第467回:緊急掲載 ラグビー・ワールド・カップ 2023 開幕〜そしてファイナルへ
私は、かつてこれほど素晴らしいクオーター・ファイナルを観たことがない。10大会目にして、4試合ともに、最後の最後まで目が離せないゲームが展開されたのは、初めてのことである。
アイルランド 対 ニュージーランド 24−28
イングランド 対 フィジー 30−24
フランス 対 南アフリカ 28−29
3試合が、7点差未満。ひとつのプレーでひっくり返るゲーム。ウエールズ 対 アルゼンチンは17−29と、最終的には差がついたが、75分までは17−19と本当に拮抗したゲームだった。
私にしては珍しく、前回のコラムで書いた、クオーター・ファイナルの勝ちチーム予測がすべて的中したことになり、それはそれで良かったとは思うのだが、ただ、フィジーには勝ってもらいたかった。イングランドの退屈極まりない(半分は「堅実」という褒め言葉のつもり)ラグビーを、奔放なフィジアン・マジックが凌駕して欲しかったのである。
今回は、プールA・Bと、プールC・Dのチームの間に力の差があり、プールA・B同士の対決はクオーター・ファイナルにしてはもったいないという意見も、当初は多く聞かれた。けれども、そんな意見を吹き飛ばしてしまうほど、4試合ともにスリリングな内容だった。
あまりにも楽しい4試合に、私は先週はただその余韻に浸っており、セミ・ファイナルは、もう少し後でも良いのではないかと思ったほどだ。
そうは言っても、その時が来れば、試合に見入ってしまうものだ。日本時間で午前4時スタートの2試合を、仕事が終わった後、午前1時半くらいからの夕食(夜食?)を済ませ、テレビの前で半ばウトウトしながらキック・オフを待つ。ラグビー・ファンにとっては至福な時間だ。
土曜日の試合、アルゼンチン 対 ニュージーランド戦は、前半は何とかゲームになっていたが、後半に入ると両チームの力の差が徐々に現れてきた。結局アルゼンチンはトライを取ることができずに、7トライを奪われ、6−44のスコアで敗退する。
ニュージーランドは、プール戦でフランスに敗れてからあとの試合は、目の色を変えて戦っており、その結果、自信を取り戻し、強いオール・ブラックスに変貌していた。今の段階では、ロス・プーマスにはそれを打ち倒す実力はないということだろう。
日曜日の試合、イングランド 対 南アフリカ戦、70分近くまでは、自分たちの意図したラグビーを続けることができていたイングランドと、何をしてもチグハグな、極端に言えばダメダメな南アフリカという形で推移していた。
私は、南アフリカに肩入れしていたが、ひょっとすると沈黙のまま南アフリカは終わってしまうのではないかという不安な気持ちに包まれていた。
ところが、トライというものはやはり、ラグビーにとっては、大変な起爆剤であると実感することになる。その一つのトライを取ることで、南アフリカの選手の表情が一変した。コンバージョンも成功。
そして、その後に得たペナルティ・キック。とんでもないロング・キックをハンドレ・ポラードが、実にクールに決めて、試合をひっくり返した。
ペナルティ・ゴール、ドロップ・ゴールで着実に3点ずつを刻んできたイングランドだが、トライによる得点がなく、試合の主導権をずっと握っていたものの、大きく点差を離すことができなかったのが、敗因だと言える。
ナショナル・アンセムが”God Save The King”になってから初めての大会を、イングランドは優勝で飾れなかった。
南アフリカは16−15と、クオーター・ファイナルから2試合続きで、1点差のゲームを制した。試合直後のヘッド・コーチやキャプテンの表情からは、「勝った」というよりも「生き延びた」という想いが伝わって来たのである。
さて、私のセミ・ファイナルまでの予測は、まさに何とか生き延びてきたが、3位決定戦、決勝はどんなことになるのだろう。臆せずに1−2−3位を予測してみよう。
優 勝 南アフリカ
準優勝 ニュージーランド
第3位 アルゼンチン
これで行きたいと思う。半ば希望的予測でもある。
イングランドは優勝を逃したことで、随分とモチベーションを失っているという気がする。予選プールで、ほとんどの時間帯を15人対14人で戦いながらイングランドに敗れてしまった、そのリベンジを果たそうとするアルゼンチンの方に、勝利への貪欲さを感じるのだ。
ニュージーランド 対 南アフリカ。1995年、南アフリカが初参加、初主催で初優勝を飾った第3回大会以来、28年ぶりの決勝カード。
今年8月26日のテストマッチでは、35−7で南アフリカがニュージーランドに大勝していることから、大会前の予想では、もし戦えば南アフリカに分があるように報じられていた。
しかし前述の通り、フランス戦以降は戦っていく中で、1試合ごとに力をつけてきたニュージーランド。今は、互角、あるいはオール・ブラックスの方が少し優位だという気がする。
但し、僅差のゲームをものにして勝ち上がってきた南アフリカも、本当に強い。お互い、ファンタスティックなゲームをして欲しい。そして私としては、願わくはシヤ・コリシ主将に、横浜に続いて、今度はパリの空に向かって高々と、エリス・カップを掲げて欲しいものである。
-…つづく
第468回:緊急掲載 ラグビー・ワールド・カップ 2023 閉幕〜南アフリカのことを、少し
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