第398回:ミッキーマウスとハローキティー
大昔のことになりますが、スペインのデパートで、"ハローキティー"の売り場コーナーを見て驚いたことがあります。ハローキティーと英語、米語の命名ですから、カルフォルニアの若者たちがうまくマーケティングしたのではないかと思っていたところ、なんと日本人のデザイン、発想で、日本の会社が世界中に流通させていると知り、やっとドナルドダック、ミッキーマウスに対抗できるキャラクターが現れたと、驚きかつ感心したことです。
去年、旧東ドイツのライプッヒを訪れたとき、トイレを借りに街中のデパートに入ったところ、そこにもハローキティーのコーナーが設けられているのに出くわしました。ディズニーのコーナーなんてありませんでしたが…。
商標にやたらうるさく、盗作は断固許さない、いかに裁判費用がかかろうが、模造品、類似品は絶対に許さない態度で、ディズニーはキャラクターを守ってきました。どんな商品、ロレックス、ルイヴィトンでも、一月もあれば、そっくり同じものを作り上げることで有名なカノ国でも、なかなかディズニー商品には手を出せないといわれるほど、商標を守る強硬な姿勢を貫いています。
ミッキーマウスやドナルドダックの商品が多岐に及んでいるとはいえ、素人の私が見てもハローキティーの商品のキメの細かさには遠く及ばないでしょう。小中学生が身につけるもの、文房用具、ありとあらゆるものに、あの猫マークが付けられ、猫人形がぶら下がっているのです。
ノート、消しゴム、鉛筆は言うまでもありませんが、筆入れとチャックにつけるつまみの人形、携帯電話のカバーやらワッペン、それは唖然するほどです。一つのキャラクターがあれほどまで多くの商品に付けられているは、本当にあきれるばかりです。
しかも、ハローキティーちゃんは、なんと今年40歳を迎えます。こんなに長いあいだ、一匹の猫が生き続けたのも奇跡です。いつ老衰で死んでもおかしくないと思っていたところ、どうして、どうして毎年何十億円という売り上げ、ロイヤリティーが入り、なかなか殺すことができないといいます。
終いには、クリスタルで有名なスワロフスキーを19,636個も使ったハローキティー人形が150万円相当で売られたりしていますし、台湾ではホテルの内装をハローキティー一色にした部屋を10室造り、しかもハローキティー・レストラン(まさか猫の餌が出てくるのではないでしょうけど)まで設け、人気を呼んでいるそうです。
台北の病院では、可愛そうな入院中の子供たちのために、ハローキティー特別病室を30室も造り、満員盛況だといいます。
そのうち、エッフェル塔、ヴェニス、ピラミッド、自由の女神など、世界のイミテーションが集まる、何でもござれのラスヴェガスの目抜き通りに、とてつもなく大きなハローキティーホテルが現れても驚きませんよ。ラスヴェガスもギャンブルの町から家族連れでショーやアトラクションを楽しむ街に変身しつつありますので…。そして、ディズニーランドならぬ、ハローキティーランドがフロリダかどこかに造られるかもしれません。
ハローキティーがどうしてこんなに長生きできるのか、ド素人の私が推測するに、ディズニーのキャラクターには表情があります。ミッキーマウスは怒ったり、悲しんだり表情を変えます。それに比べ、ハローキティーの顔はとても単純で、黒く丸い目玉と左右3本ずつの黒いひげ、黄色い鼻で、これ以上簡素化するのは不可能なほど、単純明快な線と点で描かれています。その上、表情を変えません。そんなところが子供たちにとって自分の感情を移入できる要素になり、ハローキティーを身に着けると暖かい気持ちになるのではないでしょうか。
この無表情のキティーちゃん、ねずみ取りが上手で、ミッキーマウスをあっさりと捕まえ食べてしまったのです。これまでディズニー独占だったキャラクター商品をたった一匹の子猫が勝ってしまったのです。
まずはハローキティー、40歳の誕生日、おめでとうございます。
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