第94回:不況の中でも好況な商売とは・・・
更新日2009/01/15
昨年に続き今年も大変な不況が続きそうです。経済そのものの仕組みがどこか狂っているのでしょうか、働く意欲も能力もある人が、何百万人単位で失業しているのをみると、今回の不況は相当根が深く、長く続きそうな気配です。
私の住んでいる、こんな小さな町のショッピングモール内のお店でもベニア板を打ちつけ閉店しているのところが目立ち始め、もともと細々とやっていた旧市街のメインストリートのお店は軒並みに閉店しています。
果樹園でも、季節労務者を雇って収穫しても引き合わないので、梨やりんごを木から落ちるままにしているところが多くなりました。炎天下で歌を唄いながら陽気に働いていたメキシコ人の季節労働者はどうなったのかしら。
その一方で、不況風が吹くほど繁盛しているお店があります。
私たちも愛用している、救世軍の古道具、古着屋です。「スリフトショップ」と呼ばれ、いらなくなったものをタダで寄贈してもらい、それに格安の値段をつけて売り、慈善事業の資金にするお店です。
救世軍は老舗ですが、他にアルコール中毒救済協会、麻薬中毒患者救済協会、個々の教会が主催するもの、など数多くあります。いらなくなったものを寄贈してもらい、しかも店員さんはボランティアでお給料はなしですから、売っているものが高かろうはずがありません。衣料品から家具、電化製品、スポーツ用品何でも揃います。
最近、「グッド・ウイル」というしゃれたスリフトショップがオープンしました。バスケットのコートが5面くらい入る、外見はまるで普通のデパートと同じような大きな建物を新築しました。内部もとても明るく、書籍コーナーには椅子やテーブルを置き、タダでコーヒーが飲めるようにさえなっています。
ウチのダンナさんのお気に入りの店は「ハビタット」といい、建築資材、工具、ドア、窓、家具、事務機器専門のスリフトショップです。主に建築業者が一仕事終えた後に出た半端な建材を寄付したり、見本市で使ったスタンドや仕切り壁、家具を持ち込んだりで、真新しい建材を格安で売っています。ハビタットもスーパーマーケットのようにとても大きなお店を新築、開店したばかりです。
様々なタイプのスリフトショップは今どこも大変な人気で、売り上げも昨年に比べ2倍以上になっています。
もう一つ、奇妙な現象が起きています。
ガンショップ、銃砲店が売り上げを異状に伸ばしています。文字通り棚が空になるほどの売れ行きで、人気商品のAK-47とかM-16などオートマチック銃(マシンガンになるという意味だと思います)は生産が間に合わないほどで、注文を受けてから3、4ヵ月待ちの状態だそうです。
そんな銃に使う弾も、誰が買いだめしているのでしょうか、在庫切れの状態で、銃砲店は異例の好景気に沸いています。あるテキサスの銃砲店では、売り上げが400%伸びたといっていました。
この異常な銃砲ブームは、オバマ氏が大統領に就任するとすぐに銃砲規制を強め、マシンガンが買いにくくなるという見通しから、ガンマニアが今のうちにと、殺到したもののようです。アメリカにはそんなにたくさんガンマニアがいることに驚きました。
すべての道具と同じように、新しく買った鉄砲も必ず試してみたくなるのは心情でしょう。鉄砲と弾を飾っておくだけではないでしょうから。どこでどのような試し撃ちをするのか、その中で何人か標的を間違えたり、プッツリ切れたとき手元にあるマシンガンやピストルで乱射する人が出たらどうなるのか考えるだけでゾッとします。
スリフトショップと銃砲店が不況に強い二大商売なのです。
第95回:伝染する幸福感

