第93回:現代人の衰えていく嗅覚
更新日2009/01/08
体臭はもともと自分の一部ですから、その独自の匂いを私たちの存在と同じように受け入れるはずのものです。目や鼻、顔の表情と同じだと言ってもいいでしょうか。
と分っていても、腋臭や足臭、体臭は決して香しいものではありませんし、むしろ不愉快なものです。ヨーロッパ人は一般的にあまり体臭を気にしないようで、初めてパリ、ロンドン、マドリッドの地下鉄を利用した時の臭さは気が遠くなるほどでした。
ほぼ100%と言ってよいと思いますが、アメリカ人成年男女ともに消臭剤、ディオドラントを付けています。腋の下にスプレーをかけるかスティック状のペーストを塗り、自分の臭いを極力消そうとしています。その上、オーディコロン、香水、アフターシェーブローション、香りの付いたシャンプーで武装します。
日本人は体臭が薄く、他人に不愉快な思いをさせるくらい強烈な体臭を持つ人は例外でしょうね。宴会のようにたくさんで集まっても、まずお酒やビールの臭い以外何もしません。ウチのダンナさんはもうすでに枯れかかった仙人の境地にいますから、ことさら何の臭いもありません。 私がディオドラントを毎日つけていると、「オッ、盆踊りが始まった」と馬鹿にします。そして、「体臭が強いのは、進化の過程でまだサルに近いからだ」と、のたまっています。
スイスの研究所が奇妙な調査をしました。
男性が2日間着たシャツを女性に嗅がせ、どの臭いを選ぶか統計を取ったのです。女性が選んだのは、自分が持つ抗体、免疫を構成するタンパク質とは正反対の男性、全く自分とは異なるタンパク質を持つ男性の(着古したシャツの)臭いに魅力を感じる……という結果が出たそうです。
たくさんの違った抗体を持つ子孫を後世に残し、健康で強い種を保存、発展させる本能が働いているからだと結論を導いています。
そうすると、本格的に種を残す行為に入る前に、恋人同士がキッスをし、抱擁するのはDNAの情報交換のためにとても大切な行為だということになります。若者よ、大いにキッスし、抱き、抱かれ、より多くの人との摺り合わせを充分にこなせ、そして後は本能の赴くまま嗅覚に従え! それが種を発展させるための生物学的に折り目正しい行為のようです。
モンゴル遊牧民は女性の尿を嗅ぎ分け、生理の時期、妊娠しているかどうかを正確に知ると言いますが、現代人の鼻は顔の中心に位置する整形手術の対象にしかならない、嗅覚を失った飾りになっているようです。
アメリカで離婚が多いのは、きっと成人した女性の大半が経口避妊薬を服用し、生理の臭いを消し、おまけにディオドラントで腋臭を消し、香料のたっぷり入った化粧品で身を固めており、一方、男性も最近やたらに化粧品を使うようになり、相手の体臭を感じ取る嗅覚を働かせる余地がなくなったからではないでしょうか。
したがって、間違った生物的選択をしているからではないかと思ったりしますが、どうでしょうか。
第94回:不況の中でも好況な商売とは・・・

