第348回:日本の皇族とヨーロッパの王族
歴史の浅いアメリカ人には、ヨーロッパの国々や日本、タイなどの皇族、王族に抱く国民感情というのがどうにもピンときません。同じ人間であるはずなのに、どうして生まれついたときから、平民、皇族と別れてしまうのか、たとえ歴史の拘束力というのかしら、重さがあるとは理屈で理解していても、どうして皇族、王族が21世紀の現代まで存続しているのか、どうしてその国の人が王族、皇族をそんなにありがたがるのか分からないのです。
イギリスの王室は、ゴシップ新聞やキオスクで売っている低俗な週刊誌のためにあるのだ……という皮肉好きなイギリス人もいます。イギリスの王室が定期的にニュース、ゴシップの種を提供してくれなければ、そんな新聞、週刊誌の売り上げはがた落ちになるというのです。
比較の問題ですが、イギリスやスペインなど、ヨーロッパの王室は、日本やタイに比べてかなり国民との距離が近く、開かれているような印象を受けます。イギリス歴代の王様もヘンリー八世を引き合いに出すまでもなく、離婚、浮気、本気とスキャンダルにまみれてきました。
スペインの王室でも、エレーナ皇女がマジョルカの裁判所に出頭を命じられたニュースには驚かされました。マドリッドのオリンピック招致にスペインを背負うように活躍し、彼女自身、ヨットでオリンピック出場した経験を持ち、しかも、ダンナさんもハンドボールの金メダリストと、スペインの国民にとても親しまれ、愛されているかのように思っていたのです。
昔、スペインでヨットを棲家としていた時、遠くからですが、マリーナで彼女を見かけたことがありますし、ヨットの仲間たち、と言ってもスペイン人ヨット乗りにですが、とても親しまれている印象でした。
エレーナ皇女の嫌疑は、旦那さんがスポーツ振興の義援金を着服したのではないか、それを彼女が知っていたのではないかというものです。
コレが日本なら、第一、皇族が自分でそのようなお金に触れることもないでしょうけど、旦那さん、奥さんに何かの手違いがあっても、裁判所の呼び出しを食らうことはないでしょう。例えてみれば、日本の皇太子の奥さんの雅子さまが、少し高級なプレゼントを貰い、その税金申告を忘れたからと言って、東京地方裁判所は皇太子に出頭命令を出さないでしょうね。
たとえ皇族、王族であっても、法の前には国民皆平等という思想がヨーロッパでは徹底しているのでしょう。
チョット古臭い言葉ですが、ヨーロッパの王族、貴族には"ノーブル・オブリゲイション"、どういうわけかフランス風に"ノブレ・オブリージ"と呼だりする、奇妙な伝統があります。皇族、王族は普段贅沢をしている分だけ、イザという国難、早く言えば戦争の時には身を挺して国民を守る義務があるというのです。
英語を直訳すれば、"高貴さは義務を強制する"ということになるのでしょうか。ウチの仙人に日本語でそのようなコトワザを探してもらったところ、長いことかけて散々大きな辞書などをめくった末、「日本の皇室、貴族にはそんな伝統なんかないんじゃないかな、無理して古臭いコトワザとしてあるのは、"位高ければ徳高きを要す"というのがあるけど……そりゃ日本の皇室にはまったく当てはまる言葉じゃないな」と言っています。
"ノーブル・オブリゲイション"をフランス風に言うのは、そんな伝統なんか何処にもないからではないかとも、ウチの仙人は言っています。
外見だけかもしれませんが、ヨーロッパの王室、貴族は率先して軍に入ります。イギリスのウイリアム王子は海軍、やんちゃ坊主風のヘンリー王子は空軍に入り、ヘンリー王子はアフガニスタンで戦闘に参加し、かつ何とかいう戦争用のヘリコプターのパイロットでした。
日本の皇太子は自衛隊に入り、身体を鍛え、率先して戦闘に加わるトレーニングを受けているのかどうか、ウチの仙人に訊いても、どうも皇室、王族は彼の守備範囲に入らないらしく、要領を得ません。「お前、あんなトロイ日本の皇太子が、ヘリコプターや戦闘機を運転した日にゃ、危なっかしくてしょうがないだろうに…」と、低レベルの返答しかしてくれないのです。
数年前、東京のサントリーホールでなにやら二階が騒がしいと思ったら、美智子さまがいらして、コンサートを楽しんでおられました。私たちと同じホールに美智子さまが座り、私たちと同じ音楽を聴いていた…というニュースを、日本人、アメリカ人の知人に誰彼なく触れ回りましたから、私自身も案外王室ファンになる要素をたっぷり持っているのかもしれませんが。
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