第899回:外国人留学生と中国への留学
トランプ大統領が矢継ぎ早に大統領法令を発令しています。もう300くらいになるでしょうか。その大半の90%近くがアメリカの憲法違反らしいのですが、違反と、無効だと採決する最高裁判事の大多数が共和党系で占められているうえ、それに裁判所が決定を下すのに膨大な時間がかかりますから、大統領法令が命令のように実行されています。
その中で、私が少し関係し、知っているのは教育関係のことですが……。
学生、教授がイスラエルとパレスティナの問題でパレスティナ側の立場を取り、集会などを開いている大学への援助金の打ち切りを表明しました。
トランプ大統領が学生運動のリーダー、パレスティナ留学生を、すでに国外追放にしています。それに反対するデモ集会などを許した、取り締まらなかった東部の名門大学、ハーバード大学やプリンストン大学などへの援助金を打ち切ると表明しました。
デモ集会と言っても、バリケードを作ったり、ロックアウトをしたり、大学を占拠しているわけでなく、キャンパス内でプラカードを掲げ、200~300人程度の学生、教授が集会を持っただけなのです。至って平和的なキャンペーンを繰り広げていただけのように見えます。
アメリカの大学にたくさんいる留学生で一番多いのは、俗にヒスパヒックと呼ばれている中南米からの学生でしょう。私が働いていた大学でも、ヒスパニックがたくさんいました。それはDACA(Defered Action for Childhood Arrival)と呼ばれている、幼児期にアメリカに入国した者を対象に、正式の米国在留許可証を所持しているか、いないかに関係なく、ともかくアメリカ国内に住んでいる、住所がある人をアメリカの学校に通わせ、アメリカ的ではあるにしろ、教育し、それから在留許可証、労働許可証、そして米国籍を取得させるという、オバマ大統領が力を入れていた政策です。それをトランプ大統領がスッパリ打ち切ってしまったのです。
これは大学の経営に大きな打撃を与えることは間違いありません。授業料を払ってくれる学生が激減してしまうのですから。そして、ヒスパニックの学生の大半はDACAプログラムの下で、合衆国、州政府の援助で学んでいますから、政府の援助がなければとても授業料など払える経済状態にない家族が多いのです。
それどころか、トランプ大統領は教育省を完全に閉鎖してしまったのです。教育省を維持するお金なんか、軍関連の予算に比べたら微々たるもので、戦艦一隻分にも及ばないのですが…。
アメリカで、日本が今チョットしたブームなっていることは何度か書きました。私が働いていた大学でも、日本語の授業は生徒さんが多すぎて、入場制限?学期前の登録を制限しなければならないほどでした。
私が現役だった7、8年も前のことになりますが、アメリカと中国の貿易、経済の繋がりが強くなってきたのを捉え、遅ればせながら、私の大学でも中国語の授業を開講しました。
アメリカの大都市、大きな大学には中国政府が肩入れした、中国語を教える孔子学院が続々と開校し、中国語がブームになるのかと思わせました。中国政府が語学の教員を送ってくれていたのです。
その上、中国政府はアメリカの留学生を5万人(5年間で)受け入れる方針を発表したのです。将来、中国とアメリカがより緊密な関係を作っていくだろう、それにはお互いの言葉を学ばなければならない…というごもっともな方針です。
ところが、トランプ大統領が中国からの輸入に145%の関税をかけると発表し、実行し、それに対抗して中国も米国からの輸入に125%の関税を課すと対抗し、お互いの国の交換留学生の計画なんかは吹っ飛んでしまったのです。
現在、中国で学んでいるアメリカ人は700人程度だと観られています。長い歴史に育まれた中国文化に魅せられ、言語だけでなく、何らかの研究に勤しんでいる学生、学研者だけが中国に居残っているのでしょう。中国語、主に北京語と広東語でしょうね、を学ぼうとしている若い学生の行き場がなくなり、このままでは先細りになり、消えていくのではないかと心配です。
相手国を知ること、言語を中心にした伝統、文化を学ぶことが、互いに理解を深める第一歩であることを政府は忘れてしまったのです。
不法にアメリカに入国する人を、大まかな言い方になりますが、ヒスパニックを一つのスペイン語を話す集団ととらえると、中南米のヒスパニックが一番多く、次に多いのが中国語を国語とする広義の中国人の越境、不法入国が2番目になります。
ともかく、一旦アメリカに入ってしまえば、広いアメリカでモグリで働くのは難しくないし、不法入国者は何らかのコネ、すでにアメリカに住んでいる親類、友達がいるようですから、彼らを頼って入国し、彼らからモグリで働く方法、アメリカでの暮らし方を学ぶのだそうです。
そんな中国系の不法入国者の多くは、今までメキシコに一旦入り、そこから様々な方法でアメリカに入って来ることが多かったのですが、国境警備が厳しくなり、加えて、不法外国人の取り締まりが厳しくなり、強いては国外追放を大々的に行い始めましたから、米中関係は悪化の一途にあると言い切っても良い状態なのです。
よく言われることですが、アメリカは移民で成り立っている国です。トランプ大統領もお爺さんはスコットランドからの移民です。その中で遅れてきた集団がイタリア系、アイルランド系、強制的に連れてこられたアフリカの黒人、そして今ヒスパニック系、中国系の人々がアメリカに来て多様性のある、それだけに力強いアメリカを形作ってきたのだと思います。
多様性をなくしたアメリカは、どんどん衰退していく運命にあると思うのです。
第900回:信用を失った最高裁判所
|