第144回:私の蘇格蘭紀行(5)
更新日2009/06/11
■カメロ・ホテルとリース・ウォーク界隈
エディンバラ駅の近くのホテル紹介所からタクシーに乗り、これから5泊する予定のB&B、Camero
Hotelへ。車窓から見える街並み、多くのビルが砂岩でできていて実に美しかった。
Leith Walkと言う名のメイン通り(普通、通りというのは、avenue, road, street, laneなどと言う言葉を使うが、walkとあるので、めずらしい気がした)を少し入ったところに、そのB&Bはあった。タクシー代£3.50を支払って宿入りする。
1階のフロントはカウンターバーを兼ねていて、25歳くらいと思われる南米系のフロント係(兼・バーマン)から部屋の鍵をもらい、2階にある№8の部屋に入る。5泊もするのだから、相性の良い部屋であってもらいたいが、「8」と言う数字は昔から私の最も好きな数字、幸先は良いのだろうか。
部屋は6畳一間くらいのスペースで、ベッド、タンス、テレビ、洗面台に、サイドテーブルとソファー、そしてスチームがついている。窓を開けると、隣には教会のような建物があり、修道女と思われる女性が草花に水遣りをしているのが見えた(後から分ったのだが、その建物はやはり修道院で、このB&Bは修道院の宿泊所も兼ねているらしい)。
バス、トイレは共同で、私の部屋の隣にあったが、何とバスタブも便器も一つずつ。2階には、私の部屋以外にもいくつか部屋があって、中には4、5人一緒の部屋もあり、しかもみなバス、トイレなしのシングルルームのようだ。
さらに驚いたことには、バスにはシャワーが付いておらず、お湯と水の出る蛇口が一つずつ付いているだけである。みんなどのようにして身体を洗っているのだろう。不安になってきた。
いつまでも室内にいても良い考えが浮かばないからと、表を歩くことにする。前述のLeith Walkを500メートルくらい、ブラブラと往き来してみた。イタリア料理屋、理髪店、刺青の店、模型屋、スポーツ用品店など、いろいろな店が並んでいた。
帰りにスーパーマーケットで、夕食の食料と生活用品を購入する。
件のシャワーなしバスについては、仕方がないから風呂用の洗面器のようなものを探す。ところが、日本にあるような、適当な大きさのものが見つからず、その3倍の容量が入るサイズのものを買うことになる。
缶切りを買おうとして、使い勝手が分からずいろいろと動かしていると、よく太ってとても人が良さそうな、30歳くらいの黒人の女性店員さんが、これこれこうやって使うのですよ、とていねいに教えてくれた。そして、ペットフードの缶をひとつ私に持たせ、あなたも試してご覧なさい、という身振りをした。
ペット用でなく自分が食べるのに使うのだが、彼女の説明が良く理解できたので買うことにし"Thank you,
very much."とお礼を述べると、笑顔で"No problem"と答えてくれた。本当に「なーんもだ」という感じで笑顔を返してくれるのがとてもうれしかった。こちらの人たちは、実に親切な人が多い。
最後にラグビー雑誌"SCOTTISH RUGBY"を購入する。
宿に戻って、スコットランド入り最初のディナーを食べた。メニューはスコッチ・エッグのようなもの、チーズ・コールスロー、そしてひと缶のAle
Beer。エールはなかなか濃厚の味ながら旨かったが、食べ物が残念なことにまったく旨くない。
食べきるのに苦労をした。本当はメインにカレーのヌードルも用意していたのだが、げんなりしてしまって食欲を失い、明日の昼食に回すことにした。そのヌードルもパッケージを見るだけで味の程が伺えるような、大変に期待薄なもの。日本のカップ麺は、なぜあんなに旨いのだろう。
翌朝、目覚めて早速トラブル。トイレは詰まり、部屋の錠前は壊れる。このようなことは、ある程度当たり前と思わなければならないのだろう。
朝食は1階の食堂で摂ることになっていた。赤いベストが似合う、小柄で陽気そうな、60歳前後の賄いの紳士に"Good
morning!"と挨拶すると"Morning!"と満面の笑みで返してくれた。
この朝食、今までのコンチネンタル・スタイルと違い、いわゆるブリティッシュ・スタイル。ソーセージにベーコン、卵にビーンズがついてきたのが何よりうれしかった。たん白質、脂質を摂取できる。味より、まず栄養だ。
フロント係が不在なので、賄いの紳士にトイレと鍵の件について相談してみる。担当ではないが親身に話に乗ってくれ、後でフロント係に伝えることを約束してくれた。彼の傍で話していると酒の匂いが漂ってきた。これはかなりの飲んべえなのだろう、気さくなおじさんだ。
こちらに来て洗濯物がたまっていたので、Leith Walkでコインランドリーを探す。かなり迷ったが、赤ん坊連れの若いお母さんに聞いてようやくたどり着いた。日本のコインランドリーとほぼ同じ外観だが、ここにはインド系のおばさんの管理人がいる。
彼女に洗濯代£1.80を支払ってから洗濯機に洗濯物を入れると、洗濯機のスタートボタンが一ヵ所に集まっていて、それを管理人であるおばさんが押すのである。30分はかかると言うことで、私はその間に歯磨きなどを買いに薬局に入った。
ここにも20歳代のインド系の店員さんがいて応答してくれた。こちらには本当にインド系の人が多い。公衆電話の中にはインド方面への国際電話だけ割引率が高いことが記載されていたりする。やはり他のアジアの国々とは違う間柄なのだろう。
コインランドリーに戻って乾燥機にかける。こちらはセルフサービス、1回5分£0.20(20p)。それではとても乾かないので結局80pかかり、しめて£2.60、日本とあまり変わらない価格だ。
-…つづく
第145回:私の蘇格蘭紀行(6)