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■店主の分け前~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと
 

第466回:緊急掲載 ラグビー・ワールド・カップ 2023 開幕〜予選プール戦終了 決勝トーナメントへ

更新日2023/10/12


ジャパンは、本当に強くなった。半世紀を超えて日本のラグビーを観続けて来た私たちオールドファンと呼ばれる範疇の人間は、心からそう思うのである。アルゼンチン相手に、あのような試合ができるなどとは、少なくとも10年前までは想像もできなかった。

何回も書くようだが、従来のジャパンにとっては、「善戦、惜敗」という言葉は、確かに賛辞であったのだ。「よくやった、惜しかった」という思いで、心からの拍手を送ったものだ。ところが、今のジャパンの選手の中には、そのような言葉をありがたく聞こうとする者は一人もいないだろう。

だから強くなったのだ。だから、それだけに勝ちたいゲームだった。それでも、勝つためには何かが足りなかった。敗戦の瞬間から、ネットなどで夥しい数の分析コメントが流れたが、私はそれをあまり読んでいない。

ジェイミー・ジョセフHCをはじめ、すべてのスタッフ、選手たちが、それをしっかりと見つめ直し、これからのジャパンに繋げて行っていただきたいと願う。そして、これだけの力を持つチームになったのだから、日本ラグビー協会は真摯に、その上のチームになるための努力を、早速今週から始めて欲しい。

今回の予選プールで3位に入ったため、次回は地区予選出場の必要はないが、強豪国が2チームあるプールに入らなくてはならない。それは、今回予選落ちしたスコットランド、オーストラリアも同じことだから、さらに厳しい組合せになるだろう。その中で、予選プールを突破するのは、とんでもなくタフなことだろう。

しかし、それを目指せる実力をジャパンは持ち続けることができると、私は信じている。


さて、Quarter Finalである。よく言われたことだと思うが、今回の組合せ、プールA、BとプールC、Dとでは、実力的に開きがあったようである。日時順に記せば次の通りになる。

① ウエールズ(C1) 対 アルゼンチン(D2)

② アイルランド(B1) 対 ニュージーランド(A2)

③ イングランド(D1) 対 フィジー(C2)

④ フランス(A1) 対 南アフリカ(B2)

このような言い方は良くないかも知れないが、プールA、Bの勝ち上がりの試合を、準々決勝で戦ってしまってはもったいない気もする。ところで、奇しくも、すべてが北半球ヨーロッパと南半球の対戦カードになった。しかも、北半球勢はすべて全勝の1位通過、南半球勢はすべて2位通過である。

そこで、長い間ラグビーは観ているものの、試合予想については俄かファンにも劣る私が、勝ちチームの予想を試みると、こんな感じになる。

① アルゼンチン

② ニュージーランド

③ イングランド

④ 南アフリカ

この期に及んで、フィジーを除いてまだ南半球偏重を続けるのかと笑われるところだが、それには、はっきりとした根拠はない。けれども、今までの経験上、やはりそう考えてしまうだけだ。

 ウエールズは、W杯に入ってから好調で、オーストラリアをノートライに抑えて勝っている。勢いはある。ただ、ジャパン戦で見せた、アルゼンチンの相手の隙間をつき瞬時にトライに持っていくスピード感には、圧倒的な魅力を感じるのである。

また、ジャパンに勝ったチームだから頑張ってほしいという、期待心もある。

 南アフリカを下し、スコットランドを粉砕して意気揚々と決勝トーナメントに臨むアイルランド。強いのは折り紙付きとも言える。

ただ、同一のW杯で南アフリカとニュージーランドの両国を倒した国は、今までにない。その至難の業、ジンクスとも言えるものを打ち破る快挙を、今回アイルランドが成し遂げられることができるだろうか。私には疑問である。

