第25回:ネパールのボランティア
更新日2002/09/05
世界の最貧国の一つでもあるネパールは、日本人ボランティアが多いことでも知られている。ボランティアといっても、その実態は様々だ。
貧しい人々の力になりたいという志をもった純粋なボランティアもあれば、お金儲けの道具になっている"ボランティア商法"もある。旅行者が自分の旅費や滞在費を捻出するために行なっている場合や、自分たちの生活確保が優先している現実もあったりする。
ある日本人女性の美容師は、お金持ち相手の美容院を作るために、寄付金集めのビラを日本人旅行者に配っていた。お金持ち相手の高級美容院を作り、先進の美容技術者を育成しようというもの。ただ、計画の是非は別にして、集まったお金は彼女が宿泊している豪華ホテルの宿泊費や一流レストランの飲食費に消えていく…。
また、ネパールに長く滞在していると、けっこう裕福な人が多いのに気がつく。しかも、そういった富裕層にかぎって貧困層には無関心。本来は自国民が自国のことを考え、足りない部分を外国人が補うのが筋なのでは、と考え込んでしまう。
ネパール人の企業経営者に聞いてみると事情は複雑だ。
「ネパールはカースト制度があるからね。この国の貧困層をなくすには、社会制度を改めるしかないよ。今のままでは富裕層の人が貧困層を助けようなんて考えることはないし、決められた仕事以外を営むのも難しい。むしろ外国人ボランティアは、カースト制度の廃止を求めて、社会啓蒙にお金を使った方がいいんじゃないかな。でもネパールではカースト制度を悪く思っている人は少ないよ。もちろん貧困層の人たちを含めてね…」。
こういった社会事情の一方で、病気にかかっても医師の診断を受けられない人が多いのも事実。ある日、安くておいしいと評判のチベット餃子屋で食事をしていると、鍼灸師の日本人男性に話しかけられた。バックパッカーとして貧乏旅行をしているAさんは滞在して約2週間だと言う。
「きのう、ネパール人医師が運営している無料の診療所の人と知り合いました。鍼やマッサージも治療に役立つから、ボランティアとして手伝ってもらえないかと言われたので、明日から行ってみるつもりです。滞在期間も別に決めていないので…」。
それから、しばらくしてAさんに聞いた診療所を訪ねてみた。診療時間は朝の6時から10時まで。午後からは一般の有料診療、午前中のみ無料で診療している。朝の7時というのに診療所の中は人でいっぱいだ。
Aさんが一生懸命に鍼を打ったり、マッサージをしている姿が目に飛び込んできた。治療を受けているのは子供から老人まで様々。治療が終わると、みんな心からお礼を言っている姿が印象的だ。
「ここでボランティアしてみてよかったです。本当に必要にされていますし、西洋医学の治療を施さなくても、鍼やマッサージで改善できる場合も多いですから。寄付を募ったりしないで、自分のお金だけで運営している院長の姿にも共感しています。ネパール版の赤ひげ先生といったところでしょうか」。
参加費を取ったり、寄付を募ったり、人のお金で相撲を取ったり。何かとお金が絡むボランティアが多いだけに、とても爽やかな感じに包まれて診療所をあとにした。
→ 第26回:ベトナム、これってボランティア?