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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第293回:男抜きキャンプ…女だけの集まり

更新日2013/01/10



アメリカ人の一般的な性格として、よくクラブ、結社、寄り合いを作りたがる傾向が強いと言われます。その理由として、雑多な民族で構成されている国ですから、日本やヨーロッパのように、意識せずに大きな共通項でくくることが難しく、意図的に小さな共通項で囲む傾向が強いと説明されたりしています。

アメリカに星の数ほどある自分たちだけの教会を持つ宗教団体や、最近、とみに流行りだした「○○家全員集合」などもその流れかもしれません。

私が出た田舎の高校の同窓会を、今度、女性だけでやろうとしています。どうにも男性が入ると、女性は本音が出せず、思いっきり愚痴もこぼせない、それにいい歳をして、コケティッシュになってしまう女性が結構いる、それなら、いっそ男子(もうお爺さんですけど)抜きで、女子(こちらも皆お婆さんなのですが)だけの同窓会をやろう…ということになったようです。

ここに登場してもらうのは「Sisters on the Fly」という風変わりな名前を持った集まりで、フライフィッシング女性愛好会とでもいうのでしょうか、ともかく女性だけで魚釣りを楽しみ、キャンプしましょうという、男抜きという条項を省いて、極めて緩やかな規制の集まりです。

このクラブは、1999年に二人の姉妹が始めましたが、それがアレよと言う間に3,000人を超すメンバーを抱えるようになってしまったのです。

このクラブは、別にマニアックなフライフィッシング同好会ではなく、一緒にキャンプし、小川で魚を釣るのもよし、ただキャンプを楽しむのもよし、打ち明けて言えば、面倒で手間ばかりかかる男どもから、ほんの2、3日でも逃れ、女性だけで伸び伸びと過ごしましょう…というのが主な狙いのように見えます。

確かに、せっかく家族揃ってキャンプに出かけても、ダンナ、子供は遊び呆け、主婦たる女性は3度の御飯の支度と後片付け、寝袋を干したり、洗濯をしたりで、家にいるのと変らない、何のためにキャンプに来たのか分からない、それに何にでも命令したがるダンナ衆の口調から逃れるには、男抜き、手間のかかる子供抜きで、女性だけのキャンプを張るしかない…という結論に達したようなのです。

アメリカのことですから、キャンプといっても、リュックサックにテント、寝袋スタイルではなく、すべてが車主体です。大型のキャンピングトレーラーを普段恐らくダンナさんが使っているピックアップトラックに引かせたり、思いっきり古い懐かしのフォルクスワーゲンのバン、ビンテージもののRVや馬に引かせたほうが似合うような幌馬車風のトレーラーと、それはそれは意匠を凝らしたキャンピングカーで参加しているのです。

しかも、絵心のある女性が多いのでしょうか、すべてがすべてユニークな絵をRV全面に描いているのです。写真で観ただけですから、あまり偉そうなことは言えませんが、RVの行列は動くギャラリーのようなのです。

今年の参加者は、21歳から92歳までだったと言います。一番人気はコロラド州のキャンプでしたが、ワイオミング、モンタナ、ユタ、オレゴンにも支部ができ、オーストラリアからの参加者もあり、オーストラリアにも支部ができそうな勢いだと言います。

コロラドはスティームボートスプリングという、冬はスキーリゾートとして有名な山間の村に80台のキャンピングカーを集めて「Sister on the Fly」キャンプが行われました。馬用のトレーラーを引き、乗馬を楽しんでいる女性も増えてきたようですし、魚釣りは二の次になっているようです。うるさいダンナさんから逃れられるなら何でもいい…ということかしら…。

それでも、楽しい男抜きのキャンプが終われば、また家庭に帰っていくのですが、そんなにダンナさんがうるさいのなら、一人でいたいなら、永久にそうした方が良いんじゃない…と言い切れないところに夫婦の妙があるのでしょう。

ダンナさんの方も、子供の世話は面倒でしょうけど、口うるさい奥さんがいない間、大いに羽根を伸ばしているのかもしれませんね。

 

 

第294回:アメリカのお葬式事情

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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