 フィジーのラグビーは、限りなく楽しい。小賢しいことは考えないで、ひたすらトライを狙う。驚いたのは、オーストラリア戦、7点差リードで残り1分を切り、マイボールを確保、モールで時間を稼げば確実に勝てるのに、何とボールを展開し始めた。

挙句の果ては、その後PGを得たところでタップして蹴り出せば良いところを、ゴールを狙ったのである。「ゴールポストに当たり、そのボールを奪われて逆襲されないか」とは考えなかったのだろうか。

きっと、そんなことは考えないかも知れない。着実に2位通過と思われていたところ、ポルトガルに敗れ、オーストラリアと勝点で並び、僅か6点の得失点差で、薄氷を踏む思いで決勝トーナメントに行けたのも、このチームらしいと言えるだろう。

一方のイングランドは、予選最終戦でサモア相手に18−17の辛勝。アルゼンチン、ジャパンには貫禄の違いを見せていたところだが、死角はありそうである。ただ、フィジーのファンタスティックなラグビーは、イングランドの限りなく詰まらないが、堅実なラグビーには、残念ながら勝てない気がするのである。

 最も楽しみなゲームである。フランスは主将のSHの顎の骨折の具合がどの程度であるかが、かなり大きく作用すると思う。FHのヌタマックも欠き、フランスの攻撃の起点であるHB団が二人ともいないのは、とても痛い。

南アフリカは、アイルランドに沈黙させられ、覚醒したことだろう。南アフリカらしいラグビーをして行ければ、勝てると思う。南アフリカは強い。ただ、プレースキックの成功率は、気にかかるところだが。

さて、この予想、どこまで的中することだろうか。今までのところの、南アフリカのキッカーの成功率より上に行きたい思いはしている。


ところで、スコットランドのファンの私は、ひたすらこのチームを応援しているが、今回のアイルランド戦を観て、ファン故に苦言を呈したいことがある。

まず、前半19分、スコットランドの主将のジェイミー・リッチーが激しいプレーで相手のトライを阻止に行ったが、その際、骨折と思われる怪我をして、早々にベンチに下がることになった。この時、彼は失意の余り下を向いてしまい、ずっとうなだれていた。

キャプテンである。まだゲームは始まったばかり、0-5のスコア。これから仲間のプレーを鼓舞しなくてはならないところを、ただ呆然としていたのである。ジェイミー、もうひとまわり大きくなってくれ!!

そして、前半を0−26とされ、敗色濃厚となった後半早々、乱闘の基となったシーン。

スコットランドのFBオリー・スミスが、プレーとは関係ないところでアイルランドのキャプテン、FHジョニー・セクストンの足に足を引っ掛けたのだ。

これにはセクストンも本気で怒り、スミスの胸を小突いた。それがキッカケで乱闘が始まる。スコットランドのPRピエール・スクーマンは、アイルランドHOダン・シーハンを、広告看板の外へ押し倒し、プロレスさながらの場外乱闘も演じてみせた。

これにより、スミスはイエローカードをもらい、シンビンとなった。14人となったスコットランドは、直前に押し倒したシーハンにトライを奪われてしまう。相手に大量点を取られ、味方は無得点でフラストレーションが募っていることは理解できるが、腹いせのような行為は、許されない。

これらのシーンを見ていると、今のままでは、スコットランドはアイルランドには、当分の間勝てない思いになるのである。スコットランドも、かつてアイルランドがしたように、ラグビー協会が本気になって強化を図ってほしい。

 

閑話休題。次のこのコラムの掲載は、準決勝が終わり、3位決定戦、決勝の直前になる。準決勝の結果を踏まえ、慣れないことだが、大胆にも1−2−3位の予想をしてみたいと思う。もちろん、その次のコラムで言い訳しない覚悟を持って。

-…つづく

 


第467回:緊急掲載 ラグビー・ワールド・カップ 2023 開幕〜そしてファイナルへ


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金井 和宏
(かない・かずひろ)
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1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
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