第26回:ベトナム、これってボランティア?
更新日2002/09/12
ホーチミンのカフェに一人の日本人が入ってきた。ホンダのスーパーカブに乗り、現地に溶け込んだ感じの青年だった。
「今、ボランティアで小学校を建設しているのです。といっても、こちらでは50万円もあれば作れてしまいますが…」。
いろいろ聞いてみると、日本の建設会社がボランティアとして小学校を建設。その現地担当として、ベトナム語がペラペラのAさんを雇用して派遣したという。
「ODA(政府開発援助)のお金の多くは建築関係に使われ、しかも受注するのは大手日本企業という図式。いろんな部分での批判もあって、ボランティア活動に携わった企業が優先的に下請けに参加できるようになったのです。小さな会社ですから、単なる仕事欲しさと実績作りのためにボランティア建設を始めた訳です。だから最低限の50万円というお金で、しかも普通なら1ヶ月で終わる仕事を1年もかけるんですよ」。
ちなみにAさんの給料は月30万円、事務所兼住居にしている貸家の家賃が月25万円・・・、1年間の駐在経費は小学校12校分の建設費用に値する。
「もちろん疑問はいろいろあるのは分かっています。正論で考えれば、こんなことに関わっていること自体恥ずかしいことかもしれません。でもいいんです、ベトナムが好きなだけですから。だから深く考えないことにしています。結果的に小学校ができれば、喜ぶ子供もいるわけですから…」。
一方、50万円で小学校が作れてしまう環境なのに、豚小屋一つに50万円というお金で参加を募っている日本人ボランティア団体もあった。地方の村を養豚で活性化させようという理念は分かるものの、成り立たちそうにない利殖を唱えてみたり、怪しいボランティア商法という感は否めない。
また、ホーチミン市に多い日本語学校。旅行者が暇つぶしに日本語を教えているというので覗きに行ってみると、日本語を習いたいベトナム人でとても賑わっていた。旅行者の他には、日本人のボランティアの女性が日本語を教えていた。
「私は旅行者ではありません。日本のボランティア団体に20万円ものお金を払って、1ヶ月間の日本語教師プログラムに参加しました。でも、ここにきてビックリ。旅行者の人が先生として教えているし、高いお金を払った私はいいカモにされたようです。ここの学校も、ボランティア団体とは全く関係ないようですし…」。
いろいろ聞いてみると、泊っているのは一泊5ドル程度のゲストハウス、1ヶ月でも150ドル。単純に計算すると、約18万円がボランティア団体の利益になる。
ボランティア受け入れの実態をその学校の人に聞いてみた。
「うちの学校は、旅行者であれ誰であれ、日本語を教えたい人は受け入れています。日本のボランティア団体からの申し入れも、断る理由がないので他の人と同じように受け入れているだけです。20万円ものお金を払って参加しているなんて、知りませんでした。100ドルの寄付はもらいましたが、はっきり言って学校にとっては迷惑な話ですね」。
適正とはいえない"商行為"が、ボランティアという言葉を使うだけで、聞こえのいい響きになってしまう。ボランティアとは何なのか、という定義も曖昧なだけに、少なくともお金が必要なボランティアは、先ず疑ってかかることも必要かもしれない。
→ 第27回:マケドニア、国際列車にて…