来のロッククライミングは自然相手のスポーツで、観衆など全くいないところで、自分が岩と対峙するという根本精神に逆行する、相反するものです。その日の天気、岩の滑り易さ、岩の硬さ、落石の可能性など、岩の質を読み、自分の能力にあったルートを一歩一歩登るのがロッククライミングの醍醐味で、他の人と勝った、負けたを争うモノではなく、あくまで自分との戦いのはずです。
スポーツクライミングは人工の壁で基本的なトレーニングには役立つでしょうけど、実際の岩山で壁を登るのは全く別のことなのです。
そういえばマウンテンバイクも他の人と争うためのではなく、こんなルートを登り、降りるという喜びのアウトドアースポーツのはずですが、それを時間を競う競技にしてしまったようなのです。
私の想像ですが、このような新しい競技種目は各種目に世界的なフェデレイション(協会、連盟)があり、業績、実績があることがオリンピック種目に採用される最低条件のようですが、そんな組織を作るのは西洋人、特にアメリカ人にとってお手のものですから、新しい種目の仕掛け人は殆どアングロサクソン、アメリカ人でしょうね。
柔道、空手があるのだから、相撲があってもいいと思います。相撲は柔道、空手のポイント制のように勝敗に審判の主観が入り込む余地がほとんどなく、勝敗がはっきりしています。攻めまっくていて絶対優勢、ポイント制なら明らかに優勢勝ちのお相撲さんが土俵際のウッチャリで土俵を割ることは珍しくありません。それでも負けは負けです。それに、女性の相撲大会も存在しているようですし…。
一番加えてもらいたい種目は綱引きです。でも、世界綱引き連盟なんて、どこからもお金の入ってこない種目は、オリンピック種目になる可能性なんかゼロなんでしょうね。
今回のオリンピックの競技種目から野球が外されてしまいました。きっともっぱらアメリカ、日本、台湾、韓国だけ熱狂的に盛んな地域スポーツととられたのでしょうか、それにパリに何箇所もの野球場なんてないからでしょうね。加えてソフトボールもなくなりました。何と言ってもアメリカでトップ人気のアメフトもオリンピックの競技種目にありません。世界選手権まであるクリケットもオリンピックにありません。もっとも、クリケットは旧イギリス植民地だけで盛んなスポーツなのかもしれませんが…。
射撃、アーチェリーがあるなら、西部劇のような早撃ち決闘競技があっても良いというのが、西部劇にかぶれたウチのダンナさんのご意見です。何も相手を打ち殺さなくても、何メートルか離れた脇に大きなスクリーンに相手の画像を据え、一応向かい合って、撃ち合えば、今の先端技術なら100分の1秒の差でも読み取ることが可能だから、勝敗が容易に判定できるだろう…と言うのです。
でも、これは剣道に本当の刀を使えというようなもんで、オリンピック種目にはなり得ませんね。西部劇に頭脳が相当犯されているウチのダンナさんの妄想でしょうね。
第865回:オリンピック賛歌 その2
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