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■店主の分け前~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと
 

第465回:緊急掲載 ラグビー・ワールド・カップ 2023 開幕〜予選プール前半戦を終えて

更新日2023/09/21


イングランドは、必死だった。ジャパンとの過去10試合で見せていた、余裕ある振る舞いは最後までなく、鬼の形相で、強欲に得点を取りにきた。

そして、ジャパンは敗れた。勝つためには、何が足りなかったのだろうか。

スクラムは良かった。低く、盤石なスクラムを組み、このセットプレーでは確実に優位に立てるだろうと思い込んでいたイングランドの戦法を、大いに狂わせた。

Jスポーツのテレビ解説をしていた沢木敬介氏によれば、「中でも、翔太(堀江)のパフォーマンスが素晴らしい」とのことだが、スクラムの世界的スペシャリスト、長谷川慎コーチ仕込みの8人の組み方は美しくさえあったのだ。

ディフェンスも素晴らしかった。相手が中盤から大きくゲインし、ジャパン陣に深く入り込もうとしても、何人かが必死に戻ってタックルを繰り返し、攻撃の足を止めた。

ゴールポストを背にするシーンでも、相手の執拗なアタックをギリギリのところで喰い止め、トライラインを越えさせない場面が何度となくあった。

けれども、試合全体を通して、ジャパンがトライが取れるのではないかという気配を感じる場面が、残念ながらほぼなかったのである。

それだけ、イングランドのディフェンスの壁が厚かったのだろうが、前回のW杯でのアイルランド戦との違いは、WTBが自在に動き回れる時間が与えられなかったことが挙げられると思う。ディフェンスは、十二分に通じたが、やはりアタックの点では、彼らに及ばないものがあったのだろう。

しかし、全員が自分の持っている力を可能な限り出し切ったため、イングランドは、他の強豪国と戦うのと同様のパフォーマンスを見せざるを得なかった。壮絶なテストマッチだったのだ。次回の対戦では、12度目の正直を見られるような、そんな期待を抱かせるに足るゲームだった。

さて、ジャパンは良い調整ができないまま大会を迎え、初戦のチリ戦でも序盤は固くなっており、思うようなプレーができなかったが、徐々にチームの良さを出すようになり、勝利した。

大会に入ってから、成長し強くなってきているので、次のサモア戦、そしてプール戦最後のアルゼンチン戦で勝利し、ぜひとも予選通過をして欲しい。予選通過をすることが、また次のW杯で勝つ可能性の高い組み合わせを得ることになるのだ。


プールD

他の試合では、やはり、イングランド対アルゼンチン戦が強く印象に残る。開始3分でレッドカードをもらってしまい、メンバー一人を欠いたイングランドが、SOジョージ・フォードのスーパー・ブーツによりキックだけの得点で27−10で勝利した。イングランドらしいと言えばイングランドらしい勝ち方だった。

他のプールを見てみよう。

プールA
開会式でのアカデミー賞俳優、ジャン・デュジャルダン主演の、いかにもフランス風なオープニング・セレモニーの後、いきなり本大会の最も注目されるカード、フランス対ニュージーランド戦が始まった。

強い時のフランス、弱い時のオール・ブラックス、その特徴がはっきり現れた試合だった。

フランスのFB、トマ・ラモスがクールにゴールキックを決め続けていた姿が印象的だった。

逆にオール・ブラックスは、追い詰められると落ち着かなくなり、ミスを多発した。こういうオール・ブラックスは、ファンでない私でも、あまり見たくはない。このプールは、1位フランス、2位ニュージーランドで動かないだろう。

プールB
スコットランドが、南アフリカに善戦した。03−18というスコア、スコットランドが最近力をつけてきているのが表れたゲームだったと思う。

スコットランドは、10月8日のアイルランド戦が決勝トーナメント進出の鍵になるが、前回のコラムにも書いたが、最近はずっと勝てない相手。ここで、スコットランド魂を見せてもらいたいものである。そこで番狂せがない限り、南アフリカとアイルランドが上に進む。

プールC
フィジーがオーストラリアに勝ち、俄然興味を増してきた。

オーストラリアの監督は、母国に戻ったエディ・ジョーンズ。次回のラグビーW杯、オーストラリア大会のために思い切って若手を起用しているが、その若さゆえに苦しんでいるところもある。ウエールズに敗れれば、W杯始まって以来初めての予選プール敗退ということになる。名監督、ここを乗り切ることができるか。

そのフィジーが良い感じで来ている。ウエールズには負けたものの、26−32と詰めよりボーナス・ポイント1も獲得した。ジョージアは難敵ではあるが、ここにも勝利し、(他チームの結果にはよるが)20年ぶりの決勝トーナメントを手にするチャンスである。

以上のように、プールA・Bは、ほぼ上位進出チームが決まりつつあるが、プールC・Dは混沌としている。次回は、予選プールが終了した後の、10月12日付のこのコラムに書かせていただきたいと思う。

-…つづく

 


第466回:緊急掲載 ラグビー・ワールド・カップ 2023 開幕〜予選プール戦終了 決勝トーナメントへ


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金井 和宏
(かない・かずひろ)
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1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
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