第339回:日本の若者はセックスレス?
日本のこの種のニュースは、主にセンセーショナリズムに受けを狙った、外国のゴシップ・ジャーナリストによって流されます。それに尾ひれが付いて、今の日本の若者は……と、いかにも全体がそうであるかのように海外で報道されてしまう傾向があります。
今回の「日本の若者はセックスレス」というニューズの火付け役はアビゲイル・ハワース(Abigail Haworth)というイギリスの女性記者が進歩的な新聞『ガーディアン』に書いた記事です。
彼女はなかなか日本通であるらしく、草食化した若者とか、オタク(英語のNerd、ナードとはちょっとニュアンスが違いますが…)とか、引き篭り、コンビニ、オトメンとか、日本の新人類に関連した言葉をそこここに撒き散らし、この記事だけ読んだ西欧人は、日本の若者は男も女もセックスに全く興味がなく、したがって異性を求めず、牛か羊のように草ばかり食べているように聞こえます。
彼女の記事は、10月20日付けのガーディアン紙に掲載されました(易しい、明快な英語で書かれていますのでドーゾ読んでみて下さい
http://www.theguardian.com/world/2013/oct/20/young-japan-stopped-havining-sex)。センセーショナルなタイトルを付けたがるのは、ジャーナリズムの宿命です。しかし、彼女の調査はシッカリしており、日本の社会現象、とりわけ若者の生態をよく掴んでいるマジメなものです。
どのようなソースから得たのか、日本の16歳から24歳まで男の子は45%にセックスに興味なしとアンケートに答えているそうですし、女の子も25%興味なし…としているとあります。おまけに30歳未満で両性合わせて3分の1がデートの経験なしだそうです。
このような質問、アンケートをどのような形で行ったかが問題になるでしょう。というのは、ことセックスに関して、日本ではオオッピラに人前で、しかも第三者に語らない傾向が強く、ましてやインタヴューアーに対しては、本音を吐かない傾向があるように思えます。
若者でも、"なんだか、私(僕)がセックスに飢えているように見えてしまう"ような返答は避ける心理があることを無視できません。逆に、結婚した人、特に結婚、5-6年以上経った奥さんたちは、赤裸々に語りすぎる傾向があるように思いますが、これは何も日本だけに限ったことではないでしょう。
一昔前、ギンゼイ報告、ハイト報告などを読んだ人は、アメリカ人女性はすべてセックスに狂った色情狂のように思い込んだのと、似ているかもしれません。
肉食人種の勇たる、ハンバーガーがなければ夜も昼もないアメリカ人でも、独身者の71%は恋人がいないと言っていますし、そのうち40%の女性は一度も結婚したことがないのです。離婚、再婚する人は一人で何回も繰り返し、統計の数字を上げるのに貢献しているのでしょうか、派手好き、開けっぴろげで、孤独とは縁のない様相をしていると思われがちのアメリカ人も存外寂しいのです。
アメリカ国内で、メキシコ、中南米の移民がドンドン子供を造り、人口が増加して、人種の比率で黒人(アフリカン・アメリカンと言わなければ、アメリカでは差別用語になってしまいますが…)をこの2-3年で抜くことは確実です。それに反し、アングロサクソン、コーカソイド系の白人は、子作りに励まず、減っています。
ヨーロッパでも、北欧の人たちは先細りで、後から来た南ヨーロッパやトルコ、モロッコからの移民の出生率が高く、移民団がマジョリティになる危機感を持つようになってから久しくなります。どうも世の中、精力的なマッチョマン、代表チャンピオンクラスのイタリア、スペインなどの地中海系の男子だけが盛大に活躍し、"生めよ、増えよ、地に満ちよ"を実践しているかのようです。
ドイツの大学の先生、ニック・ドリダキス(Nick Drydakis)先生は、週に4回以上セックスをする人は、それ以下の人より収入が多い…という聞き捨てならない報告をしています(iza.org,
DP NO.7529)。それは当然のことで、セックスが旺盛な人は、それだけ体内に沢山のエネルギーを持っていますから、他の面、仕事もバリバリこなす…のでしょう。
そうなると、ロシア人の夫婦は週平均16回(内訳は毎日朝晩1回づつ、それに土日は昼が加わり、総計16回なのでそうです。これはロシア通の佐藤優さんの本、『インテリジェンス 人間論』からの請け売りです)はこなすという伝説がありますから、ロシアの皆さんは世界のどの国人より収入が多く、豊かなはずだと思うのですが、アニハカランや何事も度が過ぎると、仕事に回すエネルギーが残っておらず、腑抜け状態になるとも言います。
こんな統計を見るたびに思うのですが、男性が数多くのセックスをこなすのは、絶倫とか言って、尊敬され、憧れの目で見られるのに対し、同じコトを女性がすれば、色情狂、淫乱扱いされるのはどうしてでしょうか。
話が飛んでしまいましたが、草食系……勇猛な闘牛も草だけ食べているし、俊足の競争馬も草食です。ジャーナリストが一般ウケを狙ったキャッチフレーズは、それなりに面白く、的を得ていることもありますが、タイトルを付けて世代や人種、特定のグループ、人間の生き方を種分けすることは、所詮不可能なことです。
尽きるところ、彼らの人生があり、彼らの生き方をいかに上手に分析、解説しようと、「だからなんだっていうの? どうしろというの?」という、オオモトの質問に対する答えは出てきません。
人間を集団、マスで捉える危険性、空しさ、バカらしさから逃れることはできないのです。
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