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■店主の分け前~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと

第372回:流行り歌に寄せて No.177 「ゆうべの秘密」~昭和43年(1968年)

更新日2019/05/02


小川知子の単独でのデビュー曲でありながら、いきなりオリコン・チャートの1位となり、53万枚近くをセールスした大変なヒット曲となった。それにも関わらず、この曲の作者については、驚くほど世間には知られていないのである。

作曲の中洲朗。かつて岡崎友紀が所属していた事務所の社長、長沢ローの別ネームだということが書かれているものがあるが、その長沢という人についても触れたものはほとんどない。

作詞のタマイチコにいたっては、まったくその経歴がわからない。ヒット・チャートの1位に上り詰めた曲のプロの作者が、これだけ謎ばかりなことは私としては初めてである。

さらに、このシングルのB面は『あなたに夢中なの』であるが、当時かなり売れていた有馬三恵子・鈴木淳夫妻の手による曲をB面に回してまで(その後、この夫妻の小川への提供曲は多い)、今まで実績のない作者の曲をA面に持ってきた東芝レコードの決断は凄いと思う。

中洲朗と長沢ローが同一人物だとしてたどってみると、タマイチコとのコンビで作られた曲は何曲かある。小川へはデビュー3曲目の『誰もいない処で』。スポ根テレビドラマ『サインはV』のキャプテン、松原かおり役の岸ユキの『誰もいない湖』。野口五郎の同期、ヒットには恵まれなかったが、歌唱力は抜群だった飛鳥まゆりの『太陽の季節』など。

また、岡崎友紀のデビュー・シングル『しあわせの涙』は、『週刊明星』で詞を公募し、後藤やす子という人が応募してきたものが採用されたが、タマイチコが補作詞、作曲は長沢ローとなっている(この曲、私は個人的にはとても好きな曲である)。


「ゆうべの秘密」 タマイチコ:作詞  中洲朗:作曲  森岡賢一郎:編曲  小川知子:歌 


<歌詞削除>



小川知子、18歳の最後にレコーディングをし、19歳になったばかりに発売された曲である。冒頭に“単独での”デビュー曲と書いたが、実は昭和41年8月に、『霧の中の少女』で有名な久保浩とのデュエット曲『恋旅行』をビクターレコードからリリースしているからである。

彼女は、昭和35年、小学校5年生の時に東宝児童劇団に入り、同年日本テレビの『ママちょっと来て』で子役デビューを果たした。昭和40年には東映にスカウトされ(同期にに大原麗子がいる)映画界に入り、色男俳優、高城丈二の『悪魔のようなすてきな奴』に初出演した。

しかし、青春映画に出演することを条件に東映に入社したにも関わらず、そのような作品はなく、エロ路線などに出演させられそうになったとして、18歳の小川は2年期間を残しているものの、きっぱりと契約を解消した。当時、契約違反、そしていきなりすぐに東芝から歌手デビューということで、マスコミからは大いに叩かれたらしい。

この若さで、本当に気丈な人である。何か凛とした華がある。東京都北区立王子小学校に在学中は、音楽家の羽田健太郎と6年間同級生で、高学年になってからは毎学年二人で学級委員を務めたという。小川は、その著書の中で「私の初恋の相手は、羽田健太郎君」と語っている。

交際のあったレーサーの福澤幸雄が、テスト中に死亡した時の彼女の悲痛そのものの姿は、50年経った今でも、よく覚えている。お洒落でかっこいい人々の、派手な生活の中での突然死。当時中学1年生だった私の目にはそのように映り、同情のようなものは生まれなかった。

いつも闘っている人、という印象を持つ小川も今年古稀となったが、ここ何年か自身のブログも更新されておらず、近況が心配ではある。

-…つづく

 

 

第373回:流行り歌に寄せて No.178 「星のプリンス」「落ち葉の物語」「銀河のロマンス」〜昭和43年(1968年)


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金井 和宏
(かない・かずひろ)
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1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
Lis. master's voice


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