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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第342回:夫婦は一心同体、ただし寝室は別?

更新日2013/12/19



数年前のことになりますが、ウチのダンナさんの従弟夫妻が、コロラドの私たちの家に泊まりに来たことがあります。私とてしては、ボロ家の中でも比較的きれいな部屋を念入りに掃除し、ダブルベッドには新しいシーツにカバーと、それなりに準備して、中年から初老に差し掛かった従弟夫妻を迎えました。

ところが、イザ寝る段になって、もう一つベッドか布団がないか…と訊いてきたのです。客室に用意してあったベッドは、日本式に言えばかなり大きなダブルベッドだったのですが、二人一緒には寝られない…と言うのです。

そこで私は、あわてて床にスペアのマットレスを敷き、即製の寝場所を作らなければなりませんでした。 同じベッドに寝ないとは、何という夫婦関係なのだ…と呆れました。

その後、ダンナさんの友達など、知り合いにそれとなく訊いてみたり、観察してみたところ、日本では中年以上の夫婦、子供のいる夫婦が別々に寝るのがむしろ普通、当たり前なのを知り、さらに仰天しました。

私は特に、アメリカや西欧の"夫婦ベッド通"ではありませんが、私の狭い範囲の知り合い、親戚、従弟、従妹、友達の夫婦で、寝室別、ベッド別という例を知りません。いくら夫婦喧嘩を派手にしても、寝る時は一緒なのです。超デブのカップルも、それなりの超大型ベッドで一緒に寝るのが夫婦というものなのです。そのようなプロレスのリンクみたいなベッドを売っているのもアメリカ的ですが…。

最近の流行は、超大型のベッドでその半分づつが別々に硬さに調整できる機能の付いたものです。私は固めマットレス、貴方は柔らか目と、押しボタン一つで調整できるのです。そうまでするなら、別々のベッドをくっ付けた方が良いんじゃないかと思うのですが、あくまで同じベッドに寝ることに拘るのです。西洋でべッドを別にするのは、余程の病気の場合か、離婚間近…に限られていると言って良いでしょう。

このような夫婦の間の機微に触れることは、当人同士が良ければ、他人がどうこう言う筋合いのものではありません。しかし、社会的な現象として見ると、日本の女性は結婚し、一旦子供設けてしまうと、妻であることを止め、母親、ママになってしまうのではないでしょうか。

ダンナさんは毎朝早くから長い通勤電車に揺られ, 会社ではキビシイ仕事が待っているから、静かにゆっくり寝かせてあげたい、私は夜泣きするかもしれない赤ちゃんと一緒に寝る…という事態になるのでしょう。その習慣が、子供が大きくなってからも引きずり、夫であるよりパパであるダンナさんとは、ベッドは別、できれば部屋も別になり、子離れしない母親、乳離れしない子供を量産している遠因にもなっているのではないか…と想像しています。

こんな話をウチの仙人たる、ダンナさんとしていたところ、「スモウ」というサイトを教えられました。お相撲と何の関係があるか…と覗いて見たら、相撲ではなく"住もう"をもじった住宅の販売、借家、間借りのサイトでした。確かに、不動産屋さんにとって、どのような部屋の数、構造が一番望まれているかを知るのは大切なことでしょう。

そのサイトで日本の30代の夫婦の27.2%、40代では38.8%、50代では35%、60代で49.5%が別々の部屋に寝ていると言っています。そして、予備軍として、スペースの関係で止むを得なく同じ部屋に寝ているけど、他に部屋があれば、すぐにも別の部屋で寝たいと思っている夫婦が大半を占めると結論付けています。その理由は、ダンナさんのイビキ、生活のリズム就寝、起床時間の違い、良く寝るため…と羅列してあります。

ウチの仙人たるダンナさんの意見では、西欧の夫婦はあくまで一緒に同じベッドに寝るべしという、モラル的な規制、不文律があるので、"無理"してでも、睡眠を犠牲にしても、同じベッドで寝なければならず、そこに無理があり、結果、離婚率が異常に高くなる誘引があるのではないか…と、うがったことを言っています。

ところで、アメリカの人である私と、元日本人らしきウチのダンナさんは同じベッドで寝ているのか? そんなプライベートで、夫婦間のことは訊ねないのが、日本的奥ゆかしさではなかったかしら…。

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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