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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第290回:コロラド観光とマリファナ一服ツアー

更新日2012/12/13



前にも書きましたが、アメリカの投票用紙が2、3ページにもなる州、地方自治体が大半です。大統領を筆頭に、州知事、上議員、下議員、州や市の議員、そして、毎回その地方の生活に密着した項目の直接投票もあります。

私たちの町の図書館を新しく建て直すために、消費税を0.5%上げるかどうかとか、コロラド川沿いに遊歩道、自転車道を併設した公園を造るために住民税を上げるとか、そんなことを決めるために市や郡の議員を選び、給料を払っているのに、いちいち住民投票にかける必要なんかないんじゃないの……というような項目がたくさんあります。

その中で、"マリファナ(大麻)"を合法化するかどうか…という住民投票がコロラド州全体で行われたのです。今まで、医療用としてマリファナの販売は許されていましたが、今度の住民投票では、"医療"の項目を取り払い、誰でもお酒やタバコと同じように買えるようにして、酒税、タバコ税と同じ高い税金をかけて、それを教育予算に回そうという懸案です。一応、成人でなければ買うことも吸うこともできない…と、予防線は張ってはいますが…。

その住民投票が激戦の末、コロラド州ではマリファナがOKになったのです。ところが、合衆国政府ではまだ違法ですし、州の下の単位郡(カウンティー)がマリファナショップを開く許可を各々に判断するので、コロラドに行けば、気楽にマリファナを吸える…という状態になるには、まだ時間がかかりそうです。

コロラド州は観光州で、定年退職した人たちが全米からキャンピングカーなどで訪れる筆頭の州です。若者にも、登山、スキー、ハイキングなどとても人気があります。 私の大学で先生たちを採用するため面接する際、100パーセントと言っていいでしょう、この大学に就職したい理由は、コロラドに住みたいからだ…と言います。

また、新入生集めに躍起になっている他の州の大学を尻目に、私たちの大学は生徒さんが増え続け、6年で30%も新入生が増加しています。寮や校舎も増築ブームで、私などは、こんなに拡張を続けることに一体意味があるのか、逆に小さくてもいいから中身の濃い、充実した良い大学にして、生徒さんを厳選していく方がいいのではないか…と思うのですが、ともかく、異常に大きく膨れあがっています。

これだけ人気のある州に、さらに思い切りマリファナが吸える唯一の州というキャッチフレーズが加わるのです。観光客だけでなく、生徒さんも、チョット開けた定年退職者もさらに増えるでしょう。

その経済効果は人によって恐ろしく異なるのですが、少なく見積もる人でも、他の州が禁止してくれている限り、無視できない大変な額になり、加えてマリファナばかり吸っているわけにいきませんから、ホテル、レストラン、ガソリンなどの売り上げが飛躍的に伸びることは確実だと言っています。何でもスキーの後や、厳しい岩登りの末頂上で吸う一服は堪えられない…そうですから…。

無視できないのが、ベトナム戦争、イラク・アフガニスタン戦争の時、一度マリファナにはまり込んだ退役軍人たちの層です。すでにコロラドは退役軍人がたくさん集まっていますし、彼らはマアマア良い額の軍人年金をもらっていますから、彼らが有力なマリファナ購入層になりそうなのです。今から、年金のすべてをマリファナに費やす退役軍人が続出する…と、心配している評論家もいます。

大学の先生たちも、少し世間からズレてるので、マリファナ愛好者が結構います。きっと大学時代から吸い続けているのでしょう。先生たちのパーティーでも、どこから手に入れてくるのでしょうか、あの…マリファナ独特の香りが漂ってきたりしています。

コロラドで全面解禁になり、自由に吸えるようになったら、このノラリで発表しますので、読者のみなさん、誘い合わせ…なくてもいいですから、コロラド観光プラス"マリファナ一服ツアー"にきて、コロラドにお金を大いに落としていってください。

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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