第241回:恋人なんかいらない。
今は昔、スペインで暮らしていたとき、小学校に上がるはるか前、幼稚園にやっと通い始めた子供たちが、「ノビオ、ノビア」(婚約した恋人を互いにそう呼ぶのですが)と呼び合い、一人前の大人が顔負けするように、カップルとして行動しているのに驚かされました。
いくら早熟で情熱的な南国スペインとはいえ、「あんたがた、ノビオ、ノビアごっこよりほかにするべきことがあるんじゃないの? なんでもかんでも早けりゃ良いというものものでもないでしょう……」と言いたくもなるほどの発展ぶりです。
でもそんな過程で、男女間のすり合わせとでもいうのでしょうか、年齢とともに攻め方、守り方を身につけ、自分に合った相手を選ぶ過程を学んでいるとも言えます。かの国では、もっとも30年も前のことですが、それは長い長いノビオ、ノビア期間を経て結婚に到ると見受けました。
日本では、人工問題が国の将来を揺すぶる大問題なのでしょう、国の社会保障人口問題研究所が『出生動向基本調査』を行い、結果を発表しました。人口を増やすには、まず男と女がくっつかなくてはならない、すべての始まりは男女の出会い、付き合い、デート、そして結婚にある…とみた調査です。この22ページに及ぶレポートはインターネットで誰でも見ることができます。(*注1)
この調査によれば、日本の18歳から35歳までの男性の61パーセントが女性と交際していない、早く言えば、女友達すらいない、女性の50パーセントも交際相手がいないと答えているのです。その上、男の28パーセントは女性との交際を望まない、女性の23パーセントも男なんかいらない……と言い切っているのです。
これは“種の存続”にかかわるユユシキ問題です。
近い将来、地球上から日本人が消えてしまう可能性をはらんだ危機的状態です。日本人はもともと繁殖力があまり旺盛でない民族なのか、温暖な気候と戦争がない平和な期間が長すぎたのが“発情期”を奪ってしまったのか、セックスレス時代に入ってしまったようなのです。セックスアピールが強烈なラテン系の血をここらで大量に混ぜるべき時期に来ているのではないかと…さえ思えてくるのです。少なくとも、日本の成年男女は、スペインの幼稚園児に学ぶところが大いにありそうです。
この調査は、性の経験や避妊のヤリカタ、同棲の有無などにも及びます。どうにも分からないのは、いずれ結婚するつもりと答えている男性が87パーセント、女性が90パーセントもいるのです。さっき書いたばかりの異性との交際を望まない男性28パーセント、女性23パーセントとどうにも辻褄が合いません。彼らの何人かは、異性と付き合いたくないけれど、結婚はしたいと答えていることになります。
「シカと目を開いて現実を見てください」と、言いたくもなります。第一、交際している相手がいないのに、異性とデートなんかしたくないのに、どうやって相手を見つけて結婚するのでしょうか?
確かに、男の場合、ある程度歳を取り経済力があるとみなされれば、お見合い写真が回ってくる可能性はあります。女性も“婚期”“適齢期”になれば、加えて被写体として人に見せうる容姿の持ち主なら、彼女の写真が出回ることでしょう。周りが放っておかないという状況、環境になることはあるでしょう。結婚を社会のシステムとしてみた場合、お見合いはそれなりの優れた方式です。ですが、すべて本人の意思が要(カナメ)だと思います。
日本の若人よ、結婚相手が白い馬に乗って天からやって来ることなんかないんですよ。ましてや、テレビのスクリーンから生身の人間が飛び出してくることなんかないのですよ。
いろんな人、異性と付き合って、初めて自分が見えてくるものだし、自分を殺し相手を生かしたり、その逆だったりの押しと引きの呼吸をデートを重ねて体験して行くものなのですよ。その中で、この人となら生涯一緒に暮らせそうだと…結婚を考え、踏み切るのが“正しい”相手の選び方なのですよ。と書いていたら、なんだか私がえらくお婆さんになったような気がしてきました・・・。
*注1:第14回出生動向基本調査
「結婚と出産に関する全国調査_独身者調査の結果概要」(国立社会保障・人口問題研究所)
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou14_s/doukou14_s.asp
